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呪術は小説より奇なり  作者: 麻人 弥生
妖刀村正擬き

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35/40

呪いとは、呪術とは

「呪いというのは願いの結果に過ぎない。

人でも生き物でも何かしらを願う時、それがどんな結末を迎えるかは叶ってみないと分からないですからね。

そしてその願い方はそれこそ無限に存在している。

例えば”所作”、”習慣”。そして”死”。そこに願いが介在すればすべて呪術足り得るのです。

つまり貴方が刀を打つのも立派な呪術という訳です」


「願い・・・」


「勿論貴方の才能在りきの話ですがね。

是非ともその願い(呪い)、大切にしていただきたい」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


村正の体は斬れた刀身と対を成す様に一拍程遅れて上半身と下半身で別れた。

「馬鹿な!!その刀は村重(お前)の依り代では・・・!!!!」

体勢を崩し地べたを這う様な姿で村正は先ほどから動かない村重に問うた。

村重は握っていた折れた刀の柄を捨てた。

「それじゃあ意味がないでしょう?」



「何がおかしいんですか?」

僕は二人の様子を伺いながら隣で訝しげな四子にその内容の確認をする。

村重(あいつ)は前回と言った。

多分暮林(クレバー)の持ってきた資料にあった30年前の事件のことだよな?」

「それが何か?」

「あの事件の(呪具)は既に回収されてんだ。呪具にはそれぞれに呪いが掛かっている。

なのにどうして今の村重(あいつ)はその時から存在が”連続”してるんだ?」

その言葉に僕はハッとした。

「それってもしかして・・・。村重自身は刀に取り憑いた呪いではない!?」



「刀を依り代にしたのでは、その時点での分身が量産されるだけ。正に今の兄上の様にね。

前にもこんなやりとりをしたんですが覚えていないのでしょう。

私の妖刀に寄生するなんて面白いですが、その方法で本当に私を止められると思っているのだからあの頃からずっと兄上は二流以下なんですよ」

「村重ぇ・・・!!!」

「それでも毎回新鮮に驚いてくれるのは嬉しい誤算ですねぇ」

村正を見下ろしながら村重はニヤニヤと笑っていたが、ふと笑みを止めると腕を振りかぶった。


それがトドメの為の一撃だと察した僕は、三節棍を目一杯に伸ばして弾くと距離を取った村重と村正の間に割って入った。

「事情は分からないですけど、勝手に突っ走るからですよ!!」

「知らぬ間に弟は化け物になってしまったのか・・・」

僕の話を聞かずに悔し涙を堪えながら悔恨の村正の頭に四子は拳骨を振り下ろした。

「まだ足掻けんだろ。とりあえず何か作戦(ポジティブなこと)でも考えとけ、時間は俺達が稼ぐ。」

(呪いの根源が刀でないとすると、ここに封じている意味はあんまりねぇな)

「時間を稼ぐって言ったって・・・一体あれをどうしろと・・・」

(村正の刀を間合いの外から斬った方法が分からない事にはどうしようもない・・・)

何よりまず初撃をどうやって凌ぐかという問題だが、呪いによる先読みに任せて自分が先行するしかない。

構えつつ三節棍の鎖を短めに調整する。

相手の全体を、動きの起こりを、気配を逃すなと言い聞かせる。

隣の四子も自分自身でも反応をするために集中している。


閃き

僕の呪いはいつもよりも少し先の未来が見せた。


刀を持っていた時と同様、否、刀を持たぬ分それ以上の速さで肩から手の先までがまるで鞭のようにしなる。

とその手の先の延長線を視えない何かが薙いで来たのだ。

そして身体に到達する。それは抵抗もなく僕の身体をすり抜けて行った。


それが死因である。


体感も束の間、コンマ数秒時が戻り再度村重が振った手から伝わる波がやって来る。

来る。防ぐ?来る。避ける?来る。来る。来る。避けろ!!!!


日本刀を切り裂く程のナニカを防いではダメだろ!

まず避ける!

脳ではなく脊髄の反射で身体を捻った。



俺の横少し前でナントカが宙で身体を捻って躱す動作を取った。

村重(あいつ)が手を振ったというのはギリギリで捉えた。

しかし、ナントカは何を避けたんだ?

と一陣の風が通り抜けた。

そこで私は気が付いた、地面に広がる草が不思議な形に切れている。

斬撃がこちらまで届いている!?


ざっと十数mは距離がある。

この迷い家(空間)全体が既に間合いの中かもしれない。

そしてそれは現状俺には認識が出来ない。どっと心臓の鼓動が早まった。

「おい、千子流には飛ぶ斬撃なんてあんのか?」

足元の少し後ろに転がる村正に声を掛ける。

「そんなものあってたまるか!!!」

「だよな。じゃあ何かしらタネがあるって訳だ。

俺達が囮になってやるから、そこで村重の呪いの正体と攻撃のタネ。

消えるまでに明かせよな。

ナントカ!前出るぞ!!フォローしろ!!!!」


四子は目両手に持った鎌と分銅を繋ぐ鎖を目一杯に伸ばすと自身の周りをドーム状に覆って村重へと距離を詰めた。

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