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王都編
6/24

06


 オレは目の前で起きている惨劇をぼんやりと眺めていた。

 下半身丸出しの衛兵が、思いっきりブン殴られて宙を舞う。


 ここで事態をまだ把握できていない衛兵が、後ろから押さえつけようとクルスを羽交い締めにしたが、難なく振り払われ壁に叩きつけられた。


 ここにきて、とうとう剣を手にした奴が現れたが、クルスのシールドバッシュで腕ごと吹き飛ばされてる。


「う、腕が…… お、俺の腕が……」


 肘から先がなくなり、血がとめどなく流れる。

 あれは痛そうだ。


「止まれっ! こいつがどうなってもいいのか!」


 いつの間にか横にいた衛兵が、オレに剣を突きつける。

 なんか立場が逆な気がする。

 普通こういう時は女の方が人質になるもんだろう。

 そしてこう言うんだ、私に構わず殺しって。


 ブゥンとオレの顔スレスレをクルスの投げたラウンドシールドが掠める。


「ぶへぇっ!」


 オレに剣を突きつけていた衛兵の顔にシールドが突き刺さる。

 ヤベェ、グロい。

 ちゃんと兜はかぶっとけよ。

 あんま意味ないかもしれないけど。


★★★


 詰めていた衛兵の半数が倒れたところで、グレイと偉いさんっぽい人が現れた。


「何をしているっ!」


「た、隊長」


「こ、この者たちが逮捕に抵抗したため、やむなく……」


 おいおい、クルスを犯そうとして返り討ちにあっただけだろ。


「罪状は!?」


「はっ、王都治安紊乱(びんらん)罪であります」


「具体的には?」


「は?」


「何をして逮捕したのか、聞いている」


「はっ、はい。それは……」


 言葉に詰まってるじゃないか。

 かわいそうだ、ちょっと助けてやるか。


「クルスの格好がけしからんからだろ」


「何? クルスというのはその女戦士か?」


「は、はい」


「お前たち、まさかと思うが、女の色香に惑わされ、あまつさえ返り討ちにあったわけじゃないだろうな」


 誰も答えない。


「不甲斐ない。それでも王都を守る、誇り高き第三衛兵団かっ!」


「申し訳ありません」


「とりえず処分は追って知らせる。負傷者を連れて出て行け」


「はいっ!」


 ぞろぞろと衛兵が部屋を出て行く。

 それほど広い部屋でもないのによくこれだけ入ったよ。


★★★


 なんか隊長の一喝で喧嘩両成敗的になっているが、どう考えてもオレたちの方が被害者だ。

 適当な罪状で逮捕した挙句、女と見るや犯そうとしてる。

 職権乱用ってやつだよな。


「困りましたね」


 グレイが困ってない風に言う。


「まったくだ、あいつら一から鍛え直さんといかん」


「そうでは、ないんですがね」


 なかなか、くわせもんだなこの隊長。

 うやむやのまま、片ずけようとしてんな。

 まあ、ここはひとつ貸しとくか。


「隊長さん、オレらここに来る途中、指名手配されてる山賊を討伐したんだ」


「何? それは、本当か」


「ええ、討伐の証、と言うわけではありませんが、こちらを持ってまいりました」


 グレイはメダルを隊長に渡す。

 グレイがちらりとこちらを見た。気がする。

 こいつ顔はいいんだが目が細くて表情がわかりにくいな。


「よろしい。これはこちらで預かる。懸賞金は一時金で半分、もう半分は死亡が確認されれば支払われる」


「わかった」


「いいんですか?」


 グレイが言外に不満を込めてる。


「いいよ。今のところ懐具合は悪くないからな」


「そうですか。では、それで」


「治安維持の協力、感謝する。それではな」


 王都の衛兵もたかが知れてるな。


★★★


「本当に良かったのですか?」


 詰所から出てすぐにグレイが声をかけてきた。


「不満か?」


「巻き込まれましたからね」


「そりゃ、悪かったよ」


「あなたの所為ではありませんよ」


 いや、ある意味原因はオレだな。


「懸賞金出るだろ、それで許してくれ」


「私に? ですか」


「ああ。懸賞金ってぐらいだ、半金でも安くはないだろ」


「それは、まあ」


「それよりこれからどうするんだ?」


「ええ、まずは荷を売ります。それから私たちのギルドに行きましょう」


「私たちのギルドね」


「ええ、私たちのギルドです」


★★★


 グレイのギルドはデカかった。

 三階建の立派な石造りの建物。

 歴史を感じさせる古いビルって感じだ。

 言葉で表現するならビルヂングって感じ。


 現代なら世界遺産に登録されてそうだ。

 街並みも含めて西洋の城塞都市って感じだ。


 日本人のオレからするとこういう建物は地震が怖いんだが、この辺は地震とかないのかな。いや、クエイクの魔法があったな。あ、でも街中で攻撃魔法は使えない。いや、でも今は現実だし……


「何か、不安でもおありですか?」


「へっ?」


 不意にグレイに声をかけられて、マヌケな声が出ちまった。


「いや、ないよ。立派な建物に驚いてただけだ」


「そうですか」


 そういや田舎者っぽい行動は慎めって言われてたな。


 中に入るとこれまた立派なホールだ。

 今までいたギルドとは月とスッポンだな。


「はぁー、すごいな」


 吹き抜けまである。

 ギルドって、そんなに儲かるのか?


「維持するのが大変でね」


「そうだろうな」


 珍しく自慢げだなグレイ。


「ギルドの登録は私がしておきましょう。他に何かありますか?」


「そうだな、とりあえず宿か」


「宿は、短期間であればゲオルグのところがいいでしょう。ある程度費用も抑えられます」


「それは助かる。あとはそうだな」


「何でしょう」


「草はどこで取れる?」


「草?」


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