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バーサーカーとビキニアーマーは使いよう  作者: 名称未設定
王都編
18/24

18


「はぁ……」


 ため息しか出ない。

 北門の前で構える衛兵団は、数の上ではこちらより圧倒的に多い。


 こちらはせいぜい十数人ほどだ、三倍から四倍近い衛兵が待ち構えている。


「帰りたい」


 先頭を行くゲオルグさんと、よく知らない熊みたいなおっさんは、タンクとファイターらしい。もともとパーティーだったみたいだから、連携も期待できるはずだ。


 その後ろをグレイシアとその他が続く。

 グレイシアはともかく、その横にいるチャラそうなにいちゃんと妙に暗いねえちゃんは使えるんだろうか。


 それにしても、なぜうちの子(クルス)はあんなに嬉々として、前線に行こうとするのか。

 今はおとなしくオレの後ろにいるが、最初は先頭を歩いていた。

 勘弁してほしい。


★★★


 こんな大規模戦闘は、ゲームでも経験がない。

 パーティーは最大六人だ。

 それが三パーティー集まってのレイドはあるが、スタンピードや攻城戦、国家間戦争などはなかった。

 まあ、あってもめんどくさいから、やらなかったと思う。


 戦端を切ったのは、もちろんゲオルグさんだ。

 クッソでかいタワーシールドを構える。

 このおっさんフォートレスかよ。


 その横からこれまたデカい両手剣を軽々と振り回す熊。

 ただの熊じゃないと思っていたが、人間だったのか。

 ウォリアーの最上級職ベルセルクだ。


 熊さんの反対側はグレイシアが構えている。

 剣を構えるだけで衛兵団に威圧を与えている。

 サイン以来だいぶ有名になったからな。


 それにしても中央で構えるゲオルグさんだ、一人で衛兵を抑え込んでいて本当に人間か疑わしい。


★★★


 思っていたほどやることがない。

 正直、衛兵団には地形が悪すぎる。

 大通りに集合してしまったため、戦闘に参加できる人数が限られる。

 前列を押さえられてしまうと、後方にいる連中が前に出られず遊んでしまう。


 当然相手も後衛は弓や魔法があるはずなんだが、お互いが近すぎて誤射の危険性もあって、なかなか積極的な運用ができない。


 都市でここまで大規模な戦闘はそもそも想定してないんだろう。

 はっきり言って、烏合の衆だ。


 ギルメンは違う、練度もそうだが、多対一という状況に遭遇しやすい。ゴブリンなど群れるモンスターは多い。

 気がつけば囲まれていた、なんて日常茶飯事だ。

 それと狭い場所での戦闘経験もある、ダンジョンは通路での戦闘が多い。ここは大通りだけあって道幅もある。これぐらいあればパーティーの行動に影響はほぼないと言っていい。

 だが、大部隊を展開はできない。

 密集隊形でジリジリと押し上げていくしかないだろう。


 本来こちらはゲリラ戦に特化した存在だ。陽動、撹乱、強襲となんでもできるが。しかし、それはパーティーという制限があるための行動と言える。

 今回レイド戦並の人数がいる。

 前衛、中衛、後衛とそれぞれの層が厚い。

 こうなると力押しもできてしまう。


 ただ数が多いだけの連中なんか相手にならない。

 むしろ散開された方が辛かっただろう。

 戦力を分散されると不利だ。


 おそらく隊長が自分かわいさで自陣に戦力の集中を図ったのが裏目にでた感じだ。


★★★


 普通、数が多い方が強い。

 数は力だからだ。

 これだけの人数差があると、戦うこと自体を回避する。

 勝負にならないからだ。


 しかし、ダンジョンに行ってる連中は違う。

 数の多さに惑わされない。

 冷静に状況を分析する。

 有利不利を的確に判断する。


 できなきゃダンジョンから帰ってこられないからだ。

 つくづく化け物みたいな連中だ。


★★★


 数で押していた衛兵団が、徐々に崩れていくのがわかる。

 もともとやる気の感じられなかった集団が、化け物じみた連中に迫られれば逃げ出す奴が出るのもしょうがない話だ。


 そして唯一勝っている部分である、数の優位が揺らげば崩壊するのも早い。


 散りじりに逃げ出す衛兵に構わずに突き進み、ついに北門を制圧。

 そのまま、詰所になだれ込む。


 しかしそこには、変わりはてた姿の隊長がいた。


★★★


「う、ぅぐぐぐ……」


 歯が折れるんじゃないかってほど食いしばり。

 威圧するかのような唸り声だけが詰所に響く。


「あいつどうしたの?」


 あまりの変わりように、思わず誰ともなく聞いてしまった。


「わかりませんが、いい状況ではないのは確かですね」


 鼻から血を流し、血走った目でぎょろぎょろと忙しなくあたりを見回す。

 カーキ色だった衛兵の制服は血と汗で変色し、隆起した筋肉で所々破け、そこから覗く赤黒い肌からは湯気が立ち上る。


「ころ…… す」


 呪詛のような言葉を吐き、もはや獣のようになった隊長が、こちらに襲いかかってきた。

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