『初』デート
「…………」
騒々しい雑音、高く昇る灼熱の太陽、視界いっぱいに映る人の群れ。
どれもこれもマイナス要素でしかない。静かで、暗くて、人のいない空間を好む玲にとっては最悪といっていいこの状況。しかし、それも仕方がない。何せ、今日は土曜。日々忙しい学生も社会人も、主婦も子供も、義務から解放され、一時の娯楽に勤しむ時だ。それに加えて、現在ここはショッピングモール前の広場。人が多くて当然の場所だ。いつもの玲であれば、嫌気と体力の浪費とその他諸々の理由で死んでいただろう。
しかし、今日は違った。
玲ははたから見ても分かるほどそわそわしており、正直その他のことに意識を割く余裕もなかった。
「たっく~ん、会いたかった~」
「俺もだよ、みっちゃ~ん。今日はいっぱいいちゃいちゃしょうね~」
と、玲の隣で周囲の眼もはばからずいちゃいちゃするカップルに視線をやる。
玲が経っている場所は、待ち合わせとして分かりやすいよう、設置された時計の下なのだが、皆考えることは同じらしい。玲やカップルの他にも、数人が時計の下にいる。
それにしても……。
「はぁ……」
玲は合流したのにもかかわらず、一向に動こうとせず、その場でいちゃつくカップルを見て、ため息をつく。いつもなら気づかれないよう視線だけで殺せそうなほどの睨みを利かせる場面だ。恨みやひがみなどではない。ただ純粋にウザいという感想。
しかし、やはりいつもとは違う玲は、ここで抱く感想もまたいつもとは異なるものだった。
「……やっぱり、男女二人って、デートだよなぁ」
気が重くなる話である。
普通の友達とすらまともに遊んだことのない玲が、初めて家族以外(風祢も含む)との外出でデートだなんて。楽しみとか嬉しいとか以前に、緊張と不安で押し殺されそうになる。……いや、正確に言えば『初』ではないのだが、アレらはデートに入れたくない。思い出すだけでも、際限ない切なさと怒りがわいてくる。
ただゲームを買いに行くだけ、と割り切れればいいのだが、そうできない理由がある。あくまで玲の目的は好意を抱いてもらってのキス。この外出もその一環だ。つまり、言葉としてはデートという言い方が正しい。
そう思う心があってしまえば、どう言い訳しても意識させられてしまう。
これがもっと、女慣れしている男であったならば、大して苦労せずに異能を奪うことができたのだろう。しかもイケメンならなおさら。玲の顔は、まあきちんと整えれば悪くはない。中にはイケメンだと思う人もいるだろう。しかし、生粋のイケメンには到底敵わない。そして、一番重要なのが玲が全く女慣れしていない、むしろ男子含めて全人間を苦手としているのが問題だ。異能奪取とは相性が悪すぎる人格。経験や技術以前にまともに接することも難しい。これでは、せっかくの玲の頭脳も役に立たない。
「誰か変わってくれないもんか……」
そう呟くも、当然誰も答えてはくれない。
チラと時間を確認すると、約束の時間の十分前。
リィが、女子との約束は最低でも三十分前に行く、と何やら意味不明なことを言っていたために、半ば無理やり早い時間帯に来させられたのだが。この状態で後十分も赤塚を待つのは辛い。
そう、今日は赤塚との約束の日。
やっぱり後から断られるかもと思ったのだが、結局その話には触れてこなかったので、忘れていないのであれば来るだろう。多分。
「あ、あの……待った?」
すると、控えめにそんな声がかかった。
