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呪術は小説より奇なり  作者: 麻人 弥生
妖刀村正擬き

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友達

静まり返った病室は真理の言葉を待っていた。

僕は真理の答えを待った。

いつもであれば真っ先に口に出す筈の四子も何か言いたげの表情でベットの上で俯いている。

僕らが相対する二人の死に神の提案には肯定以外はないとこちらに訴えかける圧があった。

それでも、仮に僕の友達がもしも抗うというのなら僕はその意思を必ず通してみせる。


真理は考えていた。

あの得体の知れない男に狙われているという事実。

突然身柄をよこせと言ってきた謎の組織。

美味しかったケーキ。食べたかった甘いもの。

それを教えてくれた新たな友達。

忘れ去られた忌み地の神であの子と共に過ごしてきた時間。

それらは混ざり合って漠然とした大きな不安となって押し寄せて来る。

私の答えの次第によっては何か大切なものを失ってしまうのではないか。

しかし、それならば今の私にとって一番大切なものは何なのだろうか・・・。


その時、凍りついた部屋の中で白衣を翻した部長が真理の正面に周り込むと両の手を握った。

「真理ちゃんはどうしたいの?私達は友達だよ?本当の事を言っていいと私は思うんだ」

不如の言葉に真理は欠けていた何かが埋まったような気がした。


「申し訳ないけれど、貴方達の提案はお断りさせていただくわ。

来週、気になっていた喫茶店に行く約束を思い出したの。そちらが先約だもの」


真理の答えに静けさを称えた病室はざわざわと走る不快な悪寒に包まれた。

「師匠!!ヤメて!!!」

その中心にいるのはシクだった。

「こちらこそ申し訳ない。さっきのお願いの段階で物分かり良くこちら側に来てもらえると思っていたわ。

普段通り別にこちらとしては力尽くでも良かったのに」

先ほどにも感じた正体不明の敵意が床を壁を駈けずり回っている錯覚。

「ナントカ君!」

真理を守るようにして抱き付いた不如が海斗を呼ぶ声が後ろで聞こえた。

「本性表したね!!」

海斗は侵食されていく空間を直感的に踏まないようにして距離を詰めていた。

空中で体勢を整えると視界から敵を外さない様にして右足の回し蹴りを放ったがそれを腕一本で防がれた。

「良い蹴りね」

まるで鉄の柱に蹴りを入れた様な感触に一瞬気圧されるも海斗は次の攻撃に繋げる為に重心を移動させようとした。


「それまでじゃ!!!」


稀麿の声が響いた。

空気を震わせたその声に部屋を覆いかけていた不快な怖気は瞬時に退いていった。

そして僕の背面からシクの上段蹴りが寸止めになっていた事に気が付いた。

「確かに今の四坊じゃあ少しばかり力不足という話じゃったな」

話を振られたシクは海斗の顔の高さでピタリと止めていた足を降ろして居直った。

「あーそうですね。だから私らが付喪神を保護する方が良いってのいうのが上の結論だった筈ですけど」

「そういう事だったんじゃが、お前さんらはどう思う?」

そう言って稀麿は僕らをそれぞれに見た。

真理が私はさっき言った通りだけれど?という顔でこちらを見るので

「四子で力不足という事なら僕達がその分を補います。僕達で真理さんを護ります」

「よく言ったナントカ君!それでこそ呪研のメンバーだ!」うんうんと腕を組み頷いた後で部長は続ける。

「という事で私達に免じて真理ちゃんの意思を尊重してあげて欲しいです。

ほら四子ちゃんからもなんか言ってあげてよ!」

ベットの上で座ったまま正面に向き直った四子はゆっくりと口を開いた。

「師匠にジジィ・・・。俺が弱いのは分かったから・・・。

でもそれとこいつらは関係ないだろ?それにまた師匠に修行つけてもらって、もっと強くなるから。

だから、まだ、俺もこいつらと一緒に居させて下さい」

ぺこりと頭を下げた四子にシクが口の端から大きく煙草の煙を吐き出した。

「四谷怪我が治ったら覚悟しなよ」

「はい!」

それと不死君(ふしくん)、と僕の方に視線を向けたシクのサングラスの下の瞳と目が合う。

「君さっきのは私の一本だったから。生意気言うんだったらもっと精進しろよ」

「あ、押忍」

今まで分からなかった意思の強そうな瞳が少し優しく瞬いた気がした事に気を取られて僕は適当な返事しか返せなかった。


「後処理はこちらに任せて四坊はしばらく安静にしていなさい。

それじゃあ邪魔したの、若人(わこうど)達よ」

踵を返して元気よく帰って行った稀麿と合わせてシクも部屋を出て行った。


それを見送ってからどっと疲れが押し寄せてきた。

そうしてへたり込んだ所にまたも扉が開いた。

僕達がばっとそちらを見るとそこには花束と小包を持った暮林さんが立っていた。

「お見舞いに来たのですがどうやっても部屋に辿り着けなくて・・・。

って病室で煙草を吸いましたか!?未成年喫煙は許せませんね」

そこから何とかして未成年喫煙という不名誉な冤罪を釈明するのにかなりを時間を要したのだが、

その間、容疑者から外れた部長と真理さんと四子は暮林さんが持ってきた小包の中身の手作りクッキーを食べていたのだった。


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「なんか私だけ悪者みたいで納得がいかなかったんですけど、どう考えても私の株が下がりましたよね。

あんな事する必要本当にありましたか?しかも相変わらず四谷に甘いし」

「分かるじゃろ大切なのは本人の意思なんじゃ。

どっちに転んだとしても儂らのやる事は変わらん、それならより面白い方へ賭けるのは必然。

年寄りの楽しみを若者が奪うでないわ」

果てしていつの時代から生きているのかさえ不明の少年の皮を被った化け物。

身長差のせいで横を歩くこの少年の表情までは伺えないが、少なからず上機嫌な事だけはシクのサングラス越しにも分かった。

そろそろ終わりです

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