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呪術は小説より奇なり  作者: 麻人 弥生
妖刀村正擬き

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螺烈

「確かにシクも口は悪いが四坊とは違うじゃろ。年寄りってのは素直じゃないんじゃよ。

まぁじゃから、子供の友達からもそんな風に言われてしまうんじゃ。

折角なんだ、たまにはちゃんと褒めれやればいいじゃろ?」

「年寄り扱いしないでください。どこからどう見てもナイスなレディだろ」

海斗の発言で凍りついた空気は稀麿の言葉で融解し、その水に当てられたシクは灰が多めになった煙草を不機嫌を表すように力強めに取り出したポケット灰皿に詰った。

「そんなこと言いつつ、妖刀の神化を聞いて一目散に四坊の所へ向かった癖にのぉ」

そう言って年相応な笑い声をあげた稀麿の横目で見つつ、もう一本別の煙草に火を点けるシク。

深く煙を肺に入れると大きくゆっくりとそれを吐き出した。

「四子、よくやったよ。お前はできる限りの仕事をした。

それと改めて、君達にも感謝する今回の一件はさっき四子が言った通りこっちのミスだ。

それに元はと言えば不死の君について事情も話さずに様子見をしたのも判断を間違いだった。

だというのに、このゴタゴタに命を懸けて戦ってくれた訳だ。私達の無礼も含めて詫びさせてもらう」

「それでここからは言い訳なんじゃが、お前さんらは螺烈(られつ)という名前に聞き覚えはないかの?」

それはどこかで聞いた事のある響きだった。

互いにそれを感じ取った呪研のメンバーは顔を見合わせた。

確信の持てないハテナが互いの間を行き来した後、死に神が入ってきてからずっと黙り込んでいた真理が口を開いた。

「あの気持ちの悪い男のことでしょう?四子が破いて突き返した名刺が人形(わたし)の帯の所に入っていると思うのだけど」

その言葉に僕は「失礼します」と一声掛けて丁重に真理さんの着物の帯の内側を探った。

そして鹿骨/螺烈という様な形で破れた一枚の名刺が出てきた。

その名刺を見てぼんやりとした輪郭ははっきりとした形を持って再生された。

(まさ)しく妙な男。真理さんの依り代である人形に見る真っ黒い瞳。

「今は鹿骨と名乗っておるのか・・・。相変わらず縁起の悪い名前が好きな奴じゃの」

僕から受け取った名刺をひらひらと振ってみせた後、その紙切れを短パンのポケットに仕舞い込んだ。

ここからが本当に聞かれちゃいけない話、と前置きをしたシクは語り出した。

「最初に四子を忌み地に派遣した理由はなんだったか覚えてる?」

「えっ、あー・・・」

話を振られた四子は早1ヶ月程前の事の発端を既に記憶していなかったようだった。

「馬鹿。毎回メモしろって言ってんだろ」ため息を吐いて話は戻る。

「ここら辺で”心霊狩り”ってのが出てたからその調査、又は犯人捜せってのが事の発端な訳」

「それで私とナントカ君が襲われたんだっけ」

部長の呟きに余計なことを言うなよ四子は表情で釘を刺したが手遅れだった。

「襲った?報告書にはそんな風に書いてなかったよな?

まぁ今はいい。兎に角安定している心霊スポットや忌み地のバランスを崩して回る何者かがいた。

私達としては当初は変に力のあるイカサマ霊媒師だとかが原因だと思ってたんだけど、

厄介な奴が関わってるんじゃないかって数日前に判明したの」

「それが鹿骨”螺烈”という訳じゃな。

こいつは面倒な奴でな、死に神そのものとの因縁があると言っても過言ではない。

儂らも千年はこの稼業をやってるんじゃが、その間ずっと敵対しておる。

何なら螺烈がどれ程前からこの世界に存在しているのかも分からん。

何十年かに一度、世に現れては気紛れに厄災を齎す。それこそ呪いや呪物、呪術の権化のような存在じゃ。

儂のおじいちゃんの代からその名前が残っておるからのぉ。

それでここへ来る前に阿佐ヶ谷へ寄って刃物屋の店主に協力してもらったんじゃが、村重の肉(砥石)を持ってきた男というのは姿形はどうあれ螺烈と見て間違いない。

それどころか三十二年前に起きた事件も件の店に砥石を持って行き、回収したのも奴の仕業だったのだろう」

「妖刀村正による殺傷事件、ないし騒動は500年前から記録に残っているだけでも84件。被害者は400じゃ足りないわ」

シクの補足に僕らは息を飲んだ。

「この男は全国で目撃されておる。儂らも都度、事後対応を行いながら追ってきた訳だが、最終的に捉えるまでには至っておらん。

しかし、奴は執着する。例えば付喪神の貴女なんかはそれを感じたのではないかの?」

「単刀直入にいうと、付喪神である貴女の身柄を私達に預けて欲しい」

真理という存在、それは死に神達にとって千載一遇のチャンスだった。

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