トイレを探して三千里
ただのトイレじゃ、つまらない。
遊べるトイレ、W.C.パークへようこそ!
とあるラーメン屋で、一人で食事を終えた後
はしたなくも、大をもよおしてしまった俺。
(あたりを見渡し)
えーと、トイレ、あっ、あそこだ。
(トイレマークへと向かう)
あっ、左、その先を右、
さらにその先を左、さらに・・・。
いやー、こりゃ、迷路だなぁ。
あれ、ここから案内の矢印がなくなった。
マズイ、戻るに戻れない。
なんとか脱出するしかない。
いやー、わかんない。どうしよう。
落ち着け。
脱出できない巨大迷路なんてないんだ。
トライ&エラーを繰り返せば、
なんとかなる。
とりあえず、こっちに行ってみよう。
あれっ、この先はお化け屋敷?
トイレはここを通らないと行けない。
なにそれ〜。ラーメン屋の隣って
アミューズメントパークだったけ?
いや、仮にそうだとしても、
ラーメン屋から直接行けるわけ
ないよなあ。
夢でも見ているのかなあ。
(定番のほっぺたつねり)
痛、夢ではないな。
まあ、無料でお化け屋敷に入れると
思えばいいか。
お化け屋敷、久しぶりだなぁ。
もよおしているせいか、思いのほか
怖く感じないなあ。
意識がウンコに行っちゃってるせいかな。
怖いものが苦手な人は
参考にするといいかも。
でも、小はダメだよ。
チビっちゃうもんね。
あっ、あそこに扉がある。
トイレはここか?
お化け屋敷の中のトイレ。
人生で、初体験だな。
もしかして、江戸時代の厠風かな。
トイレットペーパーは和紙。
あちこちに、蜘蛛の巣が張ってたり・・。
やってる最中に、お化けが出てきたりして。
想像しただけでも、キモい。
でも、贅沢は言ってられない。
男は度胸!よし、行くぞ。
(扉を開けると、そこはトイレではなく、
屋外のジェットコースター乗り場で
あった。)
眩しい。何これ。
おっ、係の人がいる。聞いてみるか。
すいません。トイレ探してるんですけど。
えっー、トイレは、これに乗って、
降り場の先にあるってぇ。
マジかよ。
しょうがない、乗るしかない。
絶叫マシン、ボットン号。
そそられる名前だなあ。
(ジェットコースター、スタート)
(ゴーゴー、ゴーゴー)
うわぁ〜、もれるー。
やっと終わった。いやー、疲れた。
トイレは?
あの階段を登った先。
階段は、兎跳びで登れって。
なに、それ?
昭和の体育会系じゃ、あるまいし。
ハイハイ、わかりました。
やればいいんでしょう。
やります、やります。
いやー、キツイなー。
これって、もしかして
和式トイレで、ちゃんとするための訓練?
令和の時代になっても結構あるんだよねー。
これが。
地方の道の駅なんかにね。
ひどい所は、個室が二つしかないのに
その内の一つが和式だったりね。
個室が、たまたま一つしか空いてなくて
入ってみると、和式でガッカリなんて、
よくあるでしょう。
だいたい、水洗の和式って、
構造上、無理がない?
本来、お尻の真下が、
一番深くなっていないといけないでしょう。
あれじゃあ、思いのほか、
一度にたくさん出しちゃったら、
ヤバくない?
ウォシュレットもないし。
いや、実はあったんです、かつて。
某大手トイレメーカーが出したんですが、
一代限りで終わっちゃったみたいです。
便器の後方から、ノズルが出てきて
水を出すというもの。
実物にお目にかかったことはないけど、
あれじゃあ、前方にしゃがむと
背中に水が掛かっちゃうし、
後ろすぎると、下ろしたズボンに
掛かっちゃうんじゃないのかなあ。
成功率、低くない?
それで、一代で終わっちゃったのかな。
せめて、イグノーベル賞ぐらい
受賞しても、よさそうだけど。
でも、俺がメーカーの担当者だったら
もっと、頑張って商品PRするけどねぇ。
例えば、面白い商品名つけたりして。
商品名
「和式シャワートイレ <尻拭い>」
CMで
「失敗を恐れずチャレンジして下さい。
私が尻拭いします」
なんてどう?
売れないか。
それにしても、
デジタル普及促進もいいけど、
公衆トイレの洋式率向上を公約にする
政党や政治家がいたら、一票入れるけどね。
「市民一人当たりの公衆トイレ数、日本一、
かつ、洋式率100%」
なんてことを自慢する自治体が
あってもいいんじゃないの。
はぁ、はぁ、はぁー。
和式トイレについて熱弁してたら、
なんとか頂上に着いた。
あれ、この先、道が谷で分断されてる。
橋が架かっていない。
代わりにロープが一本、架かっている。
えーっ、ロープ渡りで向こう側まで
行けって。
そんなのやったことないから無理だよ。
子供でもやってるから、大丈夫だって?