見ると、玲の横でちょこんと立つ少女、赤塚がいた。小さいのもあるが、何よりもその気配を消す技術には目を見張るものがある。周囲の変化に機敏な玲でさえ気づくことができなかった。
「い、いや。丁度今来たばかりだ」
事前にリィに吹き込まれたセリフを口にする。
ちなみに、そのリィは今も玲のシャツの胸ポケットでぐーすか寝ている。今回何の役にも立っていない。
と、何やら赤塚が顔を赤くしてもじもじしている。
一瞬何だか分からなかったが、すぐにリィの教えを思い出す。女の子と合流したら、まず服装を褒める、だったか。玲は普段のラフな格好とは違う赤塚の服装に目をやる。
小柄な赤塚に似合う、シンプルだが可愛らしい服装だ。
似合わないと思っているのか、そこいらの女子高生のような露出は少なく、大人っぽさは感じられない。しかし、だからといって子供っぽいわけではない。絶妙にその間をついてくる。しかも、それが赤塚に物凄く合っているのだから言葉もない。赤塚は意外と、オシャレに詳しいのかもしれない。
つまり、総じて言うとめちゃくちゃ可愛いということだ。
今すぐにでもぎゅっと抱きしめてあげたくなるほど、玲の心臓をついてくる。しかし、そんなことをしたら間違いなく赤塚は帰ってしまう。ここはぐっとこらえるしかない。
「す、すごく似合ってる。何っていうか、絶妙に赤塚に合ってる感じがする」
褒めなれていないながらも、どうにか思ったことを素直に口にする玲。
赤塚はそれを聞いて、耳まで真っ赤にして俯いてしまう。その後、小さな声で「ありがとう」と言ったのを、玲は聞き取ることができた。
建前とは言え、今日の目的はゲーム。
玲と赤塚は、微妙な沈黙に耐えながらも、ショッピングモール内のゲームショップへと向かった。
結局、あの日以来毎日赤塚家に行ってはゲームをしていたので、それなりには話せるようになったが、それはあくまでゲームを媒介とした場合の話。こうして、二人並んで歩くとなると、何を話していいものか。やはり、ゲームの話題だろうか。
すると、赤塚も同じことを考えていたのか、おずおずと口を開いた。
「……今日買いたいゲームって、何?」
「ん? あ、ああ。少し前に発売したRPGなんだけど、最近いろいろあって買いそびれてさ」
「それって、『革命のヴァルキリー』?」
「あ、そうそう」
赤塚の口から出てきて少しばかり驚いたが、考えてみれば『革命のヴァルキリー』はRPGの中でもかなり有名なシリーズもので、今回玲が買おうとしているのはシリーズ四作目だ。ゲーム好きの赤塚が知っていてもおかしくはない。
本当は発売日に買い、徹夜でクリアといういつもの流れをやりたかったのだが、リィが来てからというもの、青麗院、琴吹と休む暇もゲームを買いに行く暇もなかった。今更どうこう言うつもりはないが、そのせいで買うのを先延ばしにしていたのだ。
「もちろん、私も全シリーズやってるわよ。一作目からのファンだし」
「本当か。じゃあ、最新作もやったのか?」
「当然、って言いたいけど、積みゲーが山ほど残ってて……。とても新しいものに手を出す余裕はなし。でも、今作は過去作以上に傑作なんでしょ?」
「ネットの評価では、そうだな」
「はぁ……。私もやりたい。積みゲー後に回して先にやろうかなぁ……」
先程の気まずい空気が嘘のように、いつのまにかお互い自然体で会話が続いていた。やはり、ゲームとなると二人とも意識がそっちに行ってしまい、緊張も忘れてしまう。いつもチャットでやっていたやり取りが今、目の前で行われていることに、玲は少しばかり不思議な感覚を覚えた。
