魔法の衰退
「ユウキ様、終わっ…どうかしたの?」
「何でもないよ、どうして?」
「とても怖い顔してたから。」
そうか、さっきの一件には相当腹が立っているからな。それを顔に出してしまったのか。
「大丈夫だよ、何でもない。」
「うん。」
ラツにはこのことを話さなくてもいいだろう。というか、今夜で全部かたずけてやる。(マスター、私は?)サクラにはラツの護衛を頼みたい。あいつらすきあらば俺たちを襲おうとしているようだったからな。(何体かマスターの方につけますか?)…そうだな、俺が呼びたしたらすぐに来れるよう転移魔法の準備をして待機だ。(了解です、マスター。)
「よし、ラツ、サクラ、時間もちょうど良くなってきたし宿に行くか。」
「うん(はい)」
俺たちはギルドを出た。
視線を感じる。どうやらつけられているみたいだ。視線の先の気配を探ると、殺気が少し漏れている、と言っても殺気を隠しているわけではなく、少量の殺気しか持っていないだけだが。(マスター、どうしますか。)そうだな、別に無視しても構わないが、この視線をそのまま放置しておくのは鬱陶しい。よし、サクラ、裏路地に入る。お前はラツの護衛が最優先だ。俺が戦闘を始めるのと同じタイミングで結界を張れ。(了解です、マスター。)
「ラツ、宿への近道はこっちみたいだ。行くぞ。」
「わかった。いこう。」
「どーも、ビギナー。お前油断しすぎじゃね。Bランクの俺たちに喧嘩売っといて、こんな殺してくださいと言わんばかりのところにくるとか。馬鹿じゃねーの?」
「あ、わかった。お前死にたいんだろ。自殺が怖いから俺たちに殺してもらおーってかww」
「ギャハハハハハハハハハハ!」
予想通りにつけていた奴らが出てきてくれた。しかし出てきたのは二人だ。俺が感じていた視線は3人分。一人は報告のため隠れて待機ってところか。
「おーなんだ、なんか言ってみろよ。」
「無視すんのか!」
頭悪そうなセリフだなーほんとに。
「御託はいい。さっさとかかってこい。まあ、口だけがBランクのお前達には荷が重いかな。」
「てめーぶっ殺すぞオラー!!!」
一人が腰の剣を抜いて切り掛かってくる。剣筋もスピードもギルドにいたBランクとほとんど変わらない。だからこういう風に思考する時間も十二分に存在している。さて、そろそろ俺も動きますか。左手に魔力を出して、奴の剣がちょうど魔力に埋まるタイミングでチタンに変換。
「なに!?お前なにをした!?」
そう言われて答える義理は俺にない。ということでその驚いているスキに、チタンに埋まった剣を切ってきた奴の体の中に転移。
「がぁは…、何だ…これ。」
「お前の体内に剣を入れたんだ。もう臓器が全部潰れてるしせいぜい苦しんで死んでくれよな。」
「い、いやだーーーーー!!!!俺は、Bランクなんだぞ!それをEランクごときに…。」
よし、これでこいつはいいだろう。そういえばもう一人は杖を持っていたな。魔法使いか。それにしても今の詠唱って無駄に長いんだな。さっきの奴が切り掛かってくるのと同じくらいから詠唱しているみたいだがまだ終わってねえ。
「詠唱の調子はどうだい。」
「ああ、もうすぐかんせ…貴様、いつの間に!?」
「あんたの連れならもう死んだぞ。」
「な!?」
「お前には選択肢がある。一つ、魔法を打ってから死ぬ。一つ、魔法を打つ前に死ぬ。」
選択肢を与えたのには意味がある。Bランク魔法使いの魔法の威力の確認のためだ。ラツが厄介ごとに巻き込まれない為の必要な時間になるはず。
「そんな選択肢に従う気はねえ!それにもう魔法は完成したんだ!喰らえ!!ファイアストーム!!!」
おう、まあまあやるな。5000年前のDランク位あるぞ。その杖。まあ、術者は雑魚だ。5000年前はあった冒険者になる為の適性試験を合格できないだろうな。ちなみに、この俺の体は魔力で作った分身だから、俺より強い魔法じゃないと俺を傷つけることはできないな。本体は地下にあるし大丈夫だろう。
「どうだ、これが俺の実力だ!!俺に呪文を打たせるスキを与えたからだ!ハハハハハ!」
俺がファイアストームに飲み込まれて死んだと思っているみたいだ。この世界の攻撃魔法のレベルもだいたいわかったし、もういいだろう。
「ハハハハハ…は!?俺のファイアストームが一瞬で霧散した…それどころか無傷だと!?」
こいつらが使ってる魔法なんて所詮魔力の塊だ。その魔法より高濃度の魔力を意識して当てれば直ぐに消える。
「お前からは情報が得られた。よってサービスだ。」
「なんだ、殺さないでくれるのか。」
「ファイアストームで殺してやるよ。」
俺のファイアストームはでかいから、問題にならないように結界を…サクラさんがこっちの結界も張っておいてくれました。マジ優秀だな。
「はっ!そんなの詠唱時間で逃げれば…。」
そうだった。あの無駄に長い詠唱は、こいつらには無駄じゃないんだった。あんだけ詠唱しないと呪文唱えられないとか…利便性に欠けるな。だがしかし、俺は遠慮なく無詠唱で打たせてもらおう。
「ファイアストーム。」
走り出そうとしていた魔法使いに俺のファイアストームが直撃した。
「ぎゃー!なんだこの大きさは!?それに無詠唱だと!?いや、そんなこと…ギャアアアアアア。」
まあ、こいつが出したファイアストームの100倍ぐらいまでなら作れるからな。5000年前のSランクは。まあ、今回は10倍程度にしたがな。ついでにこっちの剣士の死体も放り込んでおいて…これで証拠隠滅だな。(マスター、もう一人は撤退をしようとしていますが、消去しますか?)…別にいいぞ。今回の件の報告のために人が集まることに期待して逃がそう。幸い宿までつけられる心配は無くなったからな。(了解です、マスター。)
ゴミの焼却を終えた俺たちは、表の大通りに出て宿に向かったのだった。




