こちらが久世家のお嬢様です。
唐突に思い付いたので投稿。
結構気に入ってるので、もしかしたら連載するかも…
みなさま、はじめまして。
わたくし、久世家にお仕えしている執事見習いの篠山 琉と申します。
はい?久世家ですか?
久世家はこの帝国の十二貴族の一つにございます。
久世家は代々、帝国の闇を背負う役目を持ち、他の十一家からは目の敵にされています。
今代当主であらせられるのは久世緋葉様で御歳七十六のご老人でございます。
緋葉様は大変頭のキレるお方でして、今の皇帝陛下を支えておいでです。
しかしながら、わたくしがお話ししたいのは緋葉様のお孫様、久世紫羽様にございます。
紫羽様はとても微妙な立場のお嬢様でございます。
緋葉様にはお二人のお子様がいらっしゃったのですが、そのうちのご長男…先代当主、理翠様の庶子として紫羽様はお生まれになりました。
理翠様は緋葉様ほどではないにしろ、政治的な手腕は悪くありませんでした。
ご自身の立場を弁えて行動なさっていたはずなのですが…
だからでしょうか、紫羽様の存在を緋葉様が知ったのは、理翠様が事故で亡くなられてしまった後でした。
その時のご様子をわたくしは忘れることが出来ません。
気を取り直して、紫羽様の一日のご様子をご紹介いたしましょう。
紫羽様は朝が大変苦手でいらっしゃいます。
ですので、毎朝わたくしがお目覚めのお声掛けをさせていただいております。
今日も例に漏れず紫羽様からの起床の呼び掛けがございません。
わたくしは朝食の乗ったカートを押して紫羽様のお部屋に向かいます。
本来なら執事見習いであるわたくしは執事と同じ権限を持っておりますので、ノックをする必要はないのですが、紫羽様は女性でいらっしゃいます。
男であるわたくしが何もせずに部屋に入ってしまえば紫羽様にご迷惑をお掛けしてしまう可能性がございます。
三度ほど間をあけてノックを繰り返しますが、紫羽様からの返事はございません。
三度ともノックだけだはなく、お声もおかけしているのですが…
どうやら、相変わらず寝ていらっしゃるようです。
「紫羽様、お入りいたします」
扉をあければ、ベッドに人の形の膨らみが軽く上下しているのが見えました。
扉が完全に閉まってしまわないよう、少しだけ開けたままにしながら部屋に入ります。
カートをベッドの横に持っていき、わたくしは紫羽様を起こしにかかります。
「紫羽様、おはようございます」
布団に丸まっている紫羽様に声を掛けると、もぞもぞと動き始めました。
今日はこのまま起きてくださりそうです。
たまに布団を剥いでも起きない時もございまして、その時はわたくしは始終目を瞑っております。
「…琉か…」
「紫羽様、おはようございます。学校に遅れてしまいますよ」
「…あー…眠い…代わりに行ってきてくれ…」
「わたくしはもう二十五です。学生というには無理がございます」
「…見た目だけなら何とかなるだろ…」
「性別が違いますし、身長も違いすぎます」
「…」
「紫羽様!寝てはいけません!」
二度寝を始めた紫羽様をもう一度起こし、ベッドに座らせます。
「…琉…私はいつも言っている。朝食は食べないと」
「わたくしもいつも申し上げております。食べませんと力が出ませんし、集中力も出ませんと」
「いらないものはいらない。朝刊を渡してくれ」
「紫羽様」
「…スープなら食べる」
これもいつものやり取りでございます。
紫羽様は朝食を食べたがりません。
それでは体の調子が出ませんので、わたくしは少しでも召し上がって頂けるよう、シェフと相談してメニューを考えております。
朝はスープ類は召し上がって頂けることが多いので、ポトフなどの具の多いものをお作りするよう心掛けております。
この時、器は持ち手の付いたものをご用意します。
紫羽様は朝刊を読みながら朝食をお召し上がりになりますので、下手にスープなどをスプーンで食べていただくと、布団の上にぼたぼたと溢してしまうのです。
スープを召し上がって頂いている間、わたくしは紫羽様の学校の準備を致します。
制服とカバンをご用意し、本日の授業に必要なものをカバンに詰めていきます。
わたくしがそうこうしているうちに紫羽様は食事を終えられ、朝刊を畳んでおられました。
