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バーサーカーとビキニアーマーは使いよう  作者: 名称未設定
王都編
24/24

24


 カレンナの花が咲き乱れ、花粉が陽の光でキラキラと輝き舞う。

 まるで絵本のような光景だが、同時に血を流し倒れる男たちの戦場でもある。


「キリがないですね!」


 虚ろな瞳で、しかし顔は恐怖に歪む強面の山賊が武器を手に襲いかかる。

 それをグレイが放つ不可視の剣戟が迎え撃つ。

 グレイのジョブ、ソードマスターのスキル。一閃。

 高速で放たれる剣は見切ることができないと言われている。

 しかしながら、多勢に無勢。

 複数の敵を一度に相手にするのは、少し苦手としている。


「なんだこいつら! グールか? それとも何かの呪いか?」


 スレッジハンマーを振り回すロムルスが、襲いくる山賊を薙ぎ払う。

 吹き飛ばされ、叩きつけられて尚、向かってくるまるで死兵のような山賊に、ロムルスはいささかの恐怖を感じる。


「わかりませんが、かなり厄介です。ただの山賊と思わずに対処する必要があります」


 離れたところでは、グレイシアとマルコがカシムと戦っている。

 それは常人では動きを捉えることさえ難しい。

 いくつもの刃が交錯し、紙一重でかわす。

 一瞬の隙をついて、マルコの矢がカシムに突き刺さる。

 しかし、矢がささろうが、斬られようがカシムが動きを止める気配はない。


「まるで獣ね」


 虚ろな瞳に必死の形相。

 そのアンバランスさがプレッシャーのようにのしかかる。


「グレイさん、ここは危険です」


 ゼニスがグレイに警告する。


「どういうことですか?」


「邪神ドモン様のお告げです。厄災が蔓延していると」


「そ、そうですか」


 はたして邪神のお告げを真に受けていいのか、といつも一瞬戸惑う。

 しかしゼニスの危機察知能力は本物だ。

 ハズレたことはただの一度もない。


「グレイシア、マルコ、撤退の準備を!」


「なぜです!?」


「なぜだ!? ダメージは与えている。ここで引く手はないぜ」


 グレイシアとマルコの抗議はもっともだ。

 むしろここで決着をつけるべきだとグレイも感じている。


「邪神のお告げです!」


「グゥ!」


「……わかりました」


 ゼニスのお告げを無視することはできない。


「グレイっ!」


 ロムルスの雄叫びのような声。


「なんです!?」


「ありゃ…… なんだ」


 ロムルスが示す方向には厄災が確かにあった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 火の精霊を呼び出す。

 こいつには火の玉ボーイという攻撃スキルがある。

 ふざけたネーミングだがれっきとしたスキルだ。

 名前の通り火の玉となって敵に体当たりする。


 正直使えるスキルじゃない。

 ロックした敵をホーミングしてくれるが、攻撃対象は単体だし威力も微妙だ。

 唯一、燃焼というバッドステータスで継続ダメージを与えられるが、まあ使い道はあまりないな。


 で、このスキルだがバグがある。

 攻撃対象が無い状態、敵のいない状態でスキルを発動すると、火の玉になったまま固まる。実際のフィールドだと、何がしかの敵がいるからほぼ起こらない。

 発動時にフィールドのNPCなんかに話しかけるとか、特定の条件で発生する。


 まあ、細かい仕様の話はどうでもよくて、これを使ったバグ技がいくつか発見された。

 スキル発動中は精霊ではなくなるらしく、そのため別の精霊を同時に呼び出せてしまう。

 ただ相性のようなものがあるらしく。検証の結果、火の精霊と同時に出せる精霊は風の精霊だけだった。

 これを使ってスキルを掛け合わせるという実験が行われた。

 いくつか動画サイトなんかにアップされて、にわかに盛り上がったが実用的なものはほぼなかった。


 オレもいくつか試したが、大したことは出来なかったと思う。

 遊び程度で攻略につながるような物は無く、真剣に検証するユーザーは次第に消えていった。


 ただ、これが現実になるとどうなるか?

