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呪術は小説より奇なり  作者: 麻人 弥生
妖刀村正擬き

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25/40

出来るようになるまでやれよ

「四子さんさ、何かもっと効率の良い練習方法とか実はあるんじゃないの?」

「なもん知らなーよ。俺だってなガキの頃、ジジイに半殺しにされてんだよ。おら、もう一本!」

散らばった棍に四子が具現化した鎖を使って三節棍にして構える。

こちらから仕掛けるが、鎖で防がれる。自身の体の周りを廻すようにして三節棍を振るい、こちらの間合いを押し広げる。

四子は最低限の動きで間合い詰めてくると、三節棍に鎖を絡めて軌道を変えてきた。

想定した軌道を逸らされた僕は、低い姿勢の四子に向かって前蹴りを繰り出すが、そこまで読んでいたという動きで棍に絡まっていた鎖がジャラジャラと伸びると僕の足にまで絡み付き、武器諸共に後ろへと投げられた。

「そこで体術に頼ってたら修行の意味ねぇんだよなー」

絡み付いた鎖の所為で上手く受け身も取らずに地面にバウンドした衝撃で三節棍は又も散らばった。

体に染み付いた功夫クンフーが邪魔をしていた。確かに、僕が目指しているのは今の四子のような動きだ。

「だから!もっとこうコツとかあるでしょ!!」

「強いて言うならイメージか?もっと具体的にしてみ。俺のイメージはな。俺は硬くて冷たい輪っかの一つ一つまで、具現化した数も全部把握してっから」

ガーとか、ぐわっととか言ってるしそんな四子の言うイメージがそんな繊細なものだとは想像していなかった。

そう言われて初めて僕は言われた事も十分に出来ていなかったことに気が付いた。

「あのね。そういうのをコツって言うんですよ!」

自分への失望で強がって出た僕のツッコミに四子はニヤリと笑う。

「んじゃ、次からは出来るってことだよな?」

そうして分銅を勢いよく回し始める。四子の持つ武器は内包した殺気をその短い刀身と分銅。

そして鎖の一つ一つに至るまでその気配を強める。

つまり四子はまだまだ本気を出していなかったのだ。

「しっかりお前の殺気で受け止めろ!!!」

放たれた分銅は勢いよく僕の顔を目掛けて飛んでくる。

分銅の軌道に隠れるように四子自身もこちらへと距離を詰めていた。

圧縮された時間の中でどうするか考える。

ここからの選択肢は一撃目を躱す。二撃目を受ける。その逆。どちらも躱す。どれが正解だ????


呪いは発動しない。つまりこの攻撃で僕が直接的に死ぬ事はないのだろう。


邪魔!!!深いところで僕はもしかしたらばかり考えている。

この呪いに頼っている。邪魔!!!

掛けられた呪いを、忌まわしい過去が作り出したものに幾度となく救われている。

思考の邪魔をするな!!!!!


目の前の攻撃に集中しろ!!!


棍を両手で握り先端で分銅を弾く。重い!!!!

先ほどまでと、形は変わっていないのに質量がぜんぜん違う。

そのせいで軌道は逸らしたが、棍も弾かれた。

そしてここまで来て、僕は棍の節が繋がっていないことに気が付いた。

四子の言った「んじゃ、次からは出来るってことだよな?」つまり全部自分で対処しろってことだったのだ。

分銅の後ろに四子が大きく視界に映る。

振りかぶった左手の鎌。

躱すしかない???それは選択肢か??逃げじゃないのか?

立ち向かう力を手に入れる為の選択肢はそれで本当に合っているのか???

「峰打にしたらぁ!」吼えた四子の右手。

分銅に繋がる鎖を握っていたはずの手にはいつの間にか左手と同じく鎌が握られていた。

躱せない!!!!

「信じるしかねぇだろ!!!」笑う四子。

躱すことは不可能だ。覚悟は決めたはずだろう。

イメージするんだ。弾かれた棍が。足元に散らばった二本の棍に繋がっている。

弾かれた棍を。力を逃がすように左手首を起点に回せば、二本の棍(それ)は四子の鎌が届くよりも先に手元に揃う。

繋がれ繋がれ繋がれ繋がれ!!!!

自分に、棍に、世界に言い聞かれるように何度の心の中に念じる。

そして、圧縮された時間の中で左手首を滑らせるように棍を回した。


ゆっくりと回って見える棍に確かな手応えを感じる。

足元の散らばる棍がまるでその回転に巻き込まれるように力が伝わるのが分かる。

大外からの軌道を四子の右手の鎌に合わせて迎撃を試みる。

同時に繰り出された左手の鎌には、引き寄せた棍を右手で掴み直す。

目を見開いた四子だったが、再度ニヤリと笑う。

左手の鎌を右手の棍で受け、鍔迫り合いとなる格好。

「悪くねぇ!けど!!」

回転する棍の軌道を見て右手の鎌を離していた。

そしてフリーになった右手には再度鎖。鍔迫り合いから後ろへと飛んで距離を取る四子が右手の鎖を同時に引いた。

瞬間、視界には背後から飛んできた分銅が後頭部にめり込むイメージがフラッシュする。

僕は三節棍の真ん中を一度パージして両端の棍の端をそれぞれに繋ぎ直し、後頭部へと飛んできた分銅をヌンチャクを振るう要領で叩き落した。

「チッ。」

「今本当に殺そうとした!!!」

「それよか、出来たんだから喜べ、バカ。まぁそれどー見ても鎖じゃねぇけど」

自身の力で繋がった三節棍を見ると、何やら伸縮する一つの輪っかで繋がっていた。

咄嗟のイメージで何を想像したのかまでは、自分でもイマイチよくわからなかったが、兎に角殺気を具現化出来た訳だ。

「出来てる!出来てるじゃないですか!!!」

集中が途切れた途端にその輪が弾けて消えた。

「ボケェ!!気ぃを抜いてんじゃねぇ!!!!」

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