愛娘
私には可愛い愛娘がいる。もうすぐ七歳になる、愛花だ。愛花は女の子らしく育ち、可愛いもの、フリルのついたものが大好きで、毎日シール集めやお人形遊びをしている。学校はあまり好きではないようで、行きたがらない。だから、行かせていない。私にとって一番大事なのは愛花であるし、嫌われたくもない。黒髪ロングの大きな眼、フリルのドレスに血色の良い唇。まるでお人形さんみたい。可愛い可愛い私の宝物。見つめていると、愛とはこの子のためにあるような気がしてくる。絶対に傷つけないように大切にしないと。
ある日、愛花は「お母さんと一緒に買い物をしたい。」と言い出した。感激だった。一人遊びが好きなあの子が、私と一緒に何かをしたいと思うなんて。嬉しくて嬉しくて愛花に話しかける声も心なしか高くなっていた。スーパーにつくまで、しきりに私が喋ってばかりいた。愛花が可愛いから、道行く人は皆こちらを見る。皆に愛花を自慢できる嬉しさと、愛花を狙う不届きものに対する緊張感が入り混じった不思議な気持ちだった。私の手に連れられ、愛花がスーパーの扉を通る。
「わぁ……!」
初めて見た外の景色はどれほど美しかったのだろう。お菓子コーナーで、お母さん、いつも食べてるお菓子あるよ!とはしゃぐ姿はまるで天使だった。
■■■■なわけない。私たちはそのあと何事もなく家まで帰った。
平和なこの日常がずっと続くんだ、そう信じていた。
ある日突然愛花の様子がおかしくなった。窓をしきりに叩いたり、大声で突然叫びだしたりし始めた。正直、愛花が怖かった。今まで仲睦まじく過ごしていたのに、なぜこんなことをするのが理解できなくて。何度も「お話」ししたのに聞いてくれなかった。その頃かな、いたずらのインターホンが多くなったのは。毎日毎日ピンポンピンポンうるさいったらありゃしない。表に出て叱ってみても、もちろん誰もいない。なんでわざわざうちを狙うかな。私は愛花との関係修復に忙しいんだから、困るのに。
その日から愛花がやつれてきた、食事ものどを通らないようで涙目で何かをこらえている様子。「お話」をしようとしても無言で首を振るだけ。もしかしたら愛花は何か悪い人に騙されているのかも。そう思い、大慌てで愛花の部屋をのぞくと■■■と目が合った。それは別にどうでもいい、愛花が辛い思いをしている原因が知りたいの。部屋中のおもちゃや棚の中を徹底的に調べる。■■もあったけれど、それも大して関係ないと思う。
「あれ、これ」
棚の奥底から出てきたのは私が買った覚えのないゲーム。愛花は外に出ていないはずなのに。なんで私が買っていないものが愛花の部屋から出てくるの。じゃあやっぱり愛花は悪い人に騙されているんだ。だから、あんなにやつれちゃって。でも、悪い人に騙されるなんて、愛花も悪い子だね。だから外は危ないよって教えていたのに。「お仕置き」をしないと。
……また、愛花が動かなくなっちゃった。しっかり休ませないと。そしたら、また愛花は帰ってきてくれるよね。
「おかえり、愛花」
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■■年某日。
女性宅から十数名分の児童の遺体が発見された。遺体はもれなく黒髪のウィッグとフリル付きのドレスを着せられていた。捜査より、女性は過去に女の子として育てていた男児を交通事故により亡くしている。女性は実子である男児を家から出さずに育てていた。その結果、初めての外出で楽しさのあまり母親の手を振り払って道路に飛び出してしまい、その結果即死。自分の全てであった息子が息絶えてしまったことにより、女性は狂った。近所の同じ年頃の男児や女児を攫っては自身の息子のように育てる日々。彼女は被害者が言うことを聞かない場合は「お話」と称し暴力をふるっていたようだ。被害者が「愛花」でない決定的な証拠が出てきてしまった場合、彼女は激高し「お仕置き」をする。彼女の娘は死んでいないはずだから。それを否定するようなものが許せるわけない。お仕置きという名前だが、ほとんど怒りに任せた暴力だったらしい。大抵の児童の死因はそれだ。腐臭により近隣住民からの通報が入り、事件が発覚した。最後の被害者である正人君があの家での詳細を語ってくれたことで、事件の全貌は明らかになった。
これが、この事件の終わりとなるはずだった。
数年後、再び同じ部屋で同じような事件が起こった。その取り調べで、容疑者の女性は以前の事件の容疑者のような言動を始めた。「愛花」に対する執着が強く、成仏ができなかったのだろう。調査の結果、入居者が女性。またはシングルマザーの時のみ彼女は憑依するということが分かった。
簡易的な対策であるし、解決ではない。近くにいる人が憑依の対象となる可能性もある。二度目の事件からもしばらくたった。ところで最近児童の行方不明の噂をよく聞く。このアパートは私の近所にあるので、もしかしたら彼女がまた蘇ったのかもしれない。