 風の精霊、通称緑のキツネにはストームというスキルがある。

 そのまま竜巻なんだが、火の玉と同時に使うとどうなるか。


 広範囲かつ大規模な火災。

 迷惑な花粉は燃やすに限る。

 あ〜、スギ花粉も燃やし尽くしてぇなぁ。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 煌々と輝く火柱。

 それは遥か遠く、王都からも見ることができるほどの高さとなった。

 炎は竜巻となってまるで暴れる竜のようであった。

 人々はその姿に恐れおののいた。


 火は天高く昇り、巻き起こる熱風は上昇気流を起こし、雨雲を作る。

 炎はその威力とは裏腹にすぐに勢いを失い消えると、その後の雨が森林に残るくすぶっていた火も全て消した。


 のちに王都にいたエルフにより、火は厄災(カレンナ)を払う神の火であると声明が出された。


 しかし、王都の民にはゼニスが語った事が間違って広まり、邪神ドモンの厄災、悪魔の火と呼ばれるようになる。

 次第に邪神教が王都に広がるきっかけになる事件であった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「如何致しますか」


 間者(スパイ)からもたらされた報告書に目を通す。


「北部森林を燃やすなど、帝国がどう動くか考えるだけでも頭が痛い」


 実際は頭よりも胃が痛い。

 しかし、考えようによっては利があるかもしれない。

 北部森林があることで王国は帝国と距離を取れている。

 その森林で何かあれば王国は動かざるをえない。

 北部への防衛強化論が王国内で議論されるはずだ。


 その際に共和国へ協力を申し入れることを盛り込めばいい。

 王国内で共和国の存在を印象づけることができるはずだ。


「しかし、神の火とは畏れ多いな」


 まったくここ最近は胃に悪いことばかりだ。

 今回の件が片付いたら休養をもらうか。


「今回の件は、そうだな…… こうしよう。カレンナという危険な花が北部森林に群生していた。それをたまたま(・・・・)カンフェギルドの者たちが発見した。しかし、カレンナの花粉により我を失った。そこに王都ギルドの者たちが遭遇してしまった。これは悲しい事故だな」


「王都ギルドの者はそれでいいかもしれません。しかしながらあの者(・・・)はそれで納得するか…… やはり、消しますか」


「いや、ここまで話が大きくなった以上、そうそう手出しすべきではない」


 しかし、このまま王国に居られるのは不味い。


「そうだな…… 功績を称えて恩賞を出す」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「何が恩賞だよ」


 十日以上も馬車で揺られ、身体中がカチコチに固まった。

 それでようやく着いたと思えば、何もない荒野が待っていた。


 あれから王都に帰ると、なぜか王国の宰相との謁見が待っていた。

 そこで王国の危機を救ったとかで、恩賞を頂いた。


「なんか、話がうま過ぎると思ったんだよなぁ」


 そこで貰った恩賞は、新たなギルドを立てる権利とそこのギルマスの権利。

 そして新しく見つかったダンジョンの調査の三つだ。

 順番としては、新たに見つかったダンジョンを調査するギルドが必要になった。

 ギルドを作りそこを管理する人材が必要になった。

 ただ、王都ギルドから出すにしても誰でもいいわけではない。

 そこでオレ? となる。

 ハメだろこんなの、ウチのシマじゃノーカンだわ。

 

「これが最寄りの町?」


 新たに見つかったダンジョンは、荒野にポッカリと空いた穴を蓋するように重厚な扉がしてある。

 そこで馬車から降ろされ、馬車は引き返していった。


 そこから歩くこと半日以上。

 カラカラに乾いたオレを待っていたのは、オレと同じくらいカラカラに乾いた町だった。

 町には宿屋すらない。

 酒場もない。

 当然、ギルドにできるような建物もない。


「この町にギルドを作って、さっきのダンジョンを調査するって罰ゲームだろ」


 オレとクルスの二人だけでだ。

 何年かかるんだよ。


「できる気がしねぇ」


「マスター」


 クルスが珍しくオレに声をかけてきた。

 あれ? なんか変わった?


「なんだ?」


「マスターならできます。それに、私もついていますから」


ここまでが一章になります。

二章については考えてはいますが、まだ形になっていません。

特に後半、更新が目に見えて失速したので、次はもう少し余裕のある投稿にしたいと思います。

ただ、二章については書くかどうかも含めて未定とさせてください。

それでもいいよという方は、ブックマークを残していただけると嬉しく思います。


待てないよという方は、お読みいただきありがとうございました。

遅くなりましたが評価、さらには感想までいただきありがとうございます。

更新の励みになりました。

次の作品で会えましたらよろしくお願いします。

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