5000年ぶりの魔獣
朝だ。結界の周りを見る限り何も無かったように見える。それでも一応ログは確認しておこう。
「履歴開示。」
[表示項目なし]
…何もない。もしかして、世界から魔獣は廃絶されたのか?いや、まさか…。とにかく早めに町を見つけて情報を集めよう。
っは!?何か違和感が…。俺が周りの景色に飽き、そろそろ転移でもしようかと考えていた時、俺の認識領域下に不可解な魔力を検知した。もう少し先に行ったところだ。
「マスター。」
「サクラ、お前も感じたか。少し走るぞ。」
これだ。違和感の正体は、結界魔法の発生源になっている常駐型の魔法だった。しかしこれ、魔獣が通れないのと、魔獣の情報を遮断するだけの結界だぞ。もしこの外に町があるのなら、中に封じ込める方に使用するはずだ。だが、俺たちはまだ魔獣にあっていない。単純に運が良かっただけなのか…。今は情報が足りない。考えるのは町についてもう少し情報が集まってからでいいだろう。そして俺は結界を抜けた。
結界を出てすぐにわかった。明らかに空気が違う。それに、俺の認識領域下で明らかに動いている魔力の塊が無数にあるのだ。あの結界は中を外の魔獣から守る為の結界だったのか。だとしたらあの結界はなんだ?中にあった町ぼ名残なのか?いや、それにしては範囲が広すぎる。それに町は滅んでいた。やはり情報が足りない。ともかく町を目指そう。
「ガルルルルルル」
お、魔獣のお出ましだ。 こいつは確かAランクの、…え、えーっと。
「フェンリルです。」
そ、そうだフェンリルだ。懐かしいな。そうこいつとは、…えっと。う、うーん。何も思い出がないな。
「グァウ!」
無視するな、とでも言いたげにこちらを睨んでくる。こいつのナワバリだったのかな、ここ。
「みたいですね。」
そうか、それは済まないことをした。お前が何もしないならここは素通りするが。そんなことを考えていたら、フェンリルが痺れを切らし飛びかかってきた。身体を魔法で強化した明らかに殺意のある行動だ。仕方ない、あまり弱いものいじめはしたくないが。
俺はフェンリルの攻撃を身体さばきだけで躱し、腹に拳を打ち込んだ。
「思ったよりしぶといな。」
俺は一撃で倒せるギリギリで攻撃したつもりだったが、少し弱かったようだ。フェンリルは大きく吹っ飛ばされたが、まだ少し息がある。このまま苦しませるのも悪いだろう。そうして俺は、さっき拳を打ち込んだ位置に、再び拳を打ち込んだ。