表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

なろうラジオ大賞4

駆け込んだトイレにペーパーは置いてなかったけど、壁におふだが貼ってある

 急に催して駆け込んだ公衆便所。

 やけに古いなと思ったが、背に腹は代えられない。


「ふぅ……助かったぁ」


 俺は間に合った安堵感と排泄による快感に身を震わせる。

 しかし、一難去ってまた一難。


 このトイレにはペーパーが置いてなかったのだ。


 まぁ、古いトイレだからしかたないよな。

 でも……どうしようか。


 まさかそのままパンツをはくわけにもいくまい。

 どうしたものかとあたりを見渡すと――




 ずぅぅぅぅん……




 何やら不気味なオーラを放っている古びたおふだ。

 それが壁に貼ってあったのだ。


 これを使って尻をぬぐえば危機を脱せる。

 しかし――いくらなんでも罰当たりすぎる。


 しばらく試案していたが、やはりクソをつけたまま外に出るのもなんだ。

 俺はそのおふだを引っぺがしてケツを吹くことにした。



 ふきふき。



 あーすっきりした!


 俺は便所におふだを捨てて個室から外に出る。

 すると――


「あんたさぁ、やばくない?

 まさか貼ってあったお札で――」


 見知らぬOL風の女が立っていた。


「で?」

「……え?」


 俺の言葉にたじろぐ女。


「だからなに?」

「いや……その……」

「邪魔だから退けよ」

「ひっ!」


 俺が睨みつけると女は恐怖に顔をひきつらせた。


「あのさぁ、お前みたいなやつ全然怖くないんですけど?

 なんならおっぱい揉ませろよ。

 ほら、おっぱい、おっぱい。

 乳見せろよほら」

「すみません、なんでもないです……」


 女はすごすごと退散した。


 こんな古びた公衆便所に、あんなOL風の女がいるはずねーんだよなぁ。

 まさか生きた人間じゃあるまいし。


 俺には昔から霊感がある。

 幽霊とか見えても全然平気。

 というか見慣れすぎて飽きた。


 あいつら、こっちが見えてても何にもしてこないし、よしんば何かしてきても視界に入って来るのが精一杯。

 怖がらずにいると残念そうに帰っていく。


 幽霊なんて俺にとっては蚊とか蠅とか、その程度の存在でしかない。


 だからお札なんてただの紙切れなのだ。

 あんな奴らを払ってどうする。

 生きた人間とか交通事故の方がずっと怖いわ。



 ……うん?



 ふと、足元を見る。

 ポケットティッシュが落ちていた。


 入る前にはなかったと思うが――



 え? 嘘でしょ?



 俺は慌てて公衆便所を出る。

 そこには警察官とさっきの女がいた。


「この人です!

 勝手にお札をはがしてお尻を拭いたみたいです!

 あと、私にセクハラしました!」


 引きつった顔で俺を指さす女。

 疑いの目を向ける警察官。


 どうやら俺はやっちまったらしい。

 生きている人間の方がよっぽど怖い。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公の性格が強い(笑) お札は紙だけども:(›´ω`‹ ):; しかも女性がお札の存在を知っていた……?? 古びた公衆便所は男女共有なんですかね? タイミング良く女性がいたのもも…
[一言] 面白かったです! おふだの存在を知っているということは、OLはそのトイレよく使ってるのかな?とか、色々想像できて楽しいです。
[良い点] 面白いっ!すっごい面白い! ツッコミどころ満載なのもいいね! 公衆トイレの男性用に女がいる!痴女だよ!現行犯だよ!セクハラかも! しかもさ、なんで男性用トイレの個室のおふだとか、ペーパー…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