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バーサーカーとビキニアーマーは使いよう  作者: 名称未設定
王都編
15/24

15


「ちなみにお聞きしますが」


「なんだ」


 ロドマスから聞いた話をグレイに報告する。

 なぜかいつものホールではなく、個室に通された。

 嫌な予感しかしない。


「証拠は?」


「ない!」


 オレは胸を張って答える。


「そうですか。今回の件なのですが……」


「あー、あー、あー」


 オレは耳を塞いで聞こえないフリをする。


「急になんですか?」


「どうせロクでもないことだろ。オレは聞きたくない。だいたい調査だけって言っただろ」


「残念ですがガッツリと当事者ですよ、貴方」


「ほら! やっぱりロクでもないじゃないか」


★★★


「今回の依頼はロムルスさんから出ています」


「……? 誰?」


「カンフェのギルマスだった人ですよ! 忘れたんですか!?」


「ああ、あのおっさんね。忘れてないよ、うん、忘れてない。懐かしいなぁ、元気にしてるかなぁ」


 忘れてました。


「まったく…… 発端はロムルスさんからカンフェにカレンナが持ち込まれた形跡があると報告を受けたことです」


「あんな田舎に?」


「街に持ち込まれたのはごく少量で、持っていた者も何を持ち込んだのかよく分かっていないようですね」


「かなり危険な物なんだろ? よくわからずに持ち込むなんてあるのかよ」


「持ち込んだ者の言葉を信じるならば、北の森林で発見した物に含まれていたようです」


「北の森林ね」


 草刈りした記憶しかねぇな。

 ただ最近どっかで聞いたな。


「ここ最近で森林に起きた異変は二つです。一つは私たちを襲った山賊の集団」


「ああ、そんな事もあったな」


 もう遠い記憶の彼方だ。

 よく考えるとあれからまだ二週間くらいしか経ってないな。


「もう一つは討伐された山賊頭の検分のために、第三衛兵団がきています」


「つくづく縁があるね。腐れ縁かよ」


 お祓いしに行きたいね。

 ここに神社があればだけど。


「衛兵団の検分にはカシムが同行しており、報告書にも不審な点はありません」


「カシムねぇ、なんでアイツが同行したのよ?」


 あのギルドのナンバースリーだっけ? いや、もうファイブぐらいに落ちてるな。アイツちょっと自意識過剰だったし、自己評価の高いやつは落ちぶれ出すと早いからな。


「カシムは今、カンフェのギルマス代行です」


「ええ!? アイツがギルマス!」


「そんなに驚くことでもないでしょう。ロムルスさんの右腕として長くギルドに貢献しています。ロムルスさんが引退となれば、カシムがギルマスになるのに不思議はありません」


「どうせ縁故採用だろ」


「エンコサイヨウ?」


「血縁や結婚なんかで家に入ったやつを贔屓することだよ」


「なるほど、確かにカシムはギルドの受付嬢と近直結婚しますね」


「受付嬢?」


「ご存知ありませんか? 受付嬢はロムルスさんのお嬢さんです」


「ええ!? あのおっさんが親なの!?」


 生命の神秘。

 いや、奥さんに似たのか。

 そうするとあのハゲ、綺麗な嫁さんもらってやがるんだな。

 なんか腹たってきた。


「驚くのはそっちなんですね。ただ結婚も正式にギルマスになってからなので、エンコサイヨウかどうか微妙ですね。何より家族などを組織に入れるのは普通のことですし」


 そうだな、元々ギルマスだったロムルスの娘が、受付嬢やってんだしな。縁故採用なんてむしろ常套手段か。


「不審な点はないんですが……」


「全くないのが不審と」


「まあ、そうなりますね」


「ロムルスかカシムに直接聞くしかないか」


「もう一人います」


「ん?」


「サイガス隊長です」


「誰?」


★★★


 まったく、次から次へとロクな事がない。

 カタリナ様へのお布施が足りないのか。

 やはり一度礼拝をサボったのがまずかったか。


「隊長」


「今度はなんだ!?」


「お客様がお見えです」


「客だぁ? 今忙しいんだ、しょうもない奴らなら適当に追い返せ。それで誰がきた?」


「王都ギルドの方です」


「ギルド? チッ、通せ」


「イエッサー」


 ギルドの奴がなんの用だ?

 どうせロクな話じゃないのは分かっている。

 ああ、胃が痛い。

 最近西門で出回っているミズアメを買うか。

 あの黒の聖騎士グレイシア嬢も、愛飲していると噂のミズアメ入り紅茶を試してみよう。


★★★


 詰所で隊長との取次を頼むと衛兵に隊長室に通された。

 広い隊長室は、応接用のソファーが対面で置かれ、その奥に年期の入った机がある。調度品は少ない。よく言えば質実剛健。どちらかと言えば部屋を飾るのに興味がないと言った方が正確かな。


「なんの用だ? 俺は忙しいんだ、手短にな」


 ソファにドッカと座る第三衛兵団の隊長。


「それでは失礼して」


 向かいのソファにオレとグレイが座る。


「そういや懸賞金どうなった?」


「半金はすでにいただいています」


「もう半分はもう少し待て、まだ手続きの最中だ。まだしばらくかかる」


「存じています。今日来たのはその話ではありません」


「じゃあなんだ。さっさとしてくれ」


「カレンナについてです」


「禁制品だ。どんな理由であろうと所持、密造、密売した場合。極刑もある」


 思っていたより重いな。

 極刑ってことは死刑だろ。

 どんな方法で死刑になるか考えたくないが。


「少量ですが西門の界隈で取引されているようです」


「西門なら第四衛兵団の管轄だ。うちの案件じゃないな」


「そうですか。もう一つ北の森林でも少量ですが所持している者がおりました」


「北の森林…… カンフェの辺りか」


「はい」


「それで」


「それで、とは?」


「どこまでつかんでいる」


「今のところ以上です」


「そうか。おいっ! サブ!」


 隊長が立ち上がると、ドアの方に呼びかける。


「イエッサー」


 先ほど案内してくれた衛兵が、隊長室に入ってくる。

 ドアの前で待ってたらしい。


「こいつらを国家反逆罪で拘束しろ」


「な!?」


 驚くグレイの顔を見ながら、なんで二人で来たのか後悔していた。

 国家権力と対立するのは得策じゃ…… ないよな。

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