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王都編
11/24

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「クルス! タウント!」


「イエス、マスター」


 クルスが盾を打ち鳴らし、ヘイトを稼ぐ。

 走るジャイアントシマリスもどきの進路がクルスに変更された。


 すぐにクルスにバフをかける。

 今は火力よりも防御優先だ。

 火力なら最上級職である聖騎士(ホーリーナイト)のグレイシアがいる。クルスには本来の適正であるタンクをしてもらう。


 防御は装備の重量と関係がある。

 重い方が防御力が上がる仕様(・・)になっている。


 これを利用して、装備にスネイルをかける事で一時的に装備の防御値をあげるテクニックが発見された。

 スネイルは本来対象の敏捷性を下げるものだが、その原理が『体が重くなって足が遅くなる』だったため、考案された裏技だ。


 クルスのシールド(・・・・)にスネイルをかける。


「何をしてるんですか!?」


 グレイシアが抗議の声をあげるが、今は無視だ。

 同時に対象の筋力値をあげるバルクアップもクルスにかける。


 クルスにジャイアントシマリスもどきが衝突して、ドンッと、まるで交通事故みたいな音が響く。


「止めた!?」


 グレイが驚いてるが、まだまだここからだ。

 お前らにはキリキリ働いてもらうからな。


★★★


「やぁああああああ!!」


 戦端を切ったのはグレイシアだった。

 アタッカー系最上級職は伊達じゃないらしい。


 ブーストの乗ったグレイシアが一刀で尻尾を切り落とす。


「おいグレイ、あいつ強いぞ」


「王都ギルドで最強と呼び声高い人ですから」


「マジかよ。あとでサインもらっとこう」


「サインなど、どうするおつもりですか?」


「どうって、有名人からサインもらったりしないの?」


「しない、ですね」


「そうか。じゃあ、第一号だな。プレミアつくぞ」


「あとで詳しくお伺いしますね」


「お、おう」


 グレイの細い目が一層細くなった気がした。


★★★


「こんネギ泥棒がぁああ!!」


 追いついたライザさんが、足の健を狙って鉈を振り下ろす。

 相手の動きを封じる攻撃に、確実に仕留めるという気概を感じる。


 狙いが的確すぎて怖い。慣れてやがる。


 片膝をついたジャイアントシマリスもどきの顔面に、クルスのシールドバッシュがヒットする。

 口と鼻から血を出し倒れる。


「とどめ!」


 グレイシアの剣がきらめき、首を跳ね飛ばした。


★★★


「ふっ、げっ歯類が調子に乗るからだ」


「急にあなたが調子に乗らないでくださいね」


 グレイは常識人系ツッコミか。


「助かっただよ」


 血が滴る鉈を持ったライザさんの姿に若干引く。


「いえ、ライザさんが追い込んでくれたおかげで、すんなり終わりました」


「いやいや、あんたらのおかげでオッポを駆除できただよ」


 このまま、謙遜合戦をしてもいいが、隣で固まっているグレイとグレイシアの二人が気になるので、適当に切り上げる。


「すみませんが、まだ仕事の途中でして」


「そうかい、そうかい、引き止めて悪かったね。ワシももう一仕事してくるで」


「それでは、また」


 会釈して、王都の方に向かって歩き出す。

 ついてくる二人は黙ったままだった。


★★★


「まったく、生きた心地がしませんでしたよ」


「まったくです」


「なんで?」


「なんでじゃありません。あの方は森の番人ですよ!」


「なにそれ?」


 オラウータンか?


「森の番人とは、エルフが派遣している監視員です。人が森を荒らさないか見張っています。何かあれば、エルフの戦士がやってくるんですよ」


「へー」


「まったく、敵対関係ではないとはいえ、緊張状態ではあるんです。もう少し慎んでください」


「粗相はしてないぞ。だいたい、お茶を飲ませてもらっただけだし」


 なぜオレが怒られる展開なんだ。

 納得いかんな。


「それよりサインくれよ」


「どうして(わたくし)があなたの保証人にならなければいけないのです?」


「誰が借金の保証人を頼んだよ」


「では署名(サイン)など、どうするおつもりですか?」


「いやいや、有名人からサインもらうのは普通だろ」


 グレイの方を見ると、よくわからないという顔をしている。

 なぜだ!?


「普通ではないですね」


「有名人に会ったって言っても、本当かわからないだろう? だから本人からサインもらって……」


「そのサインが本物であるとどう証明するのです?」


「それを言い出したら本人を目の前に連れてこいって話になるだろう。だいたいサインの偽物が出てくるってことは、それくらい有名ってことだろ、なら本物のサインにさらに価値が出る」


「サインに価値? 貴族の署名(サイン)ならいざ知らず一冒険者の名に価値がつくと?」


「でもあんた強いだろ」


「グレイシアです」


 グレイが割って入ってくる。


「強い者に憧れるのはわかります。しかし、サインなど欲しがるでしょうか? 身につけているものを頂く方が良いでしょう?」


「言いよってくる相手にいちいち持ち物あげてたらキリがないだろ」


「だからこそ、頂いた物に価値があるのでは?」


「それじゃ限られた人だけになっちまう。もっと広くファンを増やすんだ」


「ファン?」


「サインもらったら人に自慢するだろ。自慢された方は興味なかったグレイシアって冒険者のことをそこで知るし、知れば自分もサインが欲しいと思うようになる」


「なりますか?」


「好きな踊り子を友達に布教したりするだろ」


「ああ、それならばわかります」


「誰が踊り子ですか!」


 グレイシアがさっきから怒ってばかりだ。

 なんとか機嫌取りしないとな。

 なにせギルドの実力ナンバーワンだ。

 先ほどの戦いを見ても実力者なのは間違いない。

 取り入って損はないはずだ。


「わかった、一度ギルドで実験しよう」

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