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呪術は小説より奇なり  作者: 麻人 弥生
妖刀村正擬き

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決着の一撃

(手応え!!!)

幾重の攻撃を固めた拳を使い両手首から15cm(センチメートル)程肘寄りに集中した迎撃は海斗の思惑通りに村重の骨を破壊した。

呼吸をする暇もなかった攻撃が鈍ると踏んだ海斗は体に溜まった二酸化炭素を大きく吐き出した。

それは隙だとか、油断とも違うはずのものだった。

破壊した腕という意識の外。通常であれば痛みで庇い、狼狽えるであろうその損傷に村重は更に一歩踏み込んで来る。


その行動の起こりを海斗は誰よりも先に認識していた。

動き出す村重自身よりも早く未来視で把握していた。


が、しかし人間、

分かっていても体が動かない瞬間というのはある。

事が起こるのを見守るだけの、覚悟をするしかないだけの空白の時間。

破壊した筈の腕からは皮膚を貫通して骨が突き出していた。

村重は自身の力を使い研磨したそれが体の中心に突き刺さるシーンが瞼の裏を焼く。

(ヤバイヤバイヤバイヤバイ・・・間違いなく当たる!!)

脳内に響き渡る警告音と自分の絶叫がリフレインする。

自身に課した”村重により自身の体に傷がついた場合、自殺する”という誓いにより皮膚一枚も命取りとなる。

その制約が一瞬の判断を鈍らせた。

つまりその攻撃に海斗が合わせて出した右拳のカウンターは無意識だった。

自分の死が迫ってくる。そんな状況下で海斗の思考が遅れて追いついてくる。

(避けるな!!当たった瞬間に叩き込む!!!相打ちで上等だろ!!!!)



不如と出会う前の海斗は16歳にして死に場所を求めていた。

というよりも誰かの為に死にたかったのかもしれない。

本人の中でそれは贖罪の為であり、罪悪感からの開放の為であった。

自身を蝕む呪いの特性に気が付いた時の絶望は今でも忘れない。

駅へ向かっている途中で、呪いは小さな事故を見せた。

今までにも何度かあったように思う。自分が怪我をする程度の事故。

勿論大事を取って避ける。その日も避けた。

数十分から数時間ほど先の不幸を回避するのは未来の見える自分にとっては簡単な事だった。

翌日、向かうはずだった駅から出た電車は脱線事故を起こしたとニュースがやっていた。

凄惨な現場を映すTV(テレビ)の画面を観て、曖昧だった点と点が繋がっていく。

自身の小さな不幸の回避は、巡り巡った大きな代償の上に成り立っていたのかも知れないと確信めいた閃きが脳を駆け巡ったのだ。

それから僕は見えた未来を避けない様になった。

小さかった不幸は未来を避けぬ内にどんどんとその規模を大きくしていった。

階段で転ぶ程度だった筈が、車に轢かれ、通り魔に襲われ、やがて命を脅かす様なものへと変わっていた。

合わせて海斗はその未来を退ける為に自分自身を鍛えた。それが功夫(クンフー)に嵌った動機である。

死というものは遠くにあるほど簡単に安全に避けることが出来る。

しかし、そうして湾曲した未来が齎す代償に何が支払われるか選ぶことは出来ない。

逆にそれが目の前に迫った時、それを振り払えるかどうかは自分次第である。

それが摂理なのだと気が付いた。

そして街の不良程度であれば束になっても敵わない程の力を手にしても尚、

海斗は思いも馳せずに犠牲にしてしまったものについて考えていた。



目前に迫る鋭利な橈骨(とうこつ)尺骨(しゃっこつ)

迫る村重の心臓を貫く勢いの海斗の寸勁(ストレート)

一瞬を薄く長く伸ばすような一撃を待っていた物があった。

「骨を加工したな。それは”刃物”だよな?」

折れた刀を握る右腕はその一瞬の間に割って入ると突き出した二つの骨を弾き砕いた。

「兄上ぇぇぇええ!!!!」

依り代を破壊された村正は真っ二つになった体で再び村重が刀を持つ時を薄れ自我の中で待っていた。

叫ぶ村重の胸に拳が食い込む。

皮膚、肉、骨、内臓、数多の抵抗を破壊し押し広げてゆく。

遅れて作用した慣性が伸びきった拳から村重の肉体を引き剥がした。

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