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そうして村重が妖刀を使ってなし得なかった復讐の怨嗟を断ち切る為に、俺はその刀達に細工をしてこの男の身体に取り憑いている訳だ」
「何?つまりあなたの弟が家族を殺された腹いせに人を斬りたくなる妖刀を量産した・・・と?
そんな話をする為に1時間20分も使ったのかしら。あなた達兄弟の生い立ちや、天賦の才を持つ弟とあなたの確執や、妻や子供が殺され、その才能を呪術に傾倒させたこと、復讐の為に流派を離れ、呪いを込めた刀を世に流し、貴方はその刀を破壊する為に人生を費やし、志半ばで死期を悟った為妖刀の呪いに細工をして今に至ると。
途方もなく頭も気持ちも気色も何もかもが悪い話だわ。
不幸が免罪符になるのなら私の親友は少なからずあの小さな村を滅ぼしたとしても天国へのお釣りが出た筈だもの」
「俺の話が言い訳に聞こえたなら申し訳ねぇよ。
ただな。俺だって、俺なりに弟を大切にしてたんだよ。それを分かってくれだなんて言わねぇよ。
でもな、弟の不始末は兄が取るもんなんだよ。俺が終わらせるって決めてんだよ。
誰に迷惑を掛けようが、何をしようが俺は、俺が弟の復習を終わらせるんだ」
睨み合う二人の間に不如は割って入った。
「うんうん。それじゃあ、私達の意思は一つって訳だね!!打倒、村正擬き!!もとい千子正重だ!!」
「簡単に言うけどな。今回正重が使っているのは、数ある中でも上等な一振りなんだ。ここのオヤジが後生大事にしていたようだが、なかなかの目利きだ」
「それに何の問題が?」
「言ったろ?村重はその刀一本ずつに呪いを掛けていた。当時はそれが大量の人斬りを生んだ訳だが、村重の呪いは簡単に云うと”同化の呪い”だ。呪具を持つ者と村重を同化させる。
その上で、上等ってのは刀の出来じゃない。村重の刀はどれも超の付く一級だ、目を瞑っていたって刀を打つ奴だからな。そんな天才でも呪術は難解だったってことだ。」
「つまり上等なのは刀ではなく呪い。ということかしら?」
「刀も呪いもって事だ。さらにそこから時間を掛けて数多の血を吸い、その呪いは説明の出来ないものへと変貌しつつある。今街を徘徊している侍ってのは、当時の村重本人以上の者と言っても過言ではない。それこそは鬼が金棒を担いで歩き回っているようなものだ。何か手立てはあるのか?」
「大丈夫こっちにも武闘派はいるから、その辺は任せてあるの。兎に角!一旦学校に戻らないと。村正さんの話が長いから約束の時間まで後3時間もないよ。」
「後3時間ってのはなんだよ」
「侍が暴れないように果し状を出したんだよ。今夜の0時きっかりに。そういうが効きそうな相手だって、ナントカ君が言ってたから。
ナントカ君てのは、その武闘派の子なんだけどさ。一回村重さんと戦って引き分けてるんだよ」
「そりゃすごいが・・・。0時きっかりってどういう風に伝えたんだよ」
「どうだったっけ・・・。実際の文章を考えたのはなんか暮林さんが学者さんにお願いしたみたいだったしな・・・。えっと確か九つとか書いてあった気がするけど」
「!!!お前それじゃあ、一刻で村重に時間を伝えたのか!?もう時間がねぇじゃねか!!」
きょとんとする部長に何か気が付いた様子の真理は言った。
「忘れていたわ、確かにそれだ23時から1時までを指しているわね」
「村重は時間にうるせえからな。23時には間違いなく果し状を出した奴のところに行くぞ!!」
約束の時間まであと3で1時間
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