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真面目な女友達にエロいことを言わせたら付き合うことになった話  作者: たこまき


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§3.5 個室の二人

「わあ、豪華……」


 枝豆、唐揚げ、出汁巻き卵、刺身など、色とりどりの料理が大皿に美しく盛られている。


「美味しそうでしょ? ここの料理、評判いいんだって」


「樹くん、よくこういうお店知ってるね」


「たまに付き合いで来るから」


 樹はさらりと答えた。


「それにしても、結衣さんとこうして話すの、なんか新鮮だな」


「どうして?」


「いつも大学で会ってたから。こうしてゆっくり話すの初めてでしょ?」


 結衣も頷いた。ジンジャーエールが運ばれてきて、ほっとした表情を見せる。


「樹くんって、いつも図書館とか学食とかで会うよね」


「そうだね。結衣さんもよく勉強してるし」


「医学部だから……覚えること多くて」


「大変そうだよね」


 樹は唐揚げを箸でつまみながら、優しく微笑んだ。


「でも不思議なんだよね。樹くんって、私がどこにいても現れる気がして」


 少し首を傾げ、結衣はニコニコしながら、


「もしかして、樹くん私のストーカーじゃないよね?」


 結衣は冗談めかして言ったつもりだったが、樹は存外、真顔で考え込んでしまった。


「え? でも大体は結衣さんから声かけてきてない?」


「あ……」


 言われてみれば、確かにいつも自分から声をかけていた気がする。


「じゃあ私がストーカーだ」


 結衣は恥ずかしそうに顔を赤らめた。


「違う違う、いつも話しかけてくれて僕は嬉しいから」


 慌てて手を振った。


「それに、結衣さんと話すの楽しいし」


「本当?」


「うん。医学の話とか真剣に聞いてくれるし。質問した時なんかも、結衣さんって教え方うまいよね」


 樹の言葉に、結衣は少し嬉しそうな表情を見せた。


「それこそ、いつも私の質問に答えてくれて。レポートの時も本当に助かった」


「あれくらい、いつでも協力するよ」


「研究の協力も……大変だったけど、役に立てたならよかった」


 結衣は恥ずかしそうに俯いた。あの時のことを思い出すと、今でも顔が熱くなる。


「本当に助かった。結衣さんのおかげで、いいデータが取れたから」


 少し申し訳なさそうな表情で樹は言った。


 美味しい料理をつまみながら、二人の会話は弾んだ。店の落ち着いた雰囲気と、樹の飾らない人柄のおかげで、時間が経つにつれて結衣の緊張もゆっくりと解けていった。


 ***


「そういえば、結衣さんって出身どこ?」


「岩手だよ。盛岡」


「へー、遠いんだね。一人暮らし?」


「うん。樹くんは?」


「僕は東京。でも今は大学の近くに住んでる」


「そうなんだ。東京の人なのに、なんか親しみやすいね」


「それってどういう意味?」


 樹は苦笑いを浮かべた。


「東京の人って、もっとこう……都会的なイメージがあって」


「結衣さんの中の東京人のイメージ、どんなだよ」


「飾らない感じが、話しやすくて」


「それフォローになってる?」


 二人は顔を見合わせて笑った。


 三杯目のビールを飲みながら、樹はふと真剣な表情になった。


「結衣さん、この前は本当にごめん」


「え?」


「研究協力の時……僕、ひどいこと言わせて。結衣さんがどんなに恥ずかしい思いしてるか考えもしないで、データのことばっかり……」


 樹の声が震え始めた。酔いも手伝って、感情が溢れそうになる。


「本当に最低だった。結衣さんは協力してくれてるのに、僕は……」


 目が潤んできて、樹は俯いた。


「樹くん、もういいよ」


 しょんぼりと俯くその姿が、昔いたずらをして叱られた弟の横顔とふと重なる。年上なのになんだか可愛く思えてきて、この空気を変えようと結衣はわざと明るい声を出した。


「私も、役に立てて嬉しかったし。もう気にしないで」


 ***


 それから話は大学生活のことや、趣味の話、最近見た映画の話など、次々と話題が変わっていった。結衣が医学部の大変さを語れば、樹も研究の苦労話で応える。気がつけば二時間近く経っている。


「あ、もうこんな時間」


 時計を見て驚いた。料理もほとんど空になっている。


「本当だ。話してると時間経つの早いね」


「うん、楽しかった」


「そろそろ出ようか」


「うん、ごちそうさまでした」


 ***


 店を出ると、夜風が心地よく頬を撫でた。曇っていた空は、いつの間にか晴れて星が見え始めている。


「まだ少し早いし……よく行くバーがあるんだけど、どう?」


次回「§3.6 地下の隠れ家」

毎日朝7時20分に更新です

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