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「母さん、透夏ちゃんが吃驚してるよ?」


 少し困ったような笑みを浮かべながら、イケメン・悠登君が、詩織さんをやんわりと、あたしから引き剥がしてくれた。


「ほらほら、いつまでもこんなところで話してないで、中に入ろう」


 藤堂さんの言葉に、落ち着いた詩織さんが頷き、みんなでぞろぞろとリビングへ移動。


 ──やー、美形家族だ。確実にあたし浮くじゃん……。

 さっきまでの緊張は何処へ行ったのか、今は藤堂家の顔の良さに驚きだ。

 藤堂さんもイケメンだと思ってたけど、詩織さんマジ美しい。まさに理想の女性だよ。

 そんな二人の息子である悠登君も、想像以上にイケメンだった。

 ──あれだね、目の保養になるね。


「さて、落ち着いたところで、自己紹介をしようか。俺は藤堂佑。是非パパと呼んでくれ。悠登は恥ずかしがって呼んでくれないからな」

「父さん……」

「ははっ。よろしくな、透夏!」


 悠登君をからかいながら、優しく微笑む藤堂さ……じゃなくて、パパ。


「よろしく、パパ」

「まぁ! ずるいわ佑さん。先に呼んでもらえるなんて。私の方が先に言ったのに……。透夏ちゃん、藤堂詩織よ。ママって、呼んでくれるわよね」


 笑顔だが、その目はイエスorはい、しか認めないと言っている。


「うん、よろしくね、ママ」


「あ~もう! 透夏ちゃん可愛すぎる!!」


 がばりと抱きついてくるママ。あたしは、どうしていいのか分からなくて、されるがままにじっとしてる。

 パパと悠登君は、苦笑してる。


 今まで感じたことのない、人の暖かさに、思わず視界がぼやけた。

 ──ありがとう、セリア。あたしに、家族をくれて。


 心の中でセリアにお礼を言ってたら、ぎゅうぎゅうと締め付けが強くなってきて……。


「詩織? 透夏ちゃんを病院に戻すつもりかい?」


 パパがやんわりとママを止めてくれたお陰で、三途の川を渡らずにすんだ。

 ──あー、マジで一瞬お花畑が見えたよ?


「じゃあ、最後は悠登君ね!」


 うきうき女子高生みたいなママに促されて、悠登君が微笑みながらあたしを見る。


「悠登です。年は、透夏ちゃんの二個上の、十七歳。学校も一緒だから、困ったことがあったら、何でも言ってね?」


 ふわりと笑う、その優しげな笑みで、いったい何人の女の子を落としてきたのだろう。

 きっとその笑顔に、ほとんどの女の子が頬を染めるのだろう、と思いながら冷や汗をかいた。


 ──笑ってるけど、笑ってない。


 自分もずっと、仮面を被ってきたから分かる。悠登君は、心から笑っていない。

 笑顔の仮面を被っているだけだ。

 彼は、あたしのことを歓迎してない。むしろ、疎ましく思っている。

 悠登君の笑顔に、軽い恐怖心すら覚えるが、それらの感情をいっさい表に出さずに、笑顔を浮かべる。


「透夏です。いっぱい迷惑かけるかもしれないけど、よろしくね? えーっと、悠登お兄ちゃん?」


 あたしの「悠登お兄ちゃん」呼びに、パパはにやにやして、ママは羨ましーと騒ぎ出す。


 そして、呼ばれた本人悠登君は、一瞬顔をひきつらせ、だが直ぐに笑顔を浮かべる。


「うん、よろしく、透夏」


 嫌がられてようが、知ったこったない。

 あたしはこの世界で幸せになるって決めたんだ。

 悠登君がゲームの攻略対象だろうが、あたしには関係ない。


 ──まぁ、それが偽物の気持ちでも、お兄ちゃんには変わりないんだから、気づかないふりして、甘えまくろ~。



 あと半月で、入学式。



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