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王都編
23/24

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「なんでや!?」


 思わず関西弁になってしまった。

 迷った。

 みんなとはぐれたらしい。

 なぜだ? ホワイ? ムボナ?

 いかん、思わずスワヒリ語が出てしまった。


 みんなと一緒に森林に入ったのに、なぜオレ一人になっているのか。

 確かに土の精霊はグレイに貸した。

 グレイシアに睨まれたからよく覚えている。

 欲しいなら自分で精霊と契約して欲しい。


 だが、そう簡単にはぐれるだろうか。

 否。


 これはそう、オレが迷子なんじゃない。あいつらが迷子なんだ。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「こんな時にどこに行きました!?」


「わかりません。精霊はいるので大丈夫だとは思いますが……」


 グレイシアがいつになく焦っているのがわかります。

 目の前に広がる光景が原因でしょう。


「おいグレイ! どう言う事か説明しろ!」


「説明と言われましても……」


 目の前に広がる花畑。

 そして、虚ろな瞳で佇むカシムと山賊たち。

 ロムルスが混乱するのもわかりますが、見たままとしか言いようがないですね。

 ただ、彼がいればこう言ったでしょう。


「嫌な予感しかしませんね」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「はっくしょん!」


 誰か噂してるな。


「おーい、グレイ。誰かー。誰かいないかー」


 さて、どうするか。

 背の高い木が多い。

 陽はまだまだ高いが、油断するとすぐに暗くなるだろう。


「はっ! はっ……」


 くしゃみが出そうで出なかった。

 なんだ、花粉かな。

 鼻がムズムズする。


「ハックション!」


 くしゃみをした瞬間、下がった頭の上を何かが通り過ぎた。


「なっ!?」


「へ?」


 目の前には全身黒ずくめの人影が立っている。

 手にはナイフ。

 いや、あれはクナイダート。

 つまり、忍者。


「アイエ!? 忍者! 忍者なんで!? ムボナ!?」


「チッ」


 忍者が後ろに飛び距離を取る。

 挨拶前のアンブッシュは一度まで、古事記にもそう書かれている。


 殺伐とした、末法アポカリプス。

 実際怖い。

 ここはまず挨拶だ。

 忍者が出会えば挨拶が交わされる。

 これが世界の真理。


「どーも、忍者さん。塚井です」


 手を合わせお辞儀する。


 じっとこちらを見つめ微動だにしない。

 挨拶を返さないとは凄い失礼。

 礼に始まり礼に終わる。

 かの宮本武蔵も五輪書にそう記している。


「王都ギルドの新入りだな。ここで死んでもらう」


 しゃべった! しかし、内容が物騒この上ない。

 この言い方だと、オレを狙ったように聞こえるな。


「オレを狙ったようだが、残念だったな。オレが本当に一人っきりになると思っていたのか?」


「ふんっ、世迷言を。私の認識阻害は完璧」


 認識阻害ね。

 やはりオレが迷子なわけじゃなかった。

 ただ、そういうのは効かないんだよ。

 特にホムンクルスには。


「貴様はここで一人、誰にも知られず朽ちるのだ」


「クルス!」


 オレの横をかすめるように、シールドが飛んでいく。

 しかし、忍者は体を翻し間一髪シールドをかわす。

 だが……。


「何!?」


 体勢を崩した忍者の頭上から、斧を構えたクルスが降ってくる。


「今日のアンブッシュは百点だ」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「まったく、馬鹿の相手は疲れる」


 バトラー服のまま厨房で火種をもらい、隠れて紙タバコをふかす。

 ポケットから取り出したメダルをもてあそぶ。


 あの男、もう少し使えると思っていたがな。

 小物すぎる。


 せっかくカレンナの情報を渡してやったというのに。

 あの花の価値をまるで理解していない。

 葉の密売などと、宝の持ち腐れではないか。


 あの花の真価は植えた時に発揮される。

 その生命力。

 その繁殖力。


 そして、辺り一面が花になった時。

 花が開いた時。

 花粉が舞う時。


 その時こそ、人々は狂喜乱舞する。


「くくく……」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「くくく…… 私を倒したところでもう遅い」


 胸に斧が刺さった忍者が寝言を言ってる。


「今頃、お前たちの仲間はカレンナの花粉によって冥府へと送られる」


「冥府ねぇ」


 それにしてもよく喋る。

 この世界の人は斧が胸に刺さっていても、意外と大丈夫なのかもしれない。

 そんなわけないか。


「ちなみに、花粉でどうなるわけ?」


「花粉によって頭を支配される。恐慌だ。全てが恐ろしく、全てが邪魔だと」


 結構しっかり答えてくれた。

 こいつもしかして親切なのか。

 いやでも、オレを殺そうとしたわけだし。

 少なくともいい人ではないな。


「恐怖は伝染する、一人残らず感染する」


 なるほどね。

 全体を混乱させる、フィールドトラップかな。

 ゲームでもよくある罠だな。

 ゲームだとダメージ床程度の感覚だが、実際に起きると確かに厄介だ。

 回復できる者を落とされれば、全滅コースだな。


「なんとかしますか」


「ふん、貴様に何ができる。ここで仲間が互いに殺しあう姿に、自分の無力さを噛み締めるんだな、くくく……」


 やっぱ、こいつ平気なんじゃ?

 とどめ刺しとくか。


「くくく…… ごふっ!」


 笑っていたと思ったら、血を吐いた。

 忙しいやつだ。


 一旦、土の精霊を呼び戻す。

 向こうは向こうで大変だろうが、土の精霊は必要ないだろう。

 むしろこのまま迷子だと、本当に手遅れになる。


 呼び戻した土の精霊のおかげで、花が咲いてる場所の大体の方角はわかった。


「では、いっちょやりますか」

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