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呪術は小説より奇なり  作者: 麻人 弥生
妖刀村正擬き

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夜が明けて病室

「んだよ。結局怪我人は俺だけかよ」

「そうだよ!大怪我人なんだから安静にしてなきゃダメだよ!」

「どうしてこう四子ばかりが怪我をしてしまうのかしら?なんだか可哀想になってきたわ」

「真理!そっちこそ外で迷い家の祠を守ってただけだろ!」

「あら。私の方もそれなりにバタバタしたのよ?元はといえば貴方の仕事の手伝いなんだから感謝して欲しいわね」

「四子ちゃんステイ!安静だよ!!」


病院の廊下は様々な人とすれ違う。そして様々な音がする。

そして海斗が向かっている病室に近づくにつれて聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「皆さん廊下の方にも声が響いちゃってますよ」

スッと横開きのドアを開けて入ってきたのは見舞い品のお使いに出されていた海斗だった。

「四坊。随分と元気みたいだなじゃな」

「全く。病院で騒ぐんじゃないよ」

海斗の後ろから現れたのは、背の高いサングラスの女性と10歳程の少年であった。

「なんか四子さんの知り合いっていうから一緒に来たんですけど、姉弟(きょうだい)いたんですね」

その場の事情を知らない者は海斗と同じように思っていた所、四子の答えは全く違った。

「クソジジィ!テメェ今回もどんだけ面倒(メンドー)な事になったと思ってんだ!ボケ!バカ!」

「だから儂らが直接来たんじゃろ」

興奮冷めやらぬ四子が更に言い返そうとした時、病室の凄まじい殺気が走った。

「騒ぐんじゃないって言ったろう?」

何が起こったのかは分からなかったが、時を止めたかのような一瞬に海斗だけは反応しサングラスの女に構えていた。

(今、死んでた・・・。不死(コロサレズ)の呪いも反応しなかったし、こんな事・・・。)

「見所があるね。君が”不死”の南斗君か。」

「やめんかシク。ここは病院じゃぞ」

「はいはい、それよりも自己紹介が遅れたね。私はシク、四谷の師匠みたいなものだ」

「儂は神立部稀麿(かんだちべまれまろ)じゃ。君らの話は四坊から聞いとる。今回も四坊の尻拭いをさせて申し訳ない」

そう言って仰々しい名前の小学男児はしゃんとした背筋を深く折り曲げた。

「四谷は女になってからいい所なしだな」

そう言ってシクはおもむろにポケットから取り出した煙草に火を点けた。

二、三口吸うと薄く煙を吐いた。

不思議な匂いと煙の色は部屋の中に充満することなく、透明になって溶けた。

「これ、神撒き煙草ね。ここからの話は聞かれたら困るかもだし。てことでここからが本題」

「死に神の呪いを移したと聞いたんじゃが、見た所そこの小僧は死に神にはなっとらんな」

不意に自分の話になった海斗に視線が集まる。

「死に神の血を飲んでも死に神にならんという事は既に別の神が呪いを掛けているという事じゃな」

「僕そんな罰当たりな事をした記憶ないですよ?」

「神に道理は解いても意味はない。気に入られたとでも思うしかないんじゃ。儂と同じようにな」

「というと、貴方も何かしらの呪いを?」

気になった事は口に出てしまう部長の質問に頷く。

「儂は不老の呪いとでもいうんじゃろうか。見ての通り見た目は子供で中身はという奴じゃな」

「妖怪クソジジイキッズなんだよ」

「細胞も若いままじゃからの、耳も遠くはなっとらんぞ?」

小声で言った四子の悪口もしっかりと聞こえているようだった。

「あと、気になるついでに四子ちゃんが女になってからってどういう事ですか?」

今度はシクの方へ向き直って質問をした部長。

その質問に確かに聞き捨てならない言葉が捨て置かれていた事を思い出した。

「あーそれねー。私言っちゃってたかー」

チラチラと四子の様子を伺うシクと話を蒸し返された事で、

明らかに不機嫌になっていく絶対安静の怪我人はわざとらしいその視線に当たられること数回。

遂に咆哮した。

「ガー!師匠さっきのそれわざとッスよね!?絶対わざとだ!!俺が逆らえないからっていっつもネタにするんだ!!!」

一息に言い切ったその台詞の余韻までたっぷりと聞いた後でシクは腹を抱えて笑い始めた。

「だからここは病院じゃと何度も言っておろうが」

稀麿に窘められ一度は堪えたもののシクは再度吹き出す。

一同はしばらく笑い転げるシクを見ていた。

「はー、笑った。なんだろ、四谷がクソガキだった頃を知ってる所為かな。これだけは本当にツボ。

まぁ、幽霊ちゃんの質問ね、四谷は正式な死に神になる前に神殺しをしてるんだけど、その時の障りで女になっちゃた訳

喋り方とか男の時のまんまなのもまた可愛いわよね」

衝撃の事実に和みみたいな変な空気が流れた。

そりゃそうだ。呪研メンバーにしてみれば寝耳の水。どんなリアクションを取ったものか・・・。

一足タイミングを逃して部長が先陣を切ろうと振りかぶった。矢先。

自分で作ったふざけた空気にシクは氷の様な冷たい言葉を突き刺した。

「でも、女になってから弱くなっちゃった」

「エッー!ーー・・・。。。.....」

ピッチングモーションに入った部長のリアクションは止まらなかった。

何もない所へボールを投げてしまったかの様に虚しく弧を描いたそれは勢いを失いやがて地面へ落下した。

可愛い犬でも居ればこんな空気の中でも、火中の栗を拾いに行ってくれたのかも知れない。

仕方ない。僕が拾うしかないか・・・。

「と、ということはシクさんと四子は美人師弟ってことだ!四子の口の悪さも師匠譲りって訳ですね!!」

頼むどうか、不死の呪いよ。悪い未来を見せないでおくれ。

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