その後も、ゲームの話題が続き、気づけばあっという間にショップへついてしまっていた。
「あ、これこれ。ずっと気になってたんだよね」
並ぶゲームの山が目に入るや否や、早速赤塚がゲームに駆け寄っていった。
まるで子供みたいだなと微笑ましく思う玲だが、玲自身も大分意識をゲームの方へ引っ張られていた。
普通、ショッピングモール内のゲームショップというのは品ぞろえが悪いことが多いが、この店は大手ゲーム専門店にも引けを取らない品ぞろえの良さだ。玲は基本ネットで注文することが多いが、実はちょくちょくこの店には来ている。
「ああ、それ俺もうやったぞ」
「どうだった?」
「ゲーム性は悪くないんだけど、問題はストーリーだな。伏線が多いし回りくどいし、結局全部回収しきれてない。設定も複雑すぎる故に矛盾が多いし、シナリオが長いから時々無理やり端折ってる感が否めない」
「点数をつけるなら?」
「七十点だな」
意外な高さに、赤塚は眉を上げる。
「高くない?」
「ああ。確かにストーリーは減点だけど、その他は総じて良い。特に、グラの綺麗さと設定が細かいが故のやり込み要素が多い点がいいな」
「ふーん、そこまで言うなら、あとでやってみようかな」
そう言って、赤塚はソフトを持ったまま別のところを回る。恐らく、買うのであろう。先程積みゲーが山ほど残っていたと言っていたが‥‥…。積みゲーは、こうして増えていくのだな。
玲も、自分の目的の物を探しながら、掘り出し物がないか見て回る。
それから一時間程。
お互い気になるものを見たり、アドバイスをしたり、良し悪しを語ったり。ゲーム、というのは少しどうかと思うが、それでもはたから見ればデートには見えなくはない距離感を保っていた。
目的のものを買い、玲達はショップを後にする。ちなみに赤塚の腕には『革命のヴァルキリー』四作目が入った袋がある。結局買ったらしい。
「目的も達したし、どうする? 帰る?」
「……お腹すいた」
赤塚の小さな呟きに、玲は現時刻を確認する。恥ずかしいのか、少し顔を赤くしている赤塚は可愛い。
見ると、十二時を軽く回っており、丁度お昼の時間だ。玲はあまり意識することはなかったが、言われてみると、微かに空腹感を感じる。
玲はくるくると辺りを見回すが、近くに食べ物を売っている店はない。
「仕方ない。フードコートに行くか」
ということで、フードコードに向かう玲達。
さすがに昼飯時なだけあって混雑していたが、何とか席を確保することに成功。久々の人混みでの疲労感が押し寄せてきて、玲はゆっくりと椅子に腰を下ろす。とっても、現在も周囲にたくさんの人がいるので、全然心は休まらないが。これは、この時間帯に来たことは間違いだったかもしれない。
チラと赤塚を見ると、赤塚も心なしか疲れているようだった。玲としても、さすがに今日異能を奪えるとは思っていないので、飯を食べ終わったら帰った方がいいか。異能以前の問題で、あまり赤塚に無理はさせられないし。
手早く昼食を終えた玲と赤塚は、足早にその場を後にした。
別段どこに向かうかは意識して歩いていないが、このまま出口へ向かっていいだろう。玲は赤塚に声をかけようとする。が、なぜか隣に赤塚はいなかった。
「?」
小さくて見えなかったとかそういう問題ではない。本当にいないのだ。
まさか……迷子?
