4.はあ? そりゃあ、うそだろう
朝っぱらから、ゆずるの機嫌は最悪だった。
昨夜、あのまま、ゆずるを抱き締めた格好で眠ってしまった直久は、ゆずるに蹴り飛ばされて目が覚めた。
「いってなぁ〜」
ベッドから転がり落ちた直久は、強かに打ち付けた腰をさすりながら、ゆずるを睨みつけた。
「いきなり何すんだよっ、てめぇーは! 昨日の夜、散々世話かけやがったくせによ!」
「お前が勝手に世話やいたんだろっ! お節介野郎!こっちは一言も頼んでない!」
「んだと!」
ぶち切れ、掴みかかろうとした直久の顔面めがけて、ゆずるは手元にあった枕を投げつけ、阻んだ。が、顔面に受けたところで、所詮、枕だ。それも、頑丈だけが取り柄の直久には、痛くも痒くもない抵抗で、直久はいとも容易くゆずるを組み敷いた。
もし、今日が満月でなければ、ゆずるも、もう少し抵抗らしい抵抗をしただろうが、それもできず、屈辱そうに眉を歪ませた。直久はそんなゆずるの表情を満足そうに見下ろすと、
「いい眺め」
と、耳元で低くささやいた。ゆずるの顔が見る見るうちに真っ赤になっていく。
「……で、出てけ!今、すぐ、出てけ!」
ゆずるは、渾身の力を込めた蹴り技を直久の急所にくり出す。
そして、再びベッドの下に転がったその身体を、間を入れずに部屋の外に蹴り飛ばした。
――まぁ。そんな些細なエピソードのせいなのか、ゆずるの機嫌は最悪を極めていた。
朝食後、俺らが向かったところは、昨日、数が怪しいと指摘した三カ所のうちの一つで、そこはなんと、生け贄が捧げられた山だと言う。
で、俺らはオーナーの案内で朝っぱらから山登りよ! いや、べつにね。俺は日頃鍛えてんじゃん。
だから、山登り、全然OKなわけ。朝っぱらだろうが、雪道だろうが、いいぜ、べつにぃ〜。
じゃあ、何が気にいらねぇーのか、って言うと。あれよ。ゆずる。
なんつーか、不機嫌な奴が側にいて、そいつが、ぶう〜たれてるとさ、こっちまでムカついてくるんだよなぁ。しかも、ゆずる、歩き方がめっちゃ危なっかしいし……。
ほら、また躓いた。
思わず支えようとして出した腕を、直久はあわてて引き戻した。その手を、まじまじと見つめる。
何やってんだか。
――顔はかわいい。認めよう。だけど、性格は最低だ。素直じゃないし、足癖悪いし、高飛車だし……。
ゆずるに対する文句をブツブツ言っている横で、数久が不意に声を発した。
「ゆずる辛そうだね」
先を歩くオーナーやゆずるには聞こえないくらいの小声だった。
「だったら、おいて行きゃぁ良かったんじゃねぇ? 」
「それはダメ。あの家においていくなんてできないよ。だって、ゆずるは今、力が使えないんだよ。そんな時、もし、何かに襲われたら」
「ひとたまりもねぇな」
数の話では、普段巨大な力を収めているゆずるの体は、その力を失い空っぽの状態になった時、霊だの妖怪だの悪魔だのに、狙われやすいのだという。
つまり、昨晩のアレもそういうことだったのだろう。
霊とかが人間の体を欲して憑いたり、乗っ取ったりするのはよくあることだが、それをやられた人間は長いこと生きていられない。まず、精神面で滅び、すぐに死んでしまうらしい。
そうすると、霊たちはまた新たな器を求めなければならないのだが、その点、ゆずるの体は、いわゆる超高級品で、そう言う得体が知れないモノを入れるには持ってこいって品物なのだという。
