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呪術は小説より奇なり  作者: 麻人 弥生
妖刀村正擬き

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41/45

HP1

タイマーが鳴ったと同時に動き出した村重はまず間合いを詰めた。

どういう原理か空研を避ける海斗に対しては近接攻撃の接触による四肢の研摩割れを狙った方が早いとの判断だった。

明らかにこちらが優位な状況での一時中断。

そのフラストレーションを晴らすかのような攻撃が炸裂した。

右腕全体による手刀はその空気との摩擦で生み出した刃を纏って受けを許さぬ一撃のはずだった。


ズパンと空気を破る音に遅れて弾かれた右腕に村重は戸惑いを覚えた。

触れたもの、触れられたものを研ぐという自身の能力、技術に対しての疑いはない。

それは数瞬であったとしても干渉すれば研磨割れを起こすことが出来る。

それが弾かれた。何に!?


振り下ろされた手刀に対して、海斗が繰り出したのは所謂ショートアッパーだった。

拳による最速最短での迎撃だった。

四子の戦線離脱により背水となった今、海斗は限りなく少ない可能性を拾う為の大きな賭けに出ていた。


「おいおい・・・。死に神の呪いにそんな副作用はねぇぞ。って不如、俺に何かしたのか?」

血を飲ませた後、村重の攻撃を正面から防いで見せた海斗は纏う空気感を変えていた。

最初は驚きで自身の体が動かないのかと思ったがどうやらそうではないらしい。

口と目しか動かないが明らかに先程までの死に向かう感覚が緩やかになっている。

「バレた?それは金縛りだよ。言うなれば人体を物理干渉(ポルターガイスト)でギュってしてる感じ。体内の傷口もぴったりとくっつけてるから安静にしてれば大丈夫」

「んな事も出来んなら最初から・・・」

「10秒以上動かない相手にしか効かないし、それと強い意志と力があれば自力で解けるの。だからこんな使い方しか出来ないし、そもそも物を動かすよりも大変だから私はもうナントカ君のフォローも出来ない」

「じゃあ俺なんかよりも、ナントカの事を助けてやってくr」

まるで俺がそう言い出すのが分かっていたみたいに不如は答えた。

「先にナントカ君と約束したからダメ。村重さんはナントカ君が何とかする。だから私は四子ちゃんを何とかするの」

そっかそれじゃ仕方ねぇ。お言葉に甘えるしかないか・・・。

「んじゃもう任せるわ。でもナントカの動きのカラクリは教えてくれるよな?」

俺も不如も戦闘不能。これで勝ったら、ナントカお前流石にカッコイイぜ。


一つの制約。それは海斗の奥の手である。

自身の不死(コロサレズ)の呪いの特性である自分の死因の先読みを逆手に取った裏技。

海斗は今、”村重により自身の体に傷がついた場合、自殺する”という誓いを立て村重に立ち向かっていた。

つまり今、村重という存在の動作全てが自身の死因となり得る状態であり、

海斗は村重の全ての行動に不死の呪いによる先読みが適応していた。



おかしい!おかしい!!

先程までとは全く違う!!!

しかし何処が・・・!?

私の特別な眼を持ってしても何が変化したのか分からないが、こちらの攻撃に突然適応してきた。

混乱の中にいても攻撃の手は緩めてはいない。

突き、蹴り、打ち、掴み、動作に入った瞬間に拳により弾かれる。

間合いを取ろうと退がろうにもその分も行動の起こりを先回りして詰められる。


こいつ未来が見えているとしか思えない・・・!!!


それは村重を以ってしても対応は不可能であり、故に先手を取り続ける事を最善とした。


一方で相手の行動をいくら先読みしたとして、

角度、勢い、タイミングを完璧に拳を出すのに凄まじい集中力を使っていた。

海斗は摩擦を発生させない様に面では無く、村重の攻撃と己の拳の接触を点と点にすることによって迎撃を成立させていた。

とはいえそれは現状で攻撃に転ずるほどのものではない。

集中も永遠には持たない。どちらが先に隙を見せるかの超接近戦の我慢比べとなる。

脳の処理に限界を迎えつつあった海斗の鼻から血が垂れ始めた時、


パキッ


幾度の打ち合いの果て乾いた音と共に村重の左腕上腕骨を海斗の拳が粉砕した。

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