玲は考えるが、さすがにそれはないだろうと考えを否定する。赤塚はしっかりしている。迷子になんてならないだろうし、もしなったとしても自力でどうにかするだろう。
「あ……」
と、少し戻ったところに赤塚がいた。どうやら、途中で止まって玲についてこなかったらしい。
そんな赤塚は、近づく玲に気づかず、ただボーッと何かを見ている。赤塚の前には壁しかないが……もしかして、何か玲には見えないものが見えているのだろうか。
何て馬鹿な考えも、赤塚の元によれば切り捨てられた。どうやら、赤塚は壁に貼ってあるポスターを見ているらしい。それも、玲に気づかない程熱心に。
「何見てるんだ……?」
「ふぇっ……!?」
いきなり声をかけられて驚いたのか、可愛らしい声で驚く赤塚。
玲は赤塚が見ていたポスターを覗き込む。どうやら、映画の宣伝ポスターらしい。『僕の名は』なるタイトルの映画は、玲も聞いたことがあった。何でも、今大人気の映画だとか。
「これ、見たいのか?」
「……ちょっと、気になってただけ」
気まず気に目を逸らす赤塚。
確かに、赤塚がこういう映画が好きなことには少し驚いたが、別におかしなことはない。全く興味のなかった玲でも、面白い面白いと大絶賛されれば、多少は興味がわく。
赤塚からは言い出しづらそうだったので、ここは玲からふってやるのがいいだろう。
「じゃ、見るか」
「え……」
「俺も少し気になってたし……。ほら、もう少しで上映だ。早く行かないと」
「え、あ、うん」
少し驚いて状況についていけない赤塚だったが、見れることには嬉しそうだった。
一人で映画を見るというのは中々に神経をすり減らされるので、きっと今見に行かねば赤塚は上映終了まで見ることはないだろう。幸いここはショッピングモール。当然のように、映画館もある。
手早くチケットを買うと、映画館の中へ。所定の椅子に座る。
確かに人は多いが、映画館は基本的に静かだし、暗くて周りの人もある程度は認識しなくて済む。赤塚としても、さほど気にしないで済むだろう。と思ったのだが、玲はチラリと赤塚の方を見る。すると、あからさまに緊張しているのが分かった。暗いので、頬が赤く染まっているかまでは判別できなかったが、小刻みに震えている。映画館でもダメだったか……?
「…………」
と、思ったのだが、カメラ頭の盗撮ダンスも終わり、映画本編に入るや否や、赤塚の緊張は嘘のようになくなった。今はただ、ジッと大きな画面に食い入るようにしてみている。どうやら、赤塚は世界に入りやすい人間の様だ。物凄く集中してみている。
「……ぁ」
「……っ」
その後も物語は進み、後半。
前半、中盤までは非常に良いストーリーであり、いつの間にか赤塚のみならず玲までもが映画の世界に入っていてしまった。そして、感動のシーンその直後。このまま泣ける展開で終わりかと思えば、何と主人公とヒロインが始めてしまった。何を、とは言うまい。世間一般で言う濡れ場というやつだ。まさか、この映画にここまできわどいシーンがあるとは思わなかった。
「…………」
チラと赤塚の方を見ると、暗い視界の中でも分かるくらい耳まで真っ赤に染まっている。小さく声を上げながら、俯いてしまった。かと思いきや、俯きながらも目線はしっかりと画面の方へと向けられている。
「…………っ」
と、そんな赤塚を見ていると不意に赤塚がこちらに視線をやってきた。
双方、一瞬だけ視線が交差して、即座に逸らす。きっと、玲の顔も今頃真っ赤に染まっているだろう。
「……はぁ」
映画も終わり、玲は赤塚には聞こえないよう気をつかいながらため息をつく。
映画は面白かった。確かに面白かった。たくさんの人が推す理由も分かった。しかし、しかしだ。あんなシーンがあるなんて聞いていない。いや、そりゃネタバレになってしまうから知らなくて当然ではあるけれど。世の中のカップルはあれを二人で平然と見ているのだろうか。だとしたら、きっと玲には無理だ。
赤塚も、未だ少しだけ頬が赤い。お互い何も喋らず、決まづい空気が流れる。ゲームの話になって以降、結構いい感じに進んでいたと思っていたのだが、全て台無しだ。振出しに戻るだ。
「じゃ、じゃあこのまま帰――」
どちらとも切り出さないので、意を決して口を開こうとした、その瞬間。
