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少女からの急な誘いだったが、情報のない今は仲間ができることは望ましかった。
「チームになるってことか」
「システムにはないけどね。チーミングっていう行為で一般的にはダメ。でもここでは禁止されてないし、最後まで生き残ったやつ全員に報酬がもらえるシステムだから、けっこうやってるやついるよ」
「生き残れるならなんでもいいぜ、タイマーが0になったらどうなるのか、ひたすら不安だったんだよ」
「あんた相当動きいいし、アタシとしても組んでくれて助かる。今回も生き残れそうな気がする」
「わかった。よろしく」
「てかさー、今バグってるみたいなんだよね」
「バグってる?」
「なんかゲームが終了してもそこでやめれないんだよ。強制的に次のゲームやらされてる。もう3連続目」
「そうなのか? じゃあこのゲームが終わってもまた始まるのか」
「そうそう、でもまずは生き残らないとね。喋ってるうちに外はゾンビだらけになってるよ。窓の外見て」
窓の外には無数のゾンビたちが押し寄せている。だが彼らは扉を開ける知能がないようで建物には侵入してこない。
「なあ、このゾンビたちはなんなんだ?」
「こいつらはプレイヤーを狙って邪魔をする存在、プレイヤー同士の戦いに水を差してくるけど、隠れてるプレイヤーの炙り出しにも一役買ってる。」
「こいつらを倒すことが目的ではないのか?」
「そそ、あくまで敵は他のプレイヤーだから。ゾンビは倒してもスコアにはならないし、弾の無駄だから逃げた方がいいよ」
「なるほど、そんでどうする? かなり集まって来てるけど」
「裏口から逃げよ、こいつら表の通りに集まってるだけだから、裏にまわろ」
「おう、いこう」
すずかを先頭にして、俺たちが家の中を通り抜けて裏口に回ったその時、入口の扉が開いてゾンビたちがなだれ込んでくるのが見えた。
「あれ、ゾンビたち家の中入ってきたぞ」俺は裏口を出ながらすずかに言った。
「うそ!」彼女は驚いて振り返るが、家の外に出てるので、その位置からだと室内は確認できないだろう。すぐに前を向いた。
「まあいいや、このまま民家の裏庭を伝って通りの端っこまでいこ」
俺は走っていくすずかに着いていく。その動きはとても身軽で、純粋な身のこなしなら俺よりも彼女の方が上な気がした。
「あのさ、気になってたんだけど。このスーツって身体能力上がるのか?」
「え? そうだよ。このスーツのお陰でアタシでも男に勝てたりするんだよ」
「そうなのか」
「たぶん全プレイヤーのパワーやスピードが均等化されるようになってる。じゃないと身体大きい男が有利でしょ」
「確かに」
すずかは裏庭の柵を飛び越えながら通りの向こうを指差した。
「あっちで銃声してる! いってみよ!」
「あ、おう」
なんて好戦的な奴だ。こっちから飛び込むのか。俺は彼女と手を組んだことを少し後悔しながら軽く相槌を打った。