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呪術は小説より奇なり  作者: 麻人 弥生
忌み地の付喪神
7/9

呪術研究部にまつわる新しい噂

「本当にありがとうございました。」

「まぁ俺達に掛かればこんなもんよ!」

何故か得意気な四子は僕と部長(普通の人に部長は見えないけど)を差し置いて、古文準備室に感謝を述べに来た長谷川さんの相手をしていた。

長谷川さんから聞いた話によると、行方不明だった馬場君も無事に帰って来たそうで、田端君と合わせて詳しいことは覚えてはいないという事だった。

そして全く話に上がらなかった相沢君を含めた、肝試し4人組はいじめっ子への反撃の為に体を鍛え始めたそうで、僕からは人数分の映画「ファイヤー・ドラゴン」のDVDを差し入れておいた。争い事から日常の些細な困り事まで功夫クンフーは全てを解決してくれるからである。きっと彼らが奇声を発しながらいじめっ子に飛び蹴りを喰らわす日もきっとそう遠くはないだろう。


「それで昨日の今日で、なーんで四子さんはうちの学校に転校して来てるんですか。あの日も急にいなくなるし。」

長谷川さんを見送った後で4人になった部室では、僕が今日登校して来てからずっと頭の中にあった疑問をやっとぶつけることが出来た。

四子こと四谷四子ヨツヤヨーコと自己紹介をした彼女は突然僕のクラスへと転校してきた。

彼女は、事件の解決と共に挨拶もそこそこで姿を晦ましてしまっていたのだが、確かに「またどこかで会おうな!」とは言ってたけれども想像とは違う形上、あまりにも早い再開だった。

「いや、死に神も仕事でやってんだから事件の後は事務仕事があるんです〜。まじダルいんです〜。色々事情があるんです〜。」

「四子、それは答えになっていないのではなくて?」

「つーか!なんであの土地神がいるんだよ!?依代の人形に自分でハサミぶっ刺して消えてたよな!?」

「それなら部長が”緊急手術!”とか言って昨日辺りに直してましたよ。」

「土地神不在の忌み地の管理手続きで俺がどれだけメンドい事になってんのか分かるか!?居るなら戻ってくれよ!!つーか壊れた依代を直すってなんだよ!!聞いたことねぇよ!!」

さぞ大変な思いをしているんだろう。四子のボルテージは瞬間最大風速を迎えていた。

それに対してあっさりというかおっとりというかな返答をする部長。

「だから私も呪われてるって言ったじゃん。”不滅の呪い”とでもいうのかな。まぁ不滅と言いながら私の肉体はとっくの昔に失くなっちゃったんだけど。それよりこのお人形が私でも触れてよかったよ。実体があるのに霊体でも触れるなんて不思議だねぇ。」

「ちょっと不如、私の事をそんなに撫で回さないで頂戴。人前で恥ずかしいわ。」

「あ、それってそんな感じなんですね。」

大人びた雰囲気の真理さんがちんちくりんな部長の膝の上で撫で回されているのを想像すると妙に微笑ましかった。

「ちょっとナントカ君失礼なこと考えたでしょ。」

「ナントカ、キモいぞ。顔が。」

「貴様・・・。」

一斉にこちらに向く謂れのない非難と視線。僕の微笑みはそんなにも酷いのだろうか・・・。

「しゅん・・・。」

僕の悲しみから出た鳴き声は冷姦達クールガールズにはしっかりと無視された。


「それで実際、真理ちゃんが土地神に戻るってのはどうなの?」

「だからそもそも私は代理って・・・。はぁ、今は時間があるから順を追って簡単に説明するわね。」

その前置きに一同は聞きの姿勢を取り直した。

「事の発端は肝試しに来た4人組の中に小夜サヨの子が居たのが問題だったわ。」

「あの時も言ってましたけど、小夜って誰なんですか?」

早々に話の腰を折って申し訳ないが、どう考えてもポっと出の重要人物だ。詳しい説明を求めたい。

「小夜は土地神の妹だった子。曰く付きの地を治める為、人柱になった白夜シラヨの腹違いの妹よ。白夜は家族で小夜だけとは仲が良かったから、白夜は最期まで小夜の幸せだけを願っていた。つまりは薄くとも小夜と血の繋がった存在が呪いの贄になるのを土地神白夜は許さなかった。そして呪いへの干渉に力を使い果たした事と自身の想いを遂げた事で土地神としての白夜は消えてしまった。兎に角、貴様らが来た時点で正式な土地神はもう居なかったのよ。空席に座るのが、田端あんなのに取り憑いた呪いなんて癪に触るから邪魔をしていただけで、そもそも私は土地神の器ではないわ。私はただのお人形、精々白夜の遊び相手でしかなかったんだから。と言っても不如にはある程度、見当が付いていたみたいだけれど。」

振られた部長はえへへと頭を掻いて照れていた。

「つまり、俺はこのまま馬鹿みたいな量の書類をやらなきゃいけない訳ね。」

不貞腐れてソファに深く座りなおした四子に僕は空気を変えるための提案をした。

「ま、まぁとりあえず長谷川さんが持ってきてくれたケーキでも食べましょうよ。」

「やった!ケーキ!供えて供えて!」

「ナントカ、俺ミルクティーな。」

「いや、茶を淹れるとは一言も言ってないですよね?」

「けーき、とは何かしら?」

わちゃわちゃと小さなホールのケーキを切り分けながら等速で放課後は過ぎていった。


そんなこんなで、後日高円寺高等学校には呪術研究部ノロケンが悪霊を滅し、行方不明の中学生を無事救出したという嘘みたいな噂話がまことしやかに囁かれるのであったが、何はともあれ終わりがよければいいんだとかナントカ。

読み切りならここで終わりのイメージです。

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