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王都編
13/24

13


「こ、これは!?」


 ヤベェ!?

 とんでもないものを見つけてしまった。

 いつものように東の森で草を集めている時に見つけた。

 よく見れば辺り一面生えている。


 これがあれば、アレ(・・)ができる。

 手当たり次第に摘んでしまった。


★★★


 ギルドで草を納品してる時も落ち着かない。

 誰かに見られていないか?


 こちらの世界に来てすでに三ヶ月近く経っている。

 すでに我慢の限界だった。

 見つけてしまったからには、何としても摂取しなければ。

 オレは居ても立っても居られず。

 コソコソとギルドを後にした。


★★★


 草を換金して手に入れた金を持って、王都の市場に行く。

 実は、存在は確認していた。

 市場で普通に買う事ができると、ゲオルグさんから聞いていた。

 しかし、購入には至らなかった。

 危険だからだ。

 アレ(・・)に手を出せば、もう引き返すことはできない。


 だが、手に入れてしまった。

 手に入れてしまったんだ。

 オレを止めることはできない。


★★★


 王都はとても大きな街だ。

 どこで見られているかわからない。

 そこで、普段は使わない西門に向かう。


 実は西側は少し危険な地域だ。

 スラムとは言わないが、王都の中では治安の悪い場所となる。

 西側は交易用の門があり、外に出るとテントが乱立してる。

 行商人がここで物々交換したり、露店を開いたりと楽市のようになっている。

 ただ、当然よそ者が多く王都の民と比べれば素行はやや悪い。

 また商人の品や買い物客の財布を狙う輩も多い。

 単純に人が多いこともあって、王都内の市場と比べて治安に不安が出る。


 テントとテントの間、ちょうど良い場所を見つけた。

 そこで腰を下ろし、持ってきた鍋を取り出す。

 ついにこいつを使う時が来た。

 思えば長くかかったものだ。


★★★


 鍋に水を入れ、東の森で見つけたアレ(・・)を入れる。

 この日のためにこの鍋は用意したと言ってもいい。


 そう、飯ごうだ。

 この独特の形状を伝えるのに苦労した。

 底の深い鍋を買って横から殴って成形しようとした事もある。

 見事に失敗したがな。


 あとで気がついた、普通に鍋でいいやんかと。

 しかし、外で米を炊くと言えば、飯盒炊爨しか思い浮かばなかった。


 米を炊く。

 日本人としてあるべき姿。


 しかし、ただの米じゃない。

 なんと、もち米だ。


 もち米があればアレを作れる。


★★★


 水を多めに入れておかゆのようになったもち米に、市場で購入した大麦を入れる。

 これによって麦芽糖を作れる。


 これを煮詰めるとできるのが、水飴だ。


 こちらの世界に来てどうしても手に入らないものが甘味だ。

 砂糖もハチミツもとても高価で、何より甘い食べ物に飢えていた。


 米さえあればと何度思ったことか。

 それを見つけてしまった。

 もう我慢できない。

 この危険な食べ物の誘惑に抗うことはできない。


★★★


「何をしているんですか?」


 ハッとした。

 水飴作りに夢中で接近に気がつかなかった。

 振り向くとグレイシアが立っていた。


「ギルドでも何やらソワソワとしていましたが、やっぱり何やら怪しげなモノを作っていますね」


「いや! こ、これは、違うんだ! そういうんじゃないんだ」


「どういうのだというんですか。違うとおっしゃるなら(わたくし)に出しなさい」


「ぐっ!?」


 なぜだ!? あれ程周囲にバレないように気を配ったというのに、一番バレてはいけない相手に見つかるなんて。

 クソ!


★★★


「これは!?」


 煮詰まり飴色になった水飴を一口含むと、グレイシアは固まった。

 だから見つかりたくなかったんだ。


「どういったモノかは分かりました。(わたくし)が勘違いしていたことは謝ります」


 まあ、確かに挙動不審だったからな、勘違いするのも無理はないかもしれない。


「それはそれとして、こちら譲ってください!」


「ダメだ。これはオレのだ!」


「なぜです。またお作りになればいいでしょう」


「違うんだ、今なんだ。いま必要なんだ」


「そこを…… そこをなんとか……」


★★★


 グレイシアと喧々諤々(けんけんがくがく)とやり合っていたら、周りを野次馬に囲まれてしまった。


 しかも、取り合いになっていることから、そんなに良いものなのかと知らない行商人が、横から買うと言ってきた。


 そこからは収拾がつかず。

 ヤケになったオレは、削った木の棒の先に水飴をつけて、少しづつ売ることにした。もはや駄菓子屋か、紙芝居のおじさんだ。桃太郎でも語って聞かせようか? 桃があるかはしらないが。


 だが、ただでは転ばない。

 値段を銀貨一枚にした。


 感覚的なものだが、日本円で八千から一万円ほどだろうか。

 水飴一口に出す値段ではない。

 しかし、ここは異世界。

 砂糖は品質や量にもよるが最低でも金貨がいる。

 それを考えれば、銀貨一枚でも安いはずだ。


★★★


 わずかな時間で、鍋一杯の水飴はなくなり、睨みつけてくるグレイシアに明日も作るよう命令された。

 言われなくても作るよ。

 甘味に飢えているのはオレも同じだからな。

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