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呪術は小説より奇なり  作者: 麻人 弥生
妖刀村正擬き

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21/40

大人の愚痴を聞く身にもなってくれ

「どうしてそこを勿体振るんですかね!?おかげで余計な仕事が増えた気分ですよ!実際いろんな人に聞いて回っていますし!!」

月曜日から4日間、僕は暮林さんと毎日巡回していたからか随分と打ち解けた気がする。

そのおかげで随分と色々な悩み事を相談してくれるようになった。

勿論暮林さんは立派な大人なので、僕の悩みも3:7くらいで聞いてくれる。まぁ僕が3だけど。

それでもってすごいテンションで語られているのは、上司のシゲさんなる人についてだった。

話の概要としては、30年前の事件に関する資料をもらったけど肝心な事は教えてくれません。

そのくせに何かを(重要そうに)匂わせてくる。ということらしい。

確かにいるよね。いやいや!そこが一番重要なのに!!みたいなことをなかなか教えてくれない人。ゲームでもリアルでも。

「なんか私の地元のおじいちゃん、おばあちゃんを思い出しましたよ」

「暮林さんはこっちの人じゃあないんですね」

「はい。元々は東北の方だったんですが、春に異動がありまして。最初に担当した事件が○怪事件なんてついてないですね」

「幽霊だけに?」

「幽霊だけにです!!」

日々の睡眠不足とここ数日毎日顔を合わせる間柄による緊張感の欠如により僕達は軽い深夜テンションだった。

というのも僕が死にかけた巡回の夜から侍も通り魔もぱったりとなくなっていたからである。

今までの計算では3日に一回くらいでは事件が起こっていたのだが。逆にいうと起きないとなると正直手詰まりなのである。

というのも、証拠も少なく、犯人の目処が立っていないこの事件。一連の犯行が盗まれた刀に由来するとなると所謂犯人を見つけ出すよりも難解になる。

侍に関してもどこかの誰かが取り憑かれているだけの可能性だってある。

そうなると多分心神喪失だとか何とかで、通常の法律で裁くのは難しい。

通常ではない方法として、四子の死神組織による私刑もあるようだが、そうなると困るのは警察だ。

今回の事件は内密に処理するにはあまりにも被害が大きく、また世間の注目も集まってしまった。

有耶無耶になってしまうと僕には関係ないが、警察の威信というもの的には大変よろしくないだろう。

つまり、現行犯で侍を捉える。という構図に警察は躍起になっていた。

そこにこの肩透かしである。巡回の時間も人員も四子が言うには日に日に増えているそうだったし、実際なんとなしに暮林さんに話題を振ってみたところその通りだった。


と前方に人影が二つ。一人は宙に浮いている。

「「おうおうおう」」

片手を上げてオットセイみたいな挨拶で現れたのは四子と部長の二人だった。

「そっちはもう終わりですか」

「お疲れ様です」

暮林さんのお疲れ様に雑な敬礼を返しつつ、僕の質問の返答をした。

「まぁーね。こりゃ今日も侍さんは出なさそうって感じで切り上げてきたわ」

「その心は?」

「私の勘だよ。ナントカ君」

「あの、部長さんは何か言っていますか?」

と珍しく間に入ってきたのは暮林さんだった。

そういえばこの数日で話題として僕達、呪術研究部の話もしていたんだった。

まぁ部外者。まして警察官に出来る話なんてのはあんまりないので、学校内での楽しく愉快な仲間たちのドタバタハートフルストーリーくらいな訳だが、暮林さんはその話を甚く気に入ってくれた。

というのも暮林さんが過ごした学生時代は生徒がそれほど多くなかったそうで、こう言った良い意味でいえば賑やかで都会的な学校の話自体が好きみたいだった。

「あぁ。部長の冴え渡る勘で今日はサボることにしたみたいですよ」

優しい僕がそう通訳してあげると部長は、「プンスコ」と怒るのであった。

「それにしてもナントカは随分と暮林クレバーと仲良しそーじゃん」

「くればーって私の事ですか?」

「そそ、最近ずっと考えてたんだけどさ、真面目で頭も良さそうだし、アダ名が体を表すってね。俺は今からそう呼ぶことに決めたぜ」

謎の宣言と同時に、ひどいアダ名が付いた。僕のナントカも大分だからセンスは部長と同等かそれ以上・・・。

「社会に出るとこういう事もなかなかないですからね」

そういってフフフと笑った暮林さんは、僕達と同じ高校生みたいだった。

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