普段から得体のしれない力を収めているだけあって、得体の知れないモノが入り込んでも、まったくOK。
ダメージ0、ってカンジなんだそうだ。霊たちが狙うのも分かる。
「それにしても……」
直久は昨晩の出来事を鮮明に思い出そうとした。
「女の手だったな」
「え?」
「ゆずるの足引っ張った奴さ。女の子の手してた。あと、俺の背後にいた女。超長いストレートの黒髪で、すっげぇ怖い感じがした。俺の肩に髪の毛垂らしやがったんだぜ」
そう言うと、直久は今更ながら、その髪の毛を振り払う仕草をした。
「さっき気が付いたんだけどね、ゆずるの部屋、開かずの扉の部屋の真上だったんだよね」
「ああ、あのミステリアスの……」
「実はね。三カ所怪しいところがあるって言ったでしょ? その一つが、その開かずの扉の部屋なんだよ」
「それを早く言えよ!」
「ごめーん」
「ちなみに、残り一つはどこだって?」
「舜さんの部屋」
舜さんは、紫緒さんや妃緒ちゃんのお兄さんだ。だが、未だにその姿を俺たちに見せてくれない。
怪しい。確かに、怪しい。
「と・こ・ろ・でっさぁー」
「ん? 何?」
直久にしては珍しく、何か言い難そうにしている。
「どうしたの?」
「ちょっと聞きたいんだけど、俺らって何?」
「え?」
突然、何? と聞かれても、困るのは数久の方だ。 数久は直久の心の中を探るように、直久をじっと見つめた。
「もしかして、うちのこと聞きたいの? どうして、うちの家系の人は妙な力を持っているのか……とか?」
直久は言葉なく頷いた。
「やっと聞く気になった?」
「だってさあ。見ちゃったんだぜ、俺。霊なんて存在しないなんて主張していた訳じゃないけどさぁ。本当言うと、半信半疑だったって言うか。数たちの力だって実はトリックかなんかじゃないかって、心のどこかで思っていてさー。実際、何度も目のあたりにしてきたはずなんだけど、霧がかかってたみたいに、ちゃんと見てなかったんだと思う。だから、冗談みたく思ってた。――だけど、昨夜のことで、ああ、これ、マジなんだって」
「霊も、僕たちの力もちゃんと認識したら、どうしてこんな力を持っているのだろう?って疑問に思ったんだね。いいよ、教えてあげる。本当は、お祖父様か、お母さんに聞いた方が確かなんだけど、今知りたいでしょ?」
再び素直に頷いた直久を見て、数久は何やら嬉しそうに微笑んだ。
「でも、どこから話せばいいのかなぁ? 直ちゃん、陰陽師って知ってる? 安倍晴明とか聞いたことない?」
「ない」
「じゃあ、そこからだね」
雪道を話しながら歩いているために、数久の息は上がっている。
――何もこんなところで聞かなくてもよかったなぁ。
そうは思うが、すでに話す気満々である数久に、やっぱイイだなんて言えない。
直久は、雪に足を取られ、よろけた数久の腕を支え、話を促した。
「陰陽師というのは、平安時代に活躍した、いわば占い師みたいな人たちのことで、安倍晴明は、その陰陽師の中で最も力が強いと言われた人なんだ」
「へー」
いきなり平安時代まで話が飛んでいってしまい、直久は気の抜けた声で返事をした。
――陰陽師だとか、安倍晴明だとか、いったい何の関係があるんだ?