「それでは、お着替えが終わりましたらお呼びください」
わたくしはカートを押して部屋を出ます。
カートを厨房に戻し、もう一度部屋にお伺いすると、紫羽様は準備を終えていらっしゃいました。
完璧な令嬢のお姿です。
「さてと、行くか」
「はい」
紫羽様の後に続き部屋を出ます。
今日は誰にも会わずに玄関へ行くことが出来ました。
紫羽様には、異母兄と異母弟がいらっしゃいます。
兄君と弟君は紫羽様を嫌悪されていらっしゃるので、会うと面倒なことになります。
紫羽様は笑顔で何も仰りませんがきっとお辛い思いをしていらっしゃると思うのです。
ですので、わたくしや紫羽様を慕うメイドなどでなるべくお二人と鉢合わせしないように心掛けております。
紫羽様専用のお車は既に玄関で待機していました。
運転手の宇井が紫羽様を見て頭を下げ、車の扉を開けました。
紫羽様は宇井に礼を言い、お車に乗られます。
紫羽様が出発したのを見て、わたくしは屋敷の中へ戻ります。
「篠山!」
「…おはようございます、黄也様」
面倒なことに、紫羽様の兄君…黄也様にお会いしました。
チッ…これは嘘臭い自慢話を三十分は聞かされるぞ…
黄也様の後ろで、メイドが申し訳なさそうに頭を下げています。
あぁ、足止めをしてくれていたようです。
メイドには下がるよう目配せをします。
メイドは頷いて去って行きました。
黄也様はその間、ご自分の成績の良さ、どれほど女性にモテるか、などを大袈裟にお話しされています。
わたくしはにこやかにお話しを聞き流し、ある程度時間が来たところで黄也様に学校へ行くよう促します。
「あぁ、もうそんな時間か。篠山、あの女の世話をさせてすまないな。いくらお祖父様の命令とは言え嫌な時は嫌だと言っていいのだぞ?俺がお祖父様に一言言って俺の専属に変えてもらうからな」
「ありがとうございます」
お前緋葉様の前じゃそんな口叩いたことねぇだろうが。
緋葉様を見ると震えてオドオドしてるだけだろう。
…おっと、申し訳ありません。つい心の声が…
この男は紫羽様の二つ年上で、今年大学生になったばかりでございます。
金持ちで馬鹿の集まる大学にご入学されたため、ご自身が頭が良いと思われているようです。
女性にモテるのではなく、貢がされているのだと何時になったら気付いてくださるのやら…
黄也様と別れ、わたくしは紫羽様のお部屋のお掃除や屋敷の備品の補充、当家執事の東雲さんに執事のことを教わったりします。
そうこうしていると、紫羽様のお帰りの時間になりました。
玄関へ出て、紫羽様を待ちます。
しかし、帰宅予定時刻を大幅に過ぎても紫羽様はお帰りになりません。
…おかしいですね。今日は紫羽様から放課後の予定は聞いておりませんが…
不審に思っていると、メイドに呼ばれました。
電話のようです。
不安そうな顔をするメイドから受話器を受けとります。
「はい。お待たせいたしました。執事見習いの篠山です」
「あー、あんたが執事さん?見習いだっけ?まぁいーや。お宅のお嬢さん預かったからさぁ、迎えに来てよ、迎えに。もちろん金持ってさぁ」
「そんな…!ご無事なんですか!?」
「お嬢さんなら無事に決まってんじゃん。だからさっさと金を…な、何だ!?」
受話器越しにドッタンバッタンと音がして、怒声が響いてきます。
向こう側で携帯が落ちた音がして、誰かに拾われたようです。
「あぁ、琉?何時もの場所に迎えを頼む。宇井なら高校の近くで伸びてるだろうから誰か連れ帰ってくれ。それと東雲に謝っておいてくれると助かる」
「…やはり、ご無事ではなかったんですね…誘拐犯たち…」
紫羽様は言うだけ言って電話を切られたので、わたくしの言葉は聞こえていなかったようです。
不安そうにこちらを見ていたメイドには聞こえていたので、一緒にため息を吐きました。
あぁ…また、わたくしは後処理をするんですね…
紫羽様の迎えはわたくしが行きました。
宇井が居ない以上、自由に動けるのはわたくしだけですので…
紫羽様は帝国の裏社会を牛耳るマフィア、ヴィディアーノファミリーの本邸におりました。
もう慣れたことでございまして、門番の男性はわたくしを見ただけで通してくださいます。