わかりました。やりますよ、もー。
まったく、自衛隊のレンジャーじゃ
あるまいし。
(ロープを体の下側にして、
腹這いで進む俺)
順調、順調。半分まで来たぞ。
残り半分。
でも、ここから登り基調だなあ。
なかなか進まない。
ヤバい。
ロープの揺れが激しくなってきた。
うぁ、谷底でワニが口を開けて
待ち構えている。
落ちたら、最期だ。
(ロープを軸に、体が半回転し、
体がロープの下側になる。
さらに両足がロープから外れ
両手でロープにぶら下がる格好になる。)
ヤバい。握力が保たない。
助けて〜。
叫んでも、誰も来てくれない。
もうダメだ。
(両手がロープから離れ、落下)
うわぁ〜!
せめて死ぬ前に
サッパリしておきたかった。
(ビヨ〜ン、ビヨ〜ン)
助かった。なんだ、クッションかぁ。
クッションにリアルなワニの絵が
描いてあったんだ。
いやー、マジで怖かった。
バンジージャンプの比じゃないね。
それはそうと、トイレ探さないと。
どこだろう。ないなあ。
やっぱり、ロープ渡り切らなきゃ
ダメだったのかなあ。
くっそー、ウンコしてぇ〜。
ヤバい。
周りの人たちが、変な目で俺を見ている。
違うんですよ。
私はトイレに入ろうとして
なぜか、ここにいるんです。
私にとってこの場所は、
トイレの中と同じで・・・・。
ますます、人が離れていく。
こりゃ、焼け石に水だ。
係員が近寄ってきた。
他のお客様の迷惑になるような事は
するなって。
だったら、トイレの場所、教えてよぉ。
えっ、このゴーグル着けろって。
メタバース?
これ見れば、トイレの場所わかるって。
まわりくどいなあ。
直接教えてくれればいいのに。
ハイハイ、わかりました。着けますよ。
(ゴーグルを着ける)
あっ、今いる場所にそっくり。
よくできてるなあ。
でも、これって、
仮想空間てっ、言えるのかねぇ?
この、頭がウンコの形したアバター、
俺のアバター? キモい。
別のアバターがやって来た。
あのアバターが
トイレの案内をしてくれるんだ。
よろしくお願いしまーす。
そこを右、その先を左・・・。
ちゃんと覚えておかないと。
結構、遠いし、複雑だな。
だから、これで説明するってわけだ。
なるほど、納得。
おっ、あれかあ。
大きくて立派な建物だなあ。
中に入れって。ハイハイ。
この建物全体で、一つの個室トイレ。
ゴージャス!
俺のアバターがウンコしている。
羨ましい。
ちょっと、アバターがウンコしたって
しょうがないでしょう。
場所はわかったから、退室ー。
(ゴーグルを外す)
ちょっと、酔っちゃったなぁ。
気持ち悪いし、ウンコはしたいし、
もう、最悪だ。
(しばらく歩いた後)
あったー、あの建物だ。
やっと見つけた。
あれっ、入口に鍵がかかって
開かないじゃん。
使用中?
それとも、まさかの閉鎖。
扉に何か書いてある。
(タッチパネルを操作して下さい)
あっ、扉に付いてるこれねぇー。
これで開けるんだ。
(①男 ②女)
①をタッチ。
(①大 ②小)
①をタッチ。
(①洋式 ②和式)
洋式だよ。いやー、めんどくせ〜。
(①多目的 ②普通)
ちょっと贅沢に、多目的にするか。
(①TOTO ②INAX)
どっちでもいいよ〜、も〜。
(IDとパスワードを入力して下さい)
そんなの、知らないよー。
(パスワードをお忘れの方はコチラ)
とりあえず、押してみるか。
(屁で、音楽を奏でて下さい)
そんなこと、できるかー!
仕方ない、チャレンジしてみよう。
ブッ、ブッ、ブッ、ダメだなぁ。
プップル、プルプップ〜。
(ガチャン)
開いたぁー。
やっとできるな。
あれっ、ウォシュレットじゃないけど、
まあ、いいか。
オー マイ ガッタ!
紙がない。マジかよ〜。
ここまできて、最後はこれかよ。
ひどすぎる。どうしよ〜。
うん?
どこかで聞いたことのある曲が
聞こえてくるなあ。
(トイレには〜、それは〜)
懐かしい。
もしかして、紙だけに。
そうだ、ダメもとで、やってみよう。
(その場に跪き、両手を合わせ)
神様、どうかこの私に紙をお与え下さい。
神の御加護を。
(ポトン、天井からトイレットペーパーの
ロールが一つ落ちてくる)
うわぁ〜、カミッテル。
助かったー。やっとできる。
(ジャー)
あー、サッパリした〜。
長かったなぁー。疲れたぁ〜。
(チーン)
あれ、スマホにメッセージが届いた。
(ウンコ達成の報酬として、称号
「哀愁のウンコルマン」を獲得しました!)
なにこれー、誰だよー。
(トイレの扉を開けて外へ出る。
すると、マイクとカメラを向けた
テレビ局の人達が、俺を出迎える。)
[番組MC]
どーもー、お疲れ様でした。
ドッキリです〜。
ラーメン代は、当方で負担させて
いただきます。
[俺]
ふざけるな〜。
完