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超短編集(笑)

〔漫才〕コンプラを守れメロス

作者: M

筒込(つつこみ):ツッコミ担当。長めで説明臭いツッコミをする。

木瓜(ぼけ):ボケ担当。あやしい関西弁でボケる。


木瓜「教科書って、実はコンプライアンス的にヤバいってことに気付いてん。」


筒込「コンプライアンスぅ? つまり、ルールに違反してるってことか。教科書なんだから、コンプラに則ってるに決まってるでしょうが。」


木瓜「コンプラを遵守するなら書いてあるはずのあの言葉が、教科書のどこにも無いねん。」


筒込「あの言葉?」


木瓜「※この物語はフィクションです。」


筒込「……確かに。そんな注意文が書いてある教科書なんて見たことないな。でも、わざわざ書かなくても普通は分かるだろ。」


木瓜「いたいけな子ども達やで。教科書には本当のことが書いてあると思うやんか。本当にあった話だと思ったらどうすんねん。」


筒込「授業でもやるんだし、フィクションかどうかは分かるって。」


木瓜「ちいちゃんのかげおくり。」


筒込「ん……フィクションか?……いや、実話のような気もする。微妙だなぁ。授業でどっちって習ったっけ? くそ、良いところ突いてきたな。フィクションか実話か分かんねぇ。」


木瓜「走れメロス。」


筒込「さすがにメロスはフィクションだろ。……いや、でも、シラクサのディオニュシオス一世は実在の暴君か。実際にあった話としてもおかしくないかもしれないな。……いやいやいやいや、そんなことはないだろ。かの王は自分の子を殺していないし、特に改心もしてないし。」


木瓜「じゃあ、あの一文を入れんと。」


筒込「あの一文?」


木瓜「※実在する人物・団体・国家等とは一切関係ありません。」


筒込「歴史上の人物だし、そんな注意文は要らないでしょ。そもそも、走れメロスは友情の物語だから、コンプラなんて問題ないだろ。」


木瓜「何()うとんねん。メロスが一番コンプラ的にヤバいんや。まずな、分からんことを街の人に聞こうとしたメロスは、若者に無視されたんや。せやから今度は、爺さんを捕まえて強めの口調で聞き出しとんやで。」


筒込「そう言えばそうだった。ああ、メロス。高齢者を脅すのはコンプラ的にちょっと良くないな。」


木瓜「ほんでメロスは、その爺さんから聞いた噂を信じて、剣を持って王様の所へ乗り込んだんや。」


筒込「うん、ヤバい。確かにそれはヤバい。ネットのガセ情報を鵜呑みにして、殺害予告した上に自宅へ(とつ)ってくる迷惑系インフルエンサーって感じだわ。メロス、コンプライアンス崩壊してたわ。」


木瓜「他にも、友人を犠牲に差し出す場面。友人を絞め殺せって()うてる。」


筒込「メロス……、言い過ぎだ。オブラートに包んで、処刑くらいのほうが良いな。せめて『◯せ』とか伏せておこうか……って、走れメロスは友情を描いた名作だぞ。コンプラ的に問題があるからって、書き換えるわけにもいかないだろ。」


木瓜「※作品の時代背景、製作者の意図を尊重し、オリジナルのまま掲載しました。」


筒込「おお、昔のドラマを再放送とかする時によく見るやつ。」


木瓜「さらに、メロスは雨で氾濫した川を泳いで渡るんや。」


筒込「そこは仕方ないじゃん。メロスが友情のために試練を乗り越えることが物語の肝なんだから。」


木瓜「※専門家の指導のもと安全対策をとっています。」


筒込「どこに専門家がいるんだよ。まあ、増水した川に近づくなんて危ないからな。お子様が真似したら大変だ。いや、大人の方が危ないか。雨降ってるのに川の中州でバーベーキュー続けたがるし、高齢者は大雨のたびに川や田んぼを見に行きたがるし。あれ、死亡フラグだと分かってないのかな。」


木瓜「次に、襲ってきた盗賊を、勝手に王様の差し金と決めつけてる。」


筒込「またやったなメロス。証拠がないのに、何でも王様が黒幕だと思い込むやつだ。メロスは陰謀論とかに(はま)りやすい人間だとは思っていたんだ。きっと川の増水も王様が犯人だとか考えてるんだぜ。」


木瓜「※個人の感想です。」


筒込「あー、そのテロップも見たことある。」


木瓜「さらに、途中で犬を蹴飛ばしてるんや。」


筒込「ああ~、メロス。動物虐待は重大なコンプライアンス違反、間違いなく炎上案件だわ。アカウントBANされるし、活動休止待ったなしだな。」


木瓜「あと、メロスは太陽が沈むより十倍早く走ったなんて書いてある。」


筒込「それは……、メロスが頑張ったんだろ。」


木瓜「沈む速さの十倍で走ったら、太陽が西から昇るはずやねん。」


筒込「は?……どゆこと?」


木瓜「メロスは、走りながら夕陽を見つめとるんよ。横や後ろを見ながら走れるはずないから、西に向かっとるはず。」


筒込「そりゃあそうだな。で?」


木瓜「太陽が沈む速さより早く走ったら、太陽に追いつくから、上に昇ってまうねん。」


筒込「あー、そうなるんか……確かに、そんな気もするな。メロスがマッハで走ると、衝撃波で周りが破壊される説とか聞いたことあるけど、そういう問題もあるのか。」


木瓜「※誇張された表現であり、科学的には正しくありません。」


筒込「そんな注意文は見たことない。」


木瓜「あとは友達と殴り合ったり。」


筒込「暴力は良くないな。」


木瓜「※このあとスタッフが美味しくいただきました。」


筒込「確かによく見るテロップだけど全然関係ないよ。友情を美味しくいただいたってこと?」


木瓜「※この物語はプロモーションを含みます。」


筒込「含まねえよ! 誰からの広告収入が発生しているんだよ。王様か? 王様の陰謀か?」


木瓜「全裸を少女に見せつけるメロス。」


筒込「ラストな。見せつけた訳じゃないけど、これはいけませんよ。下ネタに走るメロスには、ちゃんとした注意文が必要だな。」


木瓜「※ただしイケメンに限る。」


筒込「イケメンなら許されるのかよっ。いい加減にしろ!」


木瓜・筒込「ありがとうございました。」


※この漫才はフィクションです。

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― 新着の感想 ―
ま、まあ、よく出来たフィクションほど子どもの頭に残るものだから、ツッコミ所満載なのは致し方無いかな…。日本人ならタイトルくらいは最低でも知ってる人がほとんどなレベルだし。 しかも作者の太宰治が「走れ…
考えてみますと、「糸で生きる虫たち」や「日本語のルーツをさぐったら」のような所謂「説明文」と呼ばれるテクストですと、科学や言語学に基づいているノンフィクションという事になりますからね。 低学年の子達向…
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