紫羽様は、ヴィディアーノのボスのお部屋におられました。
ヴィディアーノのボス、雲井静流様はとても貫禄のある…いえ、麗しい美女でございます。
ゴッドファーザーならぬゴッドマザーですね。
紫羽様と静流様はご歓談されておりました。
「あぁ、琉が来たようです。今回も助けていただいてありがとうございました」
「あら、いいのよ。わたしは紫羽様が大好きだから。あぁ、緋葉様も早く紫羽様を後に指名しないかしら」
「お兄様がいらっしゃいますから」
「あんなの後に指名されたらわたしたちは反乱起こすしかないわねぇ」
「それは困りますね。では弟の方はどうでしょうか」
「あれもダメねぇ。腹黒を装ってる羊ちゃんじゃなぁい」
「…困りました…笑いそうです」
紫羽様は再び静流様にお礼を言い、ヴィディアーノの屋敷を後にします。
「紫羽様、あれほどお気をつけくださいと申し上げておりましたのに」
「宇井を殺人犯にするつもりか?可哀想じゃないか」
「紫羽様が気をつけてくだされば済む話なのでは」
おどける紫羽様に注意しますが、紫羽様は愉しそうに笑っただけでございました。
屋敷に戻ると宇井がひれ伏しており、紫羽様を見て泣いて謝り始めました。
紫羽様は苦笑して宇井を慰めております。
後から聞いたところによりますと、紫羽様を乗せた車の前に何人かの青年が飛び出してきて、ハンドルを切ったそうでございます。
壁に激突し、その衝撃で宇井は気絶してしまったようです。
宇井をなんとか宥めた紫羽様はお部屋に戻り、ベッドに倒れ込まれました。
「あー、疲れた。琉、夕刊」
「その前にお着替えをなさってください」
夕刊を取りに行く間、紫羽様にはお着替えを済ませていただき、わたくしは夕刊と紅茶を持ってお部屋へ向かいます。
戻りますと、紫羽様はパソコンを開き何かをされているようです。
わたくしが戻ったことに気づいた紫羽様はパソコンの置かれている机からベッドの上に移動して、わたくしから夕刊を預り、紅茶を飲まれました。
「…紫羽様、ベッドの上で紅茶を飲まれますのはお行儀が…」
「琉、夕刊を読んだらお祖父様に会いに行くぞ。連絡をしておいてくれ」
「は、はい!」
紫羽様から緋葉様に会いに行かれるなどとても珍しいことでして、わたくしは紫羽様のお行儀のことなど完全に忘れて急いで紫羽様のお部屋を後にしました。
同じ屋敷の中に居るとはいえ、緋葉様は久世家の当主、そう易々とお部屋にお邪魔する訳にはいきません。
執事の東雲さんに向かう旨をお伝えし、許可を頂き、やっと緋葉様にお会いすることができるのです。
緋葉様から許可を頂いたことを紫羽様にお伝えしに戻ると、紫羽様は既に正装に着替えられておりました。
「えーっと、琉は待っててくれてもいいんだが…来るのか?」
「も、もちろんでございます!」
「分かった。じゃあこの資料を持ってついてきて」
紫羽様から紙の束を渡され、部屋を出ます。
緋葉様のお部屋は屋敷の最上階の一番奥にありますので、あまり人気がありません。
紫羽様は緋葉様のお部屋の前に来ると一度ご自身の格好を確認され、扉をノックします。
扉は中から開かれ、紫羽様はお部屋に入られます。
部屋の奥には、緋葉様が待っておられました。
「座れ」
緋葉様は紫羽様に目の前のソファを示され、部屋の中にいた東雲さんに目配せをいたしました。
わたくしは紫羽様の斜め後ろに控えさせていただきます。
「琉さん、資料を貸してください」
「は、はい」
紫羽様はわたくしから資料を受け取ると、さっそく話始めました。
「お祖父様、これを。隣国からの武器密売ルートです。把握は?」
「…まだだ」
「そちらに詳細は全て載っています。静流さんにはお話ししてありますので、いつでも動けます」
「ふむ…まだ泳がせておいていいだろう。ところで紫羽、」
「わかりました、静流さんには伝えておきます。夕刊で気になったことがあるのですが」
「…なんだ?」
東雲さんが緋葉様と紫羽様に紅茶をお出しし、緋葉様の後ろに控えました。
久世家には家令がおりません。
わたくしが早く執事の任を承れば、東雲さんは家令になることができます。
あぁ、そのためには緋葉様の前で普通の態度ができるようにならなければ…!
