陽だまりの雛鳥が見る夢。
雰囲気を楽しんでいただければと思います。
「あーうー」
ぽかぽか、ぽかぽかあったかい。
少女はこの時間が大好きだった。
天井の窓から差し込む優しい陽だまりの中で、ぐーっと大きく伸びをする。
「う~~」
両手を上に伸ばし、芽吹いたばかりの萌木のように。
少女は早く大きくなりたかった。
早く大きくなって、あの優しい、いい匂いのする人の言うことを確かめたかった。
――あなたが大きくなったらいつか空を飛べるようになるの。
あの人はいろんなお話をしてくれる。
遠い遠い空の向こう、あの白い雲を超えた先には宝石のような宝箱があって、
いつの日か、それはわたしのものになるのだという。
それはとってもとっても素敵な事だ、と少女は思った。
お気に入りの星の形の座布団の上で、つまさきをぴんと伸ばして
「うーっ!」
高く、高く、小さな手を広げて、その高さの分だけ大きくなれるように。
この部屋では余りすることがない少女の、大切な儀式のような時間だった。
部屋のドアが開く音がする。
いつものあの人が来た!
いい匂いのする柔らかい手は、今日もわたしを撫でてくれるだろうか。
イタズラな笑顔で「ナイショよ?」と、お菓子を口に放り込んでくれるだろうか。
あの人がこの部屋に持って来てくれるものは、いつもとっても甘くてうれしい。
少女はそれを心待ちにしていた。
――きょうはなにをくれるのかな――
たまらず、少女は『お気に入り』掴んで、ドアのそばに立つあの人の元へ慌てて駆け寄ると、
――あら、他のオモチャはあまり気に入らなかったのね?
普段と変わらぬ優しい笑顔で、あの人は今日も少女に話しかけてきた。
しかし少女は素直になれず、
「んーっ!」
めいっぱいの不満を込めて、ほほをぷーっとふくらませ、抗議しててみせる。
――あら、可愛い顔が台無しね。いいのよ。あなたの好きになさい。
期待通りにそう言ってくれたことがうれしくて、
少女はすぐに、にっこりと笑顔になる。
――そうそう、今日はあなたにプレゼントを持ってきたの。
きた!
少女はぎゅーっと、形が変わるほどに、手に持ったお気に入りを胸に抱きしめる。
――今日はね。あなたの『名前』を考えてきたわ。
『名前』? まだもらったことのないものだ。
どんなものなんだろう? 少女はなんだか嬉しくなってワクワクしながら催促する。
――いろいろ考えたのだけれどね。あなたもきっと好きになってもらえると思うの。
うんうん、はやくはやく!
――小さい陽だまりの中で幸せな夢を見る鳥、
そこで一度言葉を切り、どうかしら? と、あの人はいつも通りのイタズラっぽい笑顔を浮かべる。
――そう、あなたの名前は――
少女に届けられた一番新しい贈り物は、とても素敵な響きを伴って。
たちまちそれを気に入り、いてもたってもいられなくなった少女は、目の前の胸の中へ飛びこんだ。
あの人はそれをしっかり受け止め、愛おしそうに抱きしめる。
その胸のあたたかさは、いつもの陽だまりの中にいるようだと、少女は幸せそうに眼を閉じた。
これは、まだ微睡の中で、真綿の巣に包まれていた少女があの人と過ごした記憶。
少年と出会う前の、ある日向の少女の夢語り。
これを読んでもう一回子供のころに戻りたいって思った人。
あなた、疲れてますy(ry
2015/01/02
ぽんじ・フレデリック・空太郎Jr
@まぁそんな雰囲気系