「数年前、占いブームになった時、安倍晴明が注目されたから、彼についてはそこそこ知っている人が多いけど、陰陽師=安倍晴明みたいに思い込んじゃっている人がほとんどなんだ。だけど、陰陽師っていうのは、仕事の一種なわけでしょ。だから、彼の他に何人もの陰陽師がいたわけ。それが、彼一人の影に収まってしまうほど、彼は強い力の持ち主だったんだ」
数久はいったん言葉を句切った。足下の雪に目を落とす。
「彼の影で、歴史の波に呑まれ、消え去っていった陰陽師たちの中に、大伴泰成という人物がいたんだ」
「おおとものやすなり……。聞いたことがある気がする」
「そりゃ、僕たちの御先祖様だもん」
「マジで? あべのなんとかぁ〜と言う奴に力負けして、忘れ去られちゃった奴が?」
「そうだよ。だけど、僕たちの御先祖は他の陰陽師たちみたいに、晴明の影で黙っているような人じゃなかったんだ。彼は晴明と同等、ううん、それ以上の力を手に入れようとして、様々な鬼たちと契約したんだ」
「契約? 鬼と?」
「自分の死後、自分の体を捧げるから、自分の式神になれ、ってね」
「体を捧げるって?」
「鬼とか、妖怪たちの中にも、性格の違いがあるんだけど、大抵、捧げられたら、食べるよ」
「食べる……?」
「これは余談だけど、彼が亡くなった瞬間、その死体が、髪の毛一本残さず消えちゃったんだって。つまり、彼に使役されていた鬼たちが契約通りに持っていったからなんだ。ある鬼は右腕、ある鬼は左足みたいに、彼の死体からもぎ取って」
「うげっ」
「――話は戻るけど、より強い式神を手に入れるために、より強い鬼を探していた彼は、ある時、一匹の雌妖狼と出会ったんだ。その妖狼は真っ白い毛並みの、本当にきれいな狼だったんだって。そして、まぁ、いろいろあってね。彼はその狼との間に女の子を儲けたんだ」
「儲けたって。狼だろ?」
「人間と獣の結婚って、よくある話だよ。中でも狐の例が一番多いね。人間に化けた狐と、そうとも知らない人間の獣婚の話、昔話とかになって語られてるでしょ」
「マジでぇ?」
「とにかく、その生まれてきた女の子の名前は小夜といって、彼女が生まれた時にはすでに晴明は他界していたわけだから確かじゃないけど、おそらく小夜の方が強い力を持っていたと言われているんだ。――もっとも、そんなことを言っているのは、うちの家だけだから、ますます分からないけど」
と言って、数久は肩を竦めた。
「幼い頃、小夜は泰成ではなく、母狼に九匹の兄姉たちと共に育てられたそうだよ。そして、成人後、泰成に都に呼ばれたんだ。そこで、巫女として活躍した彼女は、九匹の妖狼を式神に持っていたことから、九狼の巫女と呼ばれるようになったそうだよ。九狼――その『くろう』という音がいつの間にか『くどう』になって、『九堂』になり、それが本家の姓となったわけ」
直久は頭を抱えた。
「ちょっと待て。消化不良って感じ」
「うん、一気に言い過ぎちゃったかも。話も飛び飛びになっちゃったし。ゴメンネ。話し下手で。――要するに、僕たちの人間離れした力は、その雌狼と泰成が交じったことが直接の原因なんだ。でも、孫、そのまた孫って、代を重ねていくと妖狼の血も薄くなっていくわけでしょ。力を失うことを畏れた僕らの祖先は、薄くなる度に妖怪と交じったらしい。身近なところで言うと、お祖母様のお父様がイタチの妖怪だったとか……」
「はあ? そりゃあ、うそだろう」
「でも、曾お祖母様は未婚でお祖母様を生んでいらっしゃるよ。うちのようなお堅い御家で、未婚の母って普通じゃないと思わない? しかも、その娘が当主に嫁したりなんて、普通じゃあ考えられないでしょ」
「そうかも……」
なぁんて、納得して見せたが、やっぱり頭の消化不良はひどくなる一方だった。
▲▽
