表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バーサーカーとビキニアーマーは使いよう  作者: 名称未設定
王都編
7/24

07


 ゲオルグさん家は後回しにして、とりあえず草刈りだ。

 グレイに教えてもらった採取場に行く。


 入ってきた方とは別の城門から出る。

 ここは東西南北、四方向に城門がある。

 ただ、南の城門は城の真裏で、出入りできないらしい。

 しかも、裏は大きな川があって、城から橋をかけないと通れないという。天然のお堀みたいなもんか。


 ちなみに入ってきたのは、北側で、今オレがいるのは東側だ。

 こちらはまだまだ未開の地が広がっている。

 そしてここに草が生えてる。


 王都は見るからに都会だったからな、草なんて生えてないぜ、なんて言われたらどうしようかと思ったよ。


 ただ、開拓されてないのには理由があって、森の奥地にはエルフの集落があるらしい。

 この世界でもエルフって奴らは排他的な自然森林教の狂信者らしい。

 人間の開拓を、まるで破壊神かのように思ってるそうだ。


 ただ、完全に敵対してるわけじゃない。

 その証がこの未開の森で、エルフの集落との緩衝地帯になってる。

 と、グレイが言っていた。


★★★


 土の精霊を呼び出し草を探す。

 思えばゲーム中、土の精霊なんて呼び出した記憶がない。

 まあ、精霊自体あまり使ったことないがな。


 今回は毒を中和できる毒消し草とマヒを治すなんとかの根っこも一緒に探す。


 ゲームだと毒とかマヒってあまり強くないけど、現実になると一番怖い攻撃かもしれない。

 それをこんな草で治せるなら取っておいたほうがいいだろう。


★★★


「ギィヤァァあああああ」


 引き抜かれた草があげる悲鳴が静かな森に響き渡る。

 なんとかって草の根の部分は人の形をしていて、引き抜くと悲鳴をあげる。


 この悲鳴を聞くと頭がおかしくなるらしい。

 だからオレは遠く離れたところから、土の精霊を使って引き抜くことにしてる。


 さっき引き抜いたので二株か。意外と見つからない。


 土の精霊が、人型の根っこを咥えてこちらに走ってくる。


 その後ろを、緑の髪を振り回し走ってくる女が見えた。


「まぁてぇえええ」


「う、うぅわぁああああ!」


 ヤベェよ。ヤベェよ。

 きっとあれだ、この森でなんとかって根っこの悲鳴を聞いて、頭がおかしくなって死んだ霊だ。


「迷わず成仏してくれ! ナンマンダブ、ナンマンダブ」


 手を合わせて拝む。

 目の前まで来た女は、血走った目でこちらを見る。

 その姿に、土の精霊は震え上がり、くわえていた根っこを落とし、オレの後ろに隠れてしまった。


「このネギ泥棒が!」


「え!? ネギ?」


★★★


「すまん、すまん。最近この辺りを荒らしてるオッポかと思っただよ」


「いえ、いえ。自生しているとはいえ、草を引っこ抜いていたのは確かですからね」


 先ほどとは打って変わって、緑髮の女がにこやかに話しかけてくる。

 ネギ畑を荒らすオッポというのに間違われたらしい。

 オッポというのはわからないが、農作物を荒らす害獣の類だろう。イノシシとか鹿みたいなものかな、きっと。


「それにしても、そったら気味の悪い根っこなにするだ?」


「物好きな人が買ってくれるんですよ」


「はぁ〜、世の中にはそったらもん欲しがるヤツがおるんね」


「ええ、変わってますよね」


「ほんに、ほんに」


「ははは」


「そうだ、驚かしちまったお詫びにワシの畑に生えちょう根っこを持っていかんね」


「いいんですか?」


「ええ、ええ。雑草と変わらん」


「それじゃあ、遠慮なく頂戴します」


 根っこゲットだぜ。


★★★


 ライザと名乗る緑髮の女性から、なんとかの根っこを八株ももらった。

 自分で見つけられたヤツが、一時間ほどで二株だったのを考えれば、驚かされたとはいえ破格の礼だろう。

 しかも、お茶までご馳走になってしまった。


「すいません。長居してしまって」


「ええ、ええ。久しぶりに話ができて楽しかっただで」


 鬱蒼とした森の中、ぽっかりと空いた空間にとても和風な平屋がポツンと立っている。

 なんというか田舎の家って感じで、おばあちゃんの家に遊びに行った夏休みを思い出す。


 家の前には綺麗に手入れされた花壇があり色とりどりの花が咲く。

 縁側に腰掛け花を眺めながらすするお茶は美味しかった。


「そろそろ、帰ります」


「そうかい。またいつでも顔出しんさいな、お茶くらいしかないがね」


「ええ、次はいいお茶受けを探しておきます」


「ははは、期待しとるでね」


★★★


 ライザさんの家からの帰り道。


「何かおかしい」


 森の中が異常に暗い。

 ライザさんの家を出た時は、まだ日は高い位置にあった。

 鬱蒼と木々が生い茂るとはいえ暗すぎる。


 そして、頭上からガサガサとした音が聞こえた。


「なんだ?」


 見上げると、クッソでかいバッタが頭上を埋め尽くしていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