遭難したら、たぶん異世界に転移?転生?して、一体全体何になったんだ?
奥多摩からさようなら
多分、気の迷いだったんだ。なんでリア充爆発しろな奴らと一緒に、俺は、奥多摩方面なんて行ってしまったんだ?
って言うか、なんで御岳山なんかに登らなきゃならないの?なんで、山の入り口に神社があるの?どうして、山道でババアに親切にして、ばばあ達を撮ってやらなきゃならないの?なんでリアジュウに、女連れに頼まないの?どうして、地元ってだけで呼びつけられたオレが、俺が…?
とにかく、ばばあのスマホを手にして、俺はちょっと離れた岩の上から、ばばあ達の撮影をしようとした。
その時、人に親切にしようとしていたこの俺の前に、よりによって構えたスマホの前に、水筒が飛んできた。何故、水筒が飛んできたか?知らん。
知っているのは、ばばあのスマホに水筒が当たりそうになって、ちょっと体をひねったらこけたって事だ。
こけて、で、なんか、岩の上から落ちた気がする。
ただ、俺は、別に命がけでばばあに親切にする気なんかなかった。大体、岩っていったって、そんなでかいもんじゃなくて、石の親類、キャリーくらいの足場みたいなもんで。こけて落ちたら、そりゃ、痛いだろうけど、それだけの話だ。崖っぷちに立っていた訳じゃない。
だから、変な浮遊感の後に、当然、藪とか地面に激突して、痛いって話で……
話なんだけど、そんなん、一瞬で、うわーいてぇぇってなるだろ、普通?
なんなかった。
何でなんなかったか、知らん。
ただ、その時、耳に届いた声は、しっかり覚えている。
「うわっ、コケるか、普通?」
「きぁっ、私のスマホ!」
前者は、俺をガイドがわりにしたリア充だ、爆発しろっ!
後者は、たぶん、ばばあだ、おいっ?!親切にしたオレじゃなくて、スマホかよ?ばばあっ、爆散しろっ!!!
とにかく、気が付いたら、俺は何かとんでもないような状態だった。
いや、正しくは、とんでもないような状態なんだろうなーと、推測するしかない感じになってた。
そのさ、あれだよ。紳士のたしなみとかがある某流線形のマモノだとか、キレーな我が子に囲まれた骸骨だとか、エロフのおねーさんに飼われる最強の魔獣(普段はヌコ)とか、そりゃさ、そういうのは解かるよ。
いやいや、わかんないけど、まだわかるんだよ。だって、そりゃ、人じゃなくたって、ホモ・サピエンスじゃなくたって、それは生き物だろ?まあ、普通の生物じゃなくて死後だったりするけど、でもさ、なんてーの、それでもまだ人格があっても不自然じゃないじゃん。
しかるに、俺の状態は、これはどう考えたらいいの?
おかしいよ、絶対に。
岩(小)の上でこけただけなのに。
今、俺の上には、青い空が広がってる。ただ、なんか、古代のアニメのガ〇ラスとイスカン〇ルみたいな、なんか双子の星みたいな、そんなもんが、でーんて浮かんでる。
つまり、絶対に、ここ奥多摩じゃない。御岳山ちがう。いくら、奥多摩が、都内と言えない秘境だからって、空に双子の星は無い。鹿や猪はいるけど、双子の星はいない。
因みに、俺、たぶん、その星のある空を見上げてるみたいなんだけど、目で見てる訳じゃない気がする。少なくとも、人間の目では見てない。だって、俺、双子の星を中心にして、空だけじゃなくて、周りに樹が生えてるのとか、草が生えているのとか、もっと言うなら、樹の上にある鳥の巣とか、何か兎に角、すごい範囲が見えてるんだ。世界が大きく丸く見えてんだよ。
でも、自分の体が確認できない。手とか足とか、動かしたくても動かない。
ただ、何か、表面?表皮?がこう、じんわりと、なんか、どろ~って感じで、蠢動っての?
それだけなんだよ、ほぼほぼ動かないんだよ!!
わかるだろ?
どう考えたって、異世界だろ?
だったら、こういうのって、フツーはさ、何かスゲー力があるもんだろ?
チートなんだろ?レベる上げしなきゃなんないにしても、レア職とかさ。
流線形だって、動けたわけじゃん。
表面がどろ~って、何それ?
何で、自分が見えないんだよ!
待てば、もしかしたら、スキルが話しかけてくれんのか?
意識を集中すると、コマンド画面が出んのか?
ねーよ、何にも出ねーよ。
待てば、なんかあんのか?
動けないのに、待ってて大丈夫なのか?
一体全体、俺はどうなってんだよ?