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「あ、言い忘れてたけど……」


 ぱっと体を離して、藤堂さんが思い出したように言った。


「実は、透夏ちゃんの二個上に、息子がいるんだ。異性だから、気まずいかもしれないけど、俺と違って真面目な奴だから、構えなくて大丈夫だからね」


 安心させるように言い聞かせる藤堂さん。

 何でも、彼は昔、少々やんちゃだったみたいで……。父さんと二人、地元を締めてた時期もあったそうな。

 ──そんな彼の息子が真面目とは……。きっと奥さんがそーゆう人なんだろうな。


 それから藤堂さんは、家族の話をしてくれた。

 奥さん、藤堂詩織(シオリ)さんは、おっとりしていて、藤堂さんいわく、癒し系らしい。

 息子の藤堂悠登(ハルト)は、私立春薫(シュンクン)学園の生徒会長で、学力も常に学年一位らしい。


 ──生徒会長で、頭もよくて、藤堂さんの息子だから、きっとイケメン。確実に、ゲームの攻略対象だよね。まぁ、攻略対象だろうがなかろうが、あたしには関係ないか。あたしは、逆ハーレムより自分を愛してくれる、家族が欲しい。


 ちなみに、あたしはもともと春薫学園を受験していて、四月からそこに通うみたいだ。


 ──うへぇ……また一年生やらなきゃいけないのかぁ。あー、でも、前の世界では友達とか一人もいなかったから、こっちでは頑張ろー。


 そんな感じで、ダラダラ過ごして一週間。

 漸く退院の許可が降りて、あたしは今日初めて、新しい家族に会うのだ。

 ──ヤバイ、緊張する。


 今、藤堂さんと二人、家の前に立っている。

 奥さんと息子は、家のなかで、今か今かと待ち構えてるらしい。


 ──どうしよう。また、前みたいになったら……。


 自分で思ってたより、前の世界での傷は深かったみたいだ。

 思わず涙が溢れそうになり、ぎゅっと目を瞑った。

 すると、頭に重みを感じた。


「大丈夫、みんな透夏ちゃんを歓迎しているよ」


 今目を開けたら、絶対に涙が溢れる。だから、目を瞑ったまま、コクンと頷いた。

 ゆっくりと深呼吸を数回繰り返して、心を落ち着かせる。


 ──よし、大丈夫。


 あたしはゆっくりと目を開けると、藤堂さんを見上げて、頷いた。

 藤堂さんは、力強く頷き返してから、玄関を開けた。


 無意識のうちに、下を向いていた顔を上げ、家の中に入ろうとしたとき、何か柔らかいものに包まれた。

 ──え? なに?

 何が起こったのか理解できず、内心パニクっていると、柔らかいものが離れ、両肩をがっしり掴まれた。


「貴女が透夏ちゃんね。佑さんに聞いてた以上に可愛らしいわ! あぁもう食べちゃいたい!! 今日からここが貴方のお家よ。そして、私達が家族。遠慮しないで何でも言ってちょうだい。あー、もう。ほんとに可愛いっ! 私の事はママって呼んで。ずっと娘が欲しかったの。もう夢みたいだわ。こんな可愛らしい娘ができたなんて。娘ができたらやりたかったことがたぁ~くさん、あるの。毎日が楽しみね。うふっ」


 頭を撫で回され、顔を撫で回され、力一杯ハグされて……。

 目の前で繰り広げられる、マシンガントークに頭がついていかず、ピシリとその場に固まった。

 ──この人が、おっとりした癒し系の、詩織さん?

 ぜんぜん、違くね?


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