[ 00:47:18 ]
森の中は木々がそれほど茂っておらず十分に明るく歩きやすかった。この森を抜けた先に町があるはずだ。
さっきの男もこの森を目指していたということは、この先に行くのが正解なのだろうか。いやに歩きやすい森だ。あまり木々が生えておらず、動物もいない。
最初は違和感のあったボディスーツでの体の動かし方にも徐々に慣れてきた。
結局森では誰にも会わず、野生動物に遭遇することも無く5分もしない内に森を抜けると、町を見おろせる丘に出た。
丘の上から町を見渡すと、通りには複数の人影が見えた。ようやく町に来れたことに安堵しながら駆け出したが、何か違和感がありすぐに歩を緩めた。
10人ほど見える人影はどれも不自然な動きをして歩いている。ダラダラと目的もなくランダムにウロウロしている者ばかりで、中には車道を歩いている者までいる。なんとも奇妙な光景だった。
「こいつら……人じゃない、何だこの町は!」
通りをウロウロしているのはゾンビのような状態になった人間たちだった。なんらかの薬物中毒症状か、おそらくゾンビなのかもしれない。しかし奴らはまだ自分を補足できていないようだ。100mほど離れていれば向こうは認知出来ないらしい。さて、どうしたものか。
戸惑いをよそに、足は前に進んでいた。悩む余裕などないのだ。異様な状態の町だが何か情報があるかもしれない。危険は承知で行ってみようと覚悟を決めた。
タイマーを確認する。
[ 00:45:46 ]
このタイマーが0になった時に何が起こるのか、それすら知らない自分には、後ろ向きの選択肢はない。
町の通りの角から覗いてみると、ようやく奴らの姿がはっきりと見えた。やはりゾンビのようだった。信じられないことにゲームや映画のような光景がこの町で起こっている。いