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真面目な女友達にエロいことを言わせたら付き合うことになった話  作者: たこまき


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第3章 甘い毒、溶ける理性/§3.1 最後の問いかけ

 結衣が帰った後の研究室で、樹は一人、モニターの前に座り込んでいた。パソコンの画面には、今日収集したデータのグラフが表示されている。

 心拍数の急激な上昇、皮膚電気反応のピーク。全て結衣が限界まで恥ずかしがっていた証拠だ。


「僕は一体、何をしてたんだ……」


 頭を抱えた樹の脳裏に、結衣の苦しそうな表情が浮かぶ。涙を流していた彼女の顔が忘れられない。


(研究が大事なのは確かだ。でも、それ以上に大切なものを見失っていた。結衣さんは協力してくれている一人の人間なのに、僕はただのデータ源としてしか見ていなかった)


 スマホを取り出し、LINEを開いた。結衣に謝罪のメッセージを送ろうとして――やめた。


(言葉だけの謝罪なんて、今は軽すぎる……次の火曜日、本当に変わったところを見せなければ)


 そう心に誓いながら、樹は研究室を後にした。


 ***


 一方、帰宅した結衣は、ベッドに倒れ込んでいた。


(今日は本当に疲れた。恥ずかしさと怒りと、そして……樹くんへの複雑な気持ちで、頭がぐちゃぐちゃだ)


 封筒から1万円を取り出して見つめる。これが2回分の対価。(でも、お金の問題じゃない)


「食事の誘い――どうしよう……」


 ***


 翌週の火曜日、結衣は約束通り研究室を訪れた。

 エレベーターを降りて研究室の入り口付近で、ちょうど「水瀬研究室」からスーツを着た男性が出てくるところだった。


「あ、すみません」


 男性は結衣に軽く会釈して、足早に去っていった。(誰だろう……)初めて樹以外の人を見たことに、結衣は少し戸惑った。


 インターホンを押すと、すぐに樹が出てきた。


「結衣さん、来てくれてありがとう」


「うん……あの、さっき人が出てきたけど。もしかして、今日誰かいるの?」

(他の人に恥ずかしい話聞かれるかも――ちょっと嫌だな)


 結衣の声には、隠しきれない不安が滲んだ。その様子を見て、樹は苦笑した。


「ああ、あれは急な来客でね。もう帰ったから大丈夫。僕もちょっと焦ったよ」


 研究室に入ると、そこはいつものように静かで、二人きりの空間だった。樹は少し照れたように頭を掻きながら、打ち明ける。


「実は……初回は本当に偶然だったんだけど、前回と今回は、結衣さんが来る時間は他の人が来ないように僕の方で調整しておいたんだ。緊張しない環境を作っておかないと、と思って。もちろん、立会人がいない代わりに倫理審査の条件として部屋の鍵なんかは掛けてないから、誰かが入ってくる可能性が無いわけじゃないけど」


「え……わざわざ、私のために?」


「うん。結衣さんがリラックスして話せるのが一番だから。さっきの人は完全に予定外だったから、内心ヒヤヒヤしてた」


 彼の細やかな配慮に、結衣は胸が温かくなった。(私のために、そこまで考えてくれてたんだ……)

 そして、もしあの来客が長引いていたら……と思うと、こうして二人きりになれたことに心から安堵するのだった。


「今日は、本当に結衣さんのペースで進めるから」


 樹の真剣な表情を見て、結衣は頷いた。


「分かった。今日で最後なんでしょ? 頑張る」


「無理はしないで。でも……ありがとう」


 樹は機器をセットしながら、前回とは違って頻繁に結衣の様子を確認した。


「まず、前回の続きから。性交について、まずは医学的な説明をお願いできる?」


 深呼吸をしてから、結衣が答える。


「興奮状態になった男女が次に行うこと……それは性交と言います」


「うん」


「医学的には性器結合とか陰茎膣挿入と……言ったりします」


 前回と違って、樹は急かさない。結衣のペースを待っている。


「この段階では、女性は興奮期で膣分泌液が出ているので、その……潤滑が起こっていて……男性の陰茎を膣に……受け入れる準備ができています」


「ありがとう。ちょっと休憩する?」


「大丈夫……続けられる」


 結衣の覚悟を感じて、樹は優しく頷いた。


「じゃあ、オーガズムについて。前回途中だったから続きから」


「挿入後は……最高潮に向かいます。この時、お腹の奥の筋肉がぎゅっと規則的に締まったり緩んだりして……」


 顔を赤らめながらも、結衣は一般の人に分かる言葉を選んでいた。


「男性の場合は……その、精子が出て、その後しばらく……次ができない時間があります」


「女性の場合は?」


「女性は……休憩時間がないので……刺激が続けば、何度も頂点に達することができます」


 優しく頷きながら、樹はメモを取った。医学用語を使わない説明こそが、研究に必要なデータだ。


「ありがとう。少し休憩しようか」


「大丈夫……続けて終わらせたい」


 その後も、樹は慎重に言葉を選びながら質問を続けた。性感帯の分布、体位による感じ方の違い、避妊具使用時の感覚の変化――。どれも医学的に重要なデータだが、結衣にとっては一つひとつが恥ずかしさとの戦いだった。


 ***


 時計を見ると、もう1時間以上経っている。結衣は額に汗を滲ませながらも、(最後までがんばる)と決めていた。


「本当によく頑張ってるね。あと少しだから」


 樹が結衣を気遣いながら声をかけた。


「ありがとう。本当に最後の質問なんだけど……」


 樹の表情が少し曇った。


「これが一番患者さんが答えにくい内容で。でも、泌尿器科や婦人科の問診では避けて通れない」


「……何?」


「一人でする性的行為について。前立腺炎や膀胱炎の診断で、自慰行為の頻度を聞く必要があるんだ。性器の痛みや違和感の原因を探る時も、これとの関連を確認しないといけない」


 顔が真っ赤になる。

次回「§3.2 最後の応答」

毎日朝7時20分に更新です

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