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王都編
2/24

02

 安宿に逆戻りだ。

 まだ灰が残る床に寝転ぶ。


 ホムンクルスは部屋の奥で直立不動だ。

 人間と違い、食事も睡眠も必要としない。

 必要なのはマナと呼ばれる魔力だけ。


 寝転んだまま、クルスを見上げる。

 下からの眺めは最高の一言だ。


 クルスを手招きして、オレの横に座らせる。

 おもむろにオレはクルスに抱きついた。


 狭い部屋は人が二人、横になるスペースがない。

 クルスを抱き枕にして、胸の谷間に顔を埋める。

 柔らかい温もり。

 不意に涙が溢れてきた。

 今までずっと一人だった。

 頼るものが何もない生活を思い出す。


 でもこれからは違う。


★★★


 ハッと顔を上げる。

 いつの間にか眠っていたらしい。


 起きてあたりを確認する。

 すでに昼を大きく過ぎていた。

 どおりで腹が鳴るはずだ。


 クルスを連れて飯にしよう。

 こいつに食事はいらないが、一人の食事は寂しい。

 オレにも仲間ができたんだ。

 まあ、ホムンクルスだけどな。


★★★


 宿の一階が食堂になってる。

 でも昼はやってない。


 宿に泊まっている客も食事は朝と夜だけだ。

 朝食は簡単なもので、パンと薄いスープだけだ。


 で、夕方になると食堂は酒場として営業をする。

 そこで宿泊客も食事をもらうことになる。

 食事は宿代に含まれているが、酒は当然別だ。

 泊まりじゃない客が横で酒盛りしてたら、飲みたくなるのが人のサガ。うまい商売してるよ。


 一階に降りると、気の早い客がすでに飲み始めていた。

 晩飯には早いが、空腹には勝てない。

 宿の主人に飯を頼む。


「そちらの方は?」


「ああ、こいつは…… パーティーを組んでいるクルスだ。こいつには果実酒を頼む」


「へえ、わかりやした」


 あぶない、あぶない。

 勝手に泊めたのがバレたら、罰金を取られるところだ。

 パーティーメンバーなら、自分の部屋に来ることもある。

 二ヶ月なかった来客に怪しまれただろうか?

 まあ、どうでもいいか。

 ここに泊まるのも最後だ。


 運ばれてきたいつもの食事。

 味気ないスープと硬いパン。

 何の肉かわからない、カチカチになるまで焼いた肉。

 脂身なんて存在しない。

 味付けは塩だけだ。

 これでも肉なだけマシな方だ。

 肉っぽい何かじゃないだけな。


★★★


 硬い肉と硬いパンに歯が欠けそうになりながらかじりつく。

 ここにきて顎が一番鍛えられた気がする。

 その分、食事に時間がかかる。


 まあ、この世界は娯楽が少ない。

 食う寝る呑む以外、楽しみもない。

 遠く王都と呼ばれる所には劇場なんかもあるらしいが、観劇に興味もない。

 あと娯楽と言えるかわからんが、女か。


 横を見る。

 オレの横に腰掛けるクルスは、出された果実酒に口をつけるはずもなく、オレの下品な食事風景をずっと見つめていた。


 ゲームをしていた時は何とも思わなかったが、裸同然の格好した女がパーティーにいるって、精神衛生上この上なく悪いな。

 相手はホムンクルスだ、主人であるオレの命令には忠実だ。

 だがもし、生身の人間だったら?

 もしも、オレの言葉を聞き入れてこんな装備とも呼べない格好をする奴がいたら?

 オレは理性を保てるだろうか?

 そうなったらパーティーはどうなるだろうか?


 ああ、相手が女とは限らないのか。

 でも半裸の男とパーティーは組みたくないな。


★★★


 味はさておき、腹は膨れる。

 いっぱいになった腹を押さえて、クルスの果実酒を少しもらう。


 いつの間にか陽も完全に落ち、食堂にはダンジョンから帰還した冒険者の姿がちらほら見える。


「なんだ、今日は女も用意してんのか! 気が利くじゃねぇか」


 嫌な予感がする。

 その女って。


 一番奥に陣取った冒険者のパーティーがこちらを見ていた。

 やっぱりか。


 パーティーの一人。

 細身の男がこちらにゆっくりと近づく。


 どうする? 食事は終わったし無視して逃げるか?


「おい女! こっちにきて俺たちの相手しろ。なに、大人しくいうこと聞きゃいい思いさせてやるからよ。へへへ」


 男はクルスの体を舐め回すように見ると下卑た笑いを浮かべる。


 こういう時、かっこよく止めに入るのが男の役目何だが、この場合どうするのが正解なんだろうか。


 クルスは当然だが男のことを無視している。

 オレの命令以外はきかない。

 オレが主人だからな。

 だが、無視するのはダメだな。

 もう少し人間らしい反応をするようにしないと、ホムンクルスとバレてしまうかもしれない。


 だが、下手に反応するのも危険だ。


「おい! 無視してんじゃねぇ」


 こんな感じに。


 男がクルスの腕を掴み、引き寄せようとした瞬間。

 立ち上がったクルスは男の顔を掴むと、おもむろに持ち上げてしまった。

 男は顔を真っ赤にして、ジタバタともがいている。


 どうしてこう反応が極端なんだ。


「クルスだめだ、離すんだ」


 オレの命令にクルスは手を離し、男は床にへたり込む。

 かわいそうに顔があんなに歪んで…… まあ、もとから大した顔じゃないか。


 一触即発かと思われたが、クルスに顔を掴まれた男が、仲間の元にヨロヨロと帰ると向こうは黙ってしまった。


「部屋に戻ろう」


「イエス」


 主人にクルスの分を追加で払うと言ったが、主人は今夜だけならいらないと宿賃をおまけしてくれた。

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