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四月

大変お待たせいたしました。

ようやく本編スタートです。

サブタイトルは『私はどうやら攻略対象の妹らしい。』


 学校が始まって一週間。

 だいぶ新しい生活に慣れてきた。


 パパも、ママも、本当に優しい人達で……。

 だからこそ、初めの頃はどうして良いのか分からなくて、戸惑いまくりだった。だって、こんな優しさをもらったことなんてなかったから。

 そんなあたしの気持ちを知ってか知らずか、二人とも、いつでも温かく接してくれた。


 ママは、料理やお菓子作りを教えてくれた。時間のあるときは、ショッピングにも連れていってくれた。

 料理は、前の世界で作っていた(というか、施設にいた頃は、先生達が作ってくれなかったから、作るしかなかった)し、お菓子も、本を読んで知っていた。

 前の世界では、いろんなジャンルの本を読んでたからね。


 だけど、誰かと一緒に作るのは初めてで、とても楽しかった。それに、ママはとっても料理が上手で、すごく勉強になった。

 ショッピングも、前の世界で数える程度しか、したことがなかったから、とっても楽しかった。

 人混みにはなかなか慣れることができないけど……。


 一番嬉しかったのは、ママとのおしゃべり。

 前の世界では、ほら、話すことが滅多になかったから……。


 それこそはじめの頃は、何を話せば良いのか分からなかったけど、というか、むしろ話すことが苦手になってた。

 だけど、まるで少女みたいに話すママは、とてもキラキラしてて。いつのまにか、話すことが楽しくなっていた。

 これが今流行りの、ガールズトークなるものかって、しみじみ思った。


 パパはほとんど仕事で家にいないけど、夜は必ず時間をつくってくれて、あたしの話を聞いてくれる。

 初めの頃は、それこそ、何を話して良いのか分からなかった。

 だけど、パパが仕事の話をしてくれて、今日あったことを聞いてくれて。話していくうちに、毎日、今日の出来事を話すのが、当たり前になった。


 パパはたまに、あたしの両親(この世界のね)の話をしてくれるんだけど……。

 この話の時は、毎回微妙な心境です。

 だって、本当の両親じゃあないからね。ごめんパパ。



 それから、パパはその大きな手で、あたしの頭を撫でてくれる。

 頭を撫でられることなんて、一度もなかったから、恥ずかしくて、どうしていいのか分からなくなる。

 だけど、それ以上に、心がぽぉっと、温かくなるんだ。


 毎日、毎日、頭を撫でてくれる。その度に、安心するんだ。

 あぁ、あたしはここにいても良いんだ、って。


 それから、悠登お兄ちゃん。

 笑顔の仮面を被って、自分を偽り、その心には誰一人として入ることを許さない。血の繋がった家族さえも、騙している。

 そして、他人であるあたしが、家族になったことを、快く思っていない人。


 それが悠登お兄ちゃんだ。


 だけど、この約一ヶ月、一緒に暮らして分かった。

 悠登お兄ちゃんは、パパとママに本性を隠しているつもりだけど、実は二人にバレバレなんだって。


 穏やかで、いつも笑顔。文武両道で、責任感が強く、誰に対しても優しい。

 そんなステキな人を演じているが、実際は真逆だ。

 文武両道で、責任感が強いのは確か。だけど、心は常に冷めていて、他人を思いやる心なんて、ミジンコ程度しか持ち合わせていなんじゃないだろうか。や、それすらもないかもしれない。

 他人に優しくするのは、いいように利用するため。

 常に笑顔を振り撒くのは、自分の評価を上げるため。


 そうして騙されている人たちを見て、内心ではバカにしている。

 いっそ清々しいほどに、利己的な人。それが悠登お兄ちゃんなのだ。

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