「…私もそれは気になっている。影に調べさせているから紫羽は安心していい」
「そうですか。もし何かあれば私にお申し付けくださいませ」
「分かった。頼りにしている。それでだな、紫羽、」
「私は明日も学校がありますので、今日はこれで失礼させていただきます。東雲さん、お茶、美味しかったです」
「ありがとうございます、紫羽様」
お話しが終わられたようで、紫羽様は立ち上がり、緋葉様と東雲さんに挨拶をしておられました。
わたくしも頭を下げ、紫羽様に続いて部屋を後にします。
紫羽様と共に紫羽様の部屋へ向かっていると、廊下に人影を見つけました。
…青次様です。
「あぁ、出来損ないのお義姉様じゃないですか。よく我が物顔で久世家の中を歩き回れますね」
青次様は紫羽様の弟君です。
静流様が仰られた通り、ご自身を腹黒だと思っていらっしゃる面白い方でございます。
この方は黄也様よりはマシですが、勘違い野郎なので、わたくしども使用人は頭を抱えております。
「お祖父様が寛容だったから貴女はこの家で暮らしてられるんですよ?本来なら貴女のような頭の悪い庶民は我が家にいらないんですから」
「そうですね」
「成績も上位に入っていないなんて、久世家の恥さらしです。とっとと出ていって頂きたいですね」
「すみません」
「あぁ、それとまた皇子殿下に言い寄っているとか。本当に恥さらしですよ、貴女は。どうしてこんな女を久世家に迎えたのか僕には理解できない。早く消えてください」
青次様はそれだけ言って去って行きました。
心配になって紫羽様を見ましたが紫羽様はひたすら笑いを堪えていらっしゃるだけでした。
…あぁ、本当に…
それから紫羽様はひたすらパソコンで何かをされておりました。
夕食を食べた後もまたパソコンで何かをされています。
…いつか目を悪くされるのでは…
夜、寝静まった屋敷の中、わたくしは緋葉様のお部屋に足を運んでおりました。
「篠山か。紫羽は寝たか?」
「はい、眠られました」
「はぁ…どうしてお前たち影は暗闇から音も立てずに現れるんだ…」
緋葉様は大変驚き、それから憎々しげにわたくしを睨まれました。
実は、わたくしは緋葉様に仕える影でございます。
そして、影の次の長でもあります。
ですので、緋葉様の前では影としての動きをしてしまうのです。
普段は然り気無く凡人の気配を漂わせているのですが、緋葉様の前になりますと、気配を消し、殺気をいつでも放てるようにしているのです。
「それで、いいかげん執事に慣れろ。長になったなら執事も兼任するのがここの決まりだ」
「分かっているのですが…まさか女性の身の回りのお世話をするとは思わなかったので…その…」
「どうして任務では簡単に女をあしらうくせに紫羽には尻に敷かれているんだ…」
「惚れた弱味ではないでしょうかねぇ」
わたくしの背後から、気配をさせず、東雲さんが現れました。
東雲さんは現、長でして、わたくしの師匠になります。
「…篠山」
「ほ、惚れたなんて畏れ多い!」
「なんだと!?紫羽が可愛くないとでもいうのか!?」
いやそっち!?
惚れたって言ってもあんためっちゃ怒るじゃねぇか!