しばらく歩くと、鳥居が見えてきた。オーナーはそこで足を止めた。
鳥居の手前に古い柵があり、それは山をぐるりと取り囲むように、ずっと続いている。
柵には何枚も御札が貼ってある。ゆずるがそれらを見やり、言った。
「これは封印符ですね。なるほど、神を崇めるというよりも、ここに閉じ込めているというわけですか」
オーナーに振り向くと、彼はゆずるに大きく頷いた。
「生け贄は、ここまで村人に付き添われてやってきます。そして、ここから先は一人で山を登っていったそうです。つまり、ここから先は生け贄になる少女しか入ってはならないとされ、私がご案内できるのもここまでです」
「十分ですよ」
ゆずるが怠そうに答えた時、辺りを散策していた数久が小さく声を上げた。
「どうした? 数」
皆は数久が指す場所に目をやる。そこには、薙ぎ倒された柵の残骸があった。
「最低」
人が余裕で通れるほどの穴があいてしまった柵を目にして、ゆずるはその場にしゃがみ込んだ。
「結界が張られている気配がしなかったから、おかしいなと思って。やっぱり、破られていたね」
苦笑しながら、数久は、どうする? とゆずるを振り返った。
「誰が結界を破ったのかというのは、後で考えるとして、せっかく破られているのだから行ってみよう」
そう言って腰を上げたゆずるを、オーナーはギョッとして制した。数久はふんわりと微笑む。
「大丈夫ですよ。ここの主はすでに出ていってしまったようですし。オーナーは先に戻っていてください。ここから先は僕たちだけで行きますから」
オーナーは止めても無駄だと知ると、気を付けてくださいと言い残し、来た道を下っていった。
それを見送ってから、三人は柵を跨いだ。
▲▽
鳥居をくぐった先は、雪が特に深く積もっていた。歩きづらい。腰の高さまで埋まるのだ。
「数、何とかしろ」
いい加減限界なのか、ゆずるは雪の中にうずくまった。顔色がひどく悪い。
普段、これほど歩くようなこともない上に、1メール先のペンを取ることにさえ力を使うゆずるだ。
この山道は、かなりしんどいに決まっている。
数久は進行方向に向かって、空中に何やら文字を描いた。目を閉じてブツブツ何かを言ったと思ったら、かっと見開いて両手を広げる。
すると、ごぉーと言う低い音と共に炎が渦となって現れた。
一瞬にして辺りの雪を溶かしてしまった。
「……ごめん、もっと早くに、こうすれば良かったんだけど。オーナーを驚かせたらいけないと思って」
ニッコリして振り返った数久を、当たり前だと言うように頷くゆずる。対し、直久は腰を抜かしていた。
テレビゲームの魔法みてぇ〜。つーか、マジ! 人間? とりあえず、地球人?
数久のおかけで、断然、歩きやすくなった道を突き進んでいく。
しばらくして、社のようなものが見えてきた。辺りには、寒椿の木が赤く綺麗な花を咲かせている。
「椿か……」
椿は普通その名の通りに、春に咲く花を付けるが、他の草木が枯れる真冬に鮮やかに咲くものもあって、それを寒椿と言う。
「椿は、彼岸花に匹敵する不吉な花だったな」
ぼそりとゆずるが零す。
「不吉?」
思わず聞き返した直久の問いに、朝のことを引きずっているゆずるは答えなかった。
いや、ゆずるの場合、単に面倒臭いだけなのかもしれない。代わりに数久が説明してくれる。
「彼岸花は知っているよね?」
「昔、墓地とかによく咲いていたヤツだろ? 日本映画で、墓場をイメージしたシーンに使われるヤツ。毒とか、あるんだっけ? ――だいたい名前からして怪しいじゃん。彼岸花の『ひ』の字って、彼方の『か』の字と同じだろ? 『彼』って漢字には『向こう』『遠く』って意味があるから、彼岸花は『向こう岸の花』ってわけだ。向こう岸っていうのは、やっぱ、死後の世界のことだろうし。三途の川を越した向こう岸。