赤塚の肩があからさまにビクンと震えあがった。玲は言葉を飲み込んで、赤塚の視線の先を見る。そこには、三人組の……女子高生だろうか。濃いメイクに露出の多い格好、人目もはばからず無駄に大きい声で談笑している。いわゆるギャルというやつだ。玲の苦手な人種。
「どうか、したのか?」
玲はただ嫌悪感しか抱かないが、赤塚はどこか怯えているように見える。肩は震え、瞳はぐらぐらと揺れ、小さな手をぎゅっと握っている。
何だかよくは分からないが、このままここにいない方がよさそうだ。玲はそう直感し、帰りを促そうとしたが、遅かった。ギャル三人組はこちらに気づくと、何やら顔をニヤつかせて駆け寄ってきた。
「あれ~、赤塚さんじゃない。久しぶりね~」
「ずっと顔見なかったから心配してたんだよ~? 死んだんじゃないかって」
「ね~」
そう言い、耳障りな声で笑う三人組。周囲からは迷惑そうな視線がいくつも飛んでくるが、気づいているのかいないのかそんなのお構いなしだ。
口ぶりからして知り合いなのだろうが、良い関係ではないことは容易に分かる。
と、とこで初めて俺に気づいたように視線を寄こしてくる。
「あれぇ~、赤塚さん、もしかして彼氏~?」
「や~ん、学校来ないかと思ったら、こんなところで彼氏とデート? 羨ましいね~」
「ね~」
「っていうか~、赤塚さんの彼氏とか、もしかしてロリコン?」
「何それきっしょ~」
「ね~」
「っ……」
確かに世間一般で言えば俺はロリコンと呼ばれるかもしれない、と常日頃から思うも、さすがにないかと思っていた玲。しかし、まさかこうして面と向かって言われることとなるとは。脳内でそう言われるんだろうな、と思うのとは違う。こうもはっきり言われると、さすがにグサッと来るものがある。
それと、さっきから胸の辺りが小刻みに震えている。リィのいる辺りだ。おおよそ、玲がロリコンと言われたことに対して笑いをこらえているのだろう。
なぜだろうか……。面と向かって行ってきたギャルよりリィに対して怒りを覚えるのは。帰ったらなでなで地獄の刑に処す。
「でも~、赤塚さんまったく変わってないね~。 相変わらずちっちゃいまま~」
「クラス変わっちゃって、寂しかったんだよ~? 学校来なよ~」
「ね~」
ということは、このギャルたちは同じ学校で、去年の赤塚のクラスメイトということか。
……なるほど。だんだん話が見えてきた。
一見、赤塚を心配するように見えかけた言葉。だが、その中には明らかに馬鹿にしていると思しき言い回しと声色が孕んでいる。
赤塚は顔を伏せながら、先程よりも震えている。
「あれ? どうしたの赤塚さ~ん? そんなに震えて。もしかして、トイレ~?」
「トイレはあっちだよ~? ここで漏らしちゃだめだよ。あ、でもまだ子供だし仕方ないか~」
「ね~」
明らかに挑発的な態度。
おまけに、指さす方向が律儀にトイレとは真逆なのも、地味に腹が立つ嫌がらせだ。
しかし、赤塚はそれらを全て無視する。
「あれれ? 怒っちゃた~?」
「ごめんねぇ~、そんなつもりはなかったんだけど~」
「ね~」
怒っている? 違う。赤塚は怒ってなどいない。恐怖に、屈辱に、必死に耐えている。
怒っているのは――玲の方だ。怒っているなんて生易しいものではない。憤怒、憤慨、軽蔑、殺意。さすがに、これだけで殺意までは抱かないが、心のどこかでくすぶっているのは確かだ。しかし、殺意はギャルたちに向けられたものではないだろう。
それでも玲は何も言わないししない。もちろん、ギャルが怖いというわけではない。
ここで、玲が赤塚を助けることは簡単だ、とまでは言わなくてもできないことじゃない。しかしそれは、根本的な解決へは至らない。以前、この身をもって……『あの子』の身をもって学んだことだ。
ただ愚直に助けるだけでは、意味などない。
しかし、そんな玲の心中など知る由もない赤塚は、ついに我慢ならなくなったのだろう。バッと玲の前を通過し駆けて行ってしまう。その際玲は、赤塚の目じりに浮かんだキラリと光るしずくをしっかりと見た。
「あっれ~、行っちゃよ~?」
「マジ受けるんですけど~!」
「ね~」
赤塚が去ってなお、馬鹿馬鹿しい笑いを上げるギャル三人。
玲は最後にギャルたちを一瞥してから、赤塚を追った。




