目には目を。武器には武器を。
剣道三倍段という言葉がある。
読んで字の如く。素手武術家が剣道の段位持ちと相対する際、素手武術家には三倍の段位があってやっとこさ互角という意味である。
例えそれが竹刀であったとしても武器とはそれほどまでに強力なものなのだ。
前回僕が侍に襲われた際は偶然にも竹刀を持っていたから初撃を防げただけで、それは運が良かっただけだ。
何度も期待するようなものじゃない。つまり僕がやらないといけないのは対武器を想定した戦い方であった。
幸いにもカンフー映画を見つつマスターした技の中にはヌンチャクやトンファーなどがある。
それを踏まえて僕は今、四子相手に三節棍を振るっていた。
BANK
ここで不如ちゃんの解説コーナーです。
三節棍とは、鎖などで三つの棍棒を繋いだ武器の総称だよ。
三つの節で三節棍、もっと多くなると多節棍という具合になるみたい!
主に振り回して使う武器だけれど、ヌンチャクに比べて長い分遠心力や体を使ってのテコの原理でより簡単に大きな力を出せるけれど、その分扱いが難しい武器みたい!
今回ナントカ君が刀相手にこの武器を選んだのには幾つかの理由があるみたいだけど、その辺は本人に聞いた方が良さそうだよね!
コーナー終わり!
左手に逆手の鎌、右手に分銅のついた鎖を手に構える四子を対して僕は両端の棍を持って二刀流剣士の様に構える。
既に幾度となく四子にはボコボコにされたが、まだ僕が侍と相対する為のスタートラインにすら立てていなかった。
「おい!また鎖の形成が雑になってんだろ!」
凄まじい勢いで飛んできた分銅を右手で持つ棍で防いだ瞬間、僕の三節棍を繋いでいた鎖は弾け飛びただの三つの棒となって僕の周りに散らばった。
そうこの修行は、四子の持つ死神の武器、殺気の擬似再現だった。
殺気を具現化したものが死神の武器であり、それは実体のない霊体へも攻撃が可能である。
四子が言うには、どうやら僕にはセンスがあるみたいだった。
以前の神隠し騒動の際に呪霊を素手で殴ったのだが、四子に貰った霊に触れる数珠は知らぬ間に弾け飛んでいた。
つまり僕自身の力で実体のない霊に触れたことになる。
まぁいくらセンスがあったところで、今夜の果し合いまでに殺気の具現化を使いこなせるようになるとは思わないし、
そんな付け焼刃が数kgはある刀をまるで手足の延長の様に繊細且つ凶暴に振るう相手に通用するとも思い上がってもいない。
しかし、戦い有利に進められる少なからずのアドバンテージがあるとしたらこれしかない。
そこで僕は三節棍を繋ぐ鎖。この部分だけを具現化出来ないかと提案したのだ。
何度も言うが、気迫が具現化した武器である、殺気には真の意味で定形はない。
鎖の長さが自由であり、着脱自在の三節棍。これが僕が扱える中で想像した対刀の最強の武器だった。
「そんな強度じゃ使いもんになんねぇだろ!もっと気合を入れるんだよ!ケツにも力を込めろ!!」
兎にも角にも実践あるのみ、土台となる鎖を四子に作ってもらい模擬戦。
戦闘中の鎖の維持を自分で行なう。それをひたすらに繰り返す。
激しい打ち合いの中で集中を切らすと、鎖は弾け飛び。
鎖に集中すると攻撃を捌ききれない。
そして何より。
「ナントカ!そこはギュイーンだろ!!!」
「バカかてめーは!!!」
「俺は猿に芸を教えてんのか!」
「もっと殺気を込めれるだろ!!」
そして何より、先生の口が悪いし、教え方も悪い。そうだよね?そうだと言ってくれ・・・。
どうもボルテージが上がるのかレクチャーと書いて罵声と読むような四子の指導に、僕の心と体は信じられない速度でゴリゴリと磨耗しつつ、僕はなんとか喰らい付いていた。
「てか、お前なんか弱くなってね?」
ぶっ通しで1時間。言葉と分銅と鎌の二重の意味で鋭い雨に打たれた僕に四子言った。
流石というか武闘派というか息切れひとつ起こしていない四子に、対して慣れないことをしている所為で疲労三倍な僕は途絶え途絶えになんとか答えようとした。
「はぁ、はぁ、はぁ〜。四子さん、はぁ。僕を殺すつもりで・・・やってない でしょ・・はぁ」
「そりゃな、特訓なんだから、何?死にてぇの?」
「いや、はぁ、、違くて・・・違くて・・・・・」
僕らの進まない会話に一部始終を見ていた部長が助け舟を出す。
「違くてさ、四子ちゃんの攻撃で死ぬ可能性がないと、ナントカ君の呪いが機能しないんだよ」
そう。僕の不死の呪いを簡単に言うと自分の死ぬ可能性の未来を見ることが出来るものだ。
つまりは受けても死なない攻撃には適応されない訳だ。
「あぁ〜。やっぱじゃあ俺のがつえー訳か」
そっかそっかと頷きながら何かに納得する四子。
修行は始まったばかりとはいえ、先が思いやられるこの状況。
果し状の示す時間まであと10時間。
BANKというのはアニメ業界の使い回しカットのことだよ。
作中の変身シーンや、ロボットの合体などが有名ですね。
本編とは全く関係ないですが、不如ちゃん解説コーナーもそんな感じでカットインしてくる不如ちゃんを想像して楽しんで下さい。