ぱっと見、きれいだけど、何か不気味だよな」
「そうだね。じゃあ、椿は?」
「椿は不気味って感じじゃあないだろ? 確か花言葉も、赤い花の方は『美しい』だし、白い花の方は『可愛い』だ」
「……花言葉なんて、よく知ってるね」
「物知り博士、直ちゃんと呼んでくれ!」
「……でね、直ちゃんが映画の例を出してくれたから、それに合わせるけど、人が死ぬ瞬間を表現するのに使われやすい植物、それが椿の花なんだ。椿の花って、咲ききると花の部分がそのままの形で落ちるでしょ。ポトリって。その様子がまるで、首が落ちるみたいだって言うんだよ」
「誰がーっ!」
「知らないよ。昔から言うの。――で、その椿の花が落ちるシーンがあったら、死んだんだなぁ、と思うわけね」
「首かよ」
「しかも、血で赤く染まった首」
「ひぃぃぃぃぃぃ。想像したら怖くなってきた。だってよ、落ちてる花一つ一つが首だと想像して……」
どぇぇぇぇぇぇ〜、と叫び声をあげた直久に数久は苦笑した。
「やめなよね、そういうこと想像するの」
「どうせするんなら、美人のお姉ちゃんの裸体にしろ、ってか?」
「そんなこと、言わないよ」
それから、ぐるりと社の回りを歩いたが、これと言って気になるモノを発見できず、三人はペンションに戻ることにした。
「やっぱり、仮にも神様だったからかなぁ。透視できなかったのって」
「そうかもな。生け贄を捧げられていた程だ。よほど力を持ったヤツなんだろうな」
力を失っているゆずるには分からないことだったが、数久は誰もいないはずの場所から絶えず何者かの気配を感じていた。それはおそらく、社の主である『神』の残像に違いない。
「そんなヤツを相手にするとなると、やっかいなことになる」
直久を不安させるようなセリフを、ゆずるが吐いたところでペンションに到着。
早っ! ――と言うのは、はいっ、と差し出された数久の手を直久がおずおずと握ると、数久は直久とゆずるの手を強く握り、そのまま瞬間移動したからだ。
あっという間にペンションだよ。ありかよ、こういうの!行きの苦労は何だったんだ!
……だけど、この瞬間移動は一度行った場所にしか行けないらしい。しかも、すっげぇ疲れるとか。
へた〜と座り込んだ数久を、ゆずるは肩をすくめて見下ろした。
「無理すんな、ばか。数がへばっている間に何かが襲っていたら、どうすんだよ?」
「でも。ゆずる、辛そうだったから……」
「馬鹿っ!」
一度目の『ばか』とは異なり、二度目のそれは、本気の怒鳴り声だった。 くるりと背を向けたゆずるは、明らかに怒っている様子だった。ゆずるはプライドが高く、人に気を遣われることを最も嫌っていた。
「ごめん」
即行で謝った数久だが、それは更にひどくゆずるの気に障ったらしい。ゆずるは、無言でペンションの中に入って行ってしまった。苦笑いで、数久は直久に振り向いた。
「怒らせちゃった」
「いいんじゃねぇの? 放っとけば」
「そういうわけにもいか……」
突然、言葉を切った数久に直久は怪訝な顔を向ける。
「どうかしたか?」
数久はペンションの三階の奥の方の部屋の窓をじっと見据えている。
「今、あそこから、誰かがこっち見てた」
「え?」
「あの部屋って、確か、舜さんの部屋だよね?」
「そうだな」
直久もその窓を見上げた。厚いカーテンが引かれている。
「俺さ、疑問なんだけど。なんで、舜さんだけ三階なのかなぁ、って。オーナー一家ってみんな一階に部屋持ってんじゃん。それに舜さんって足が不自由なんだろ? だったら、余計一階の方が便利じゃねぇ? 食堂だって、風呂場だって、一階にあるわけだしさ」
「そうだよね」
「それに、オーナーも奥さんも、一度も舜さんの話してないじゃん」
「うん、そうだね。ちゃんと調べてみる必要があるみたい」
二人はもう一度、その窓を見上げた。