…ほんと、この人は孫娘に甘いというかなんというか…
「それよりもだ。昼間に紫羽が拐われたと聞いたが?」
「静流様の動きによって紫羽にはほとんど影響なく済みました。宇井が民家の壁に激突し破壊したことくらいでしょうか」
「宇井は落ち込んでいただろう」
宇井は自殺でも図るんじゃないかと思うほどには落ち込んでいましたね。
ですが、紫羽様の命令なくして死ぬなんてことは、我々のような使用人には許されていないことなのでございます。
…というのは東雲さんの受け売りです。
ようは、それほどの決意を持てということでございます。
「はぁ。それにしてもお前は何時になったら紫羽に自分が影で次の長だと言うんだ」
「…本来わたくしたちが集めるような情報も、紫羽様は全て自分で集めることができてしまうのです。ご無理をしているならお止めして影として働くのですが…紫羽様は無理をせずに必要な情報を集めてしまうのです…ですので、言うタイミングが…」
「篠山は紫羽様に弟子入りしてくれば良いと思いますよ」
「…!なるほど!」
「…」
それから少しだけお話しをさせて頂き、わたくしは緋葉様のお部屋を出ました。
これから自室に戻り、軽く仮眠を取らなければなりません。
本日の夕刊の件を調べなければなりませんので…
「行ったぞ」
緋葉が暗闇の中に声を掛けると、そこから紫羽が現れた。
「ふぅ…東雲の"ギフト"はすごいな。私の気配を全く琉に悟らせなかった」
「お褒めいただきありがとうございます」
「紫羽、そろそろお前から言ってやったらどうだ。篠山が影であることを知っていることを」
「えぇ?お祖父様が言い始めたんだ。黙ってろと。もう言うのか」
「篠山のヘタレさを見ただろう。確実に篠山から紫羽へ言うことはないぞ」
「琉は私に惚れてるからな」
紫羽は東雲から紅茶を貰い、クスクスと笑いながら口を付ける。
紫羽の発言に緋葉は眉をひそめムッスリとした。
「そう不機嫌にならなくても。当主なら青次にあげればいいじゃないか。私は琉と一緒になるから」
「くっ…理由もなく使用人である篠山に庶子とはいえ久世家の娘をやるわけにはいかん」
「でも私が当主になってしまったら琉と一緒になれないんだろう?ならば当主になどならない」
「…紫羽」
「…まぁ、私が当主になったら誰にも何も言わせない。私はやりたいようにやる」
紫羽は飲み終わったカップを東雲に返し、ぐっと伸びをした。
ついでに大きく欠伸もしておく。
「ふぁーあ。眠いな。それではお祖父様、おやすみなさいませ」
「あぁ、おやすみ。あまり無理をするんじゃないぞ」
心配そうに緋葉は紫羽に声を掛けた。
それに対して紫羽はニヤリと笑って手を振った。
暗闇に溶けていくように、紫羽の姿は消えた。
「…誰に似たんだろうなぁ」
「緋葉様ではないでしょうかねぇ」
最後の呟きを東雲に拾われ、そう返された緋葉は少しだけ嬉しそうに笑った。
どうでもいい設定。
久世 紫羽
十七歳。高校二年生。転生者。ギフト持ち。
口が悪い。
篠山 琉
二十五歳。執事見習い。影。次期影の長。
紫羽に惚れてる。ギフト持ち。
久世 緋葉
お祖父ちゃん。孫娘LOVE!孫息子たちも愛してるけどあの子達どこで教育間違えたのかおバカだからなぁ…。
ギフト持ち。
東雲 玲
執事。現、長。自分と他者の気配を操れるギフトの所有者。
琉のことは孫だと思ってる。
多分乙女ゲームの世界。流行りに乗っかってみた。
紫羽は転生者で、乙女ゲームの世界だとは分かっているが心底どうでもいいと思ってる。
ギフトとは人が使える特殊能力のこと。
ギフトを授かるのは百人に一人とじつは結構多い。
とはいえギフトは千差万別なので東雲みたいに便利?なものもあれば五百歩歩く度に一度転ぶ、などとどうでもいいギフトもある。
読んでくださってありがとうございました\(^^)/