表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バーサーカーとビキニアーマーは使いよう  作者: 名称未設定
王都編
9/24

09


 とりあえず持って帰ってきた草を全てグレイに渡して、教えてもらったゲオルグさん家に行くことにした。


 王都の中心に近い区画、飲食店が並ぶ通りにゲオルグさんの店はある。

 通り沿いの建物は皆同じ形をしていて、一見するとどれがどれかわからない。日除け用のシェードの色が違う程度だ。

 そのシェードだって何色もあるわけじゃない。

 だいぶ探し回る羽目になった。


「ここ? だよな。こんにちは、ゲオルグさんいますか」


「俺になんのようだ」


 やたらゴツい体のハゲたおっさんが、奥からヌッと顔を出す。


「グレイから、ここなら安く泊めてくれると聞いてきました」


「グレイの紹介か」


 ゲオルグさんは丸太みたいな腕を組む。


「飯はどうする?」


「できれば食べたいですね」


「わかった。部屋の準備がある。それまでついでに飯食ってろ」


「助かります」


★★★


「う、うまい!?」


 ゲオルグさんが出してくれたのは、見た目なんの変哲もないスープとパンだ。

 それがどうだ、この味とコク。

 パンはよくある硬いやつだが、スープに浸して食べると、パンの塩気とスープの味が絡み合って、噛みしめるほど味が広がる。


「褒めても何もでんぞ」


 ぶっきらぼうにそう言って、ゲオルグさんは二階に上がっていく。


 ちなみに、なんでオレがゲオルグにさんをつけてるかと言うと、グレイのギルドの元ギルドマスターだからだ。

 今オレはグレイのギルドの一員だからな、先輩には敬意を払うもんだ。決してグレイの説明を聞いてビビったわけじゃない。

 やれ気に入らない貴族を殴っただの、やれ警備の衛兵数十人を一人でぶちのめしただの、全然ビビってねぇし、オレのクルスでもそれくらい余裕だし。


 ゲオルグさんの店は、一階が食堂兼酒場になってる。

 元拠点にしていた街の安宿とほぼ同じだ。

 店のクオリティーはまるで違うがな。


 小さなカウンターの奥は酒を置く棚になっていて、綺麗に酒の瓶が並べられている。

 テーブル席は三つ。

 丸いテーブルは四人がけだ。

 それと壁際にベンチがあって、あぶれた人が座れるようになってる。


 なんと言うか、超雰囲気いい酒場だ。

 まあ、オレはお酒飲まないから、酒場なんてこっちに(・・・・)来てから初めて入ったけどな。


「準備できたぞ」


「どうも、ちょうど食べ終わりました」


「そうか、おかわりあるぞ」


「おお! どうしようかな。いえ、ありがたいですが、今日は少し疲れてしまったので休みたいと思います」


「そうか、こっちだ」


 案内された二階は、まあ普通の部屋だ。

 それだって元拠点の安宿に比べれば月とスッポン。

 いや、比べること自体失礼なレベルだな。

 あそこは本当に酷かった。


「お前はこっちだ」


「……」


 ゲオルグさんに声をかけられたクルスは無反応だった。

 しまった! クルスに説明してなかったな。


「クルス、ゲオルグさんについていけ」


「イエス、マスター」


「すいませんね」


「いや、いい」


 怪しまれただろうか。

 バレたら、その時考えよう。


★★★


「どうしてちゃんと説明してくださらなかったんですか!!」


「え!? なに!?」


 翌日、ゲオルグさんの朝飯を食べているところに、えらい剣幕でグレイがやってきた。


 朝飯は昨日のスープに干し肉を少し入れたものと固く焼いたスコーン(スナック菓子じゃない方な)だった。これがまた、暖かいスープは干し肉の出汁と塩気が寝ぼけている頭を起こし、ふやかしたスコーンを少しずつ胃に流すことで休んでいた胃を少しずつ活発にする。

 素晴らしい、これこそ医食同源。

 違うか? まあ、いい。

 それよりも、こんなに素晴らしい朝食を、このグレイとか言う珍客はなぜ邪魔しやがるのか。


「何、ではありませんよ。オッポですよオッポ!」


 オッポ? どこかで聞いたな。

 どこだったか? どこだっけ? マジで思い出せない。


「なに? オッポって?」


「ええ!? 本当に知らないんですか! 人よりも大きい魔獣です。口の中に貯めたオプと言う硬い実を吐き出して攻撃してきます。こう、フサフサの尻尾が特徴です」


「ああ! ジャイアントシマリスもどきね。ああ、あれがオッポか」


 ん? オッポってどこで聞いたっけ?


「とにかく、オッポが出てしまっては東の森は危険区域になります」


「そうなの」


「当分は入れませんよ」


「なに!? それは困る」


 草が取れなきゃ、どうやって生活するんだ。


「これから私はギルドに戻って、オッポ討伐の依頼をギルメンに出します。そこにできればあなた方には参加していただきたい。第一発見者ですから。ただ、オッポは非常に危険な魔獣です。無理強いはしません」


 グレイの真剣な表情。

 結構マジなのね。


「行くのはいいが、クルスのシールドが先だな。準備が整えば一緒に行くよ」


「わかりました。シールドは知り合いの鍛冶屋がいます。そちらに話を通しておきましょう」


「ありがとう、助かるよ」


「いえ、仕事ですから」


「おい、グレイ」


 横から急にゲオルグさんが声をかけてきた。


「はい! なんでしょうかゲオルグさん」


「お前も飯食っていけ」


「はい…… いただきます」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