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真面目な女友達にエロいことを言わせたら付き合うことになった話  作者: たこまき


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§0.3 家族の闘病記(2/3)

 この頃には樹は既に異彩を放っており、ただの8歳児ではなかった。

 5歳で母の病名を聞いた時、「なんで壊れた遺伝子は薬で治せないの?」と医師を問い詰め、6歳で人体図鑑を丸暗記した。

「一を聞いて十を知る」という言葉があるが、樹は一を聞いて百を知るような子供であった。

 その異質な知性は、既に大人たちを凌駕し始め、周りもそれに気づいていった。


 ***


 ある日、父は樹を書斎に呼んだ。


「樹、これを使ってみるか?」


 父が見せたのは、会社から借りてきた高性能のノートパソコンだった。息子が既に並外れた頭脳を持っていることを確信していた。


「お母さんの病気のこと、もっと色々調べたり勉強したいんだろ? お父さんも医療に関してはまだまだ勉強中だけど、コンピューターのことなら教えられる」


 それからの樹は、母の病気を治すために全てを捧げた。


 父・(こう)()は、樹を週末ごとに会社の技術説明会へ連れて行った。

 次世代シーケンサー、AI、ビッグデータ……、最新技術に触れるたび、樹は「今の技術では母を救えない」という現実を突きつけられる。

 それでも父は、息子のプログラミング技術向上を支援し、会社の高性能計算クラスターへの特別なアクセス権まで取得してくれた。


 元研究員であった母も、病床から息子の研究を支えた。

 英語の論文を一緒に読み解き、データの解釈を手伝い、時には「その仮説、面白いわね」と励ました。

 痛みに耐えながらも、息子の情熱を理解し続けた。


 樹の成長と共に、父の支援はより大胆になった。


 大手IT企業の技術部門責任者である彼は、経営会議で「次世代ゲノム解析AI」という新規事業を立ち上げた。

 その実態は、まだ義務教育の子供の研究に会社の金と設備を注ぎ込むためのもの。


 樹の才能を知る技術部の部下たちは、喜んでこの「共犯者」となった。

 だが、事情を知らない他部署や役員たちからは「公私混同だ」「責任者の道楽だ」と、浩二に厳しい批判の矛先を向けた。


 それでも浩二は、全ての雑音を無視し続けた。


「結果で黙らせるしかない」


 彼は自らの降格も覚悟の上で、プロジェクトを推進した。

 樹の理論を形にするハードウェアや実証実験が必要になれば、浩二は自身の退職金の一部を担保にしてまでも個人的な繋がりで他企業との協力を取り付けていた。


 そして樹、15歳。家族全員で闘った10年間の集大成として、一つの論文が完成し、世界最高峰の科学誌に掲載された。


 その論文は、三部構成になっていた。


 第一部『新規遺伝子解析アルゴリズム』は、即座に母の苦痛を取り除くための実践的解法。

 蟻コロニー最適化を応用したその手法は、既存薬の最適な組み合わせを導き出し、既に母の症状を劇的に改善させていた。


 だが、真の革新はここからだった。


 第二部『細胞応答シミュレーション』による再生医療の確率論的予測。

 第三部『標的指向性ベクターの設計理論』による、副作用なき遺伝子治療への道筋。


 樹は、CRISPR-Cas9やiPS細胞といった最先端技術を、独自の計算モデルで「制御可能なツール」へと昇華させていたのだ。


「……これは、魔法か?」


 査読者たちは、15歳の著者名と、一つの論文に詰め込まれた三つの革命的なアイデアに戦慄した。

 それは、一人の少年が母を救うためだけに描いた、未来医療への壮大なロードマップだったのだ。


次回「§0.3 家族の闘病記(3/3)」

毎日朝7時20分に更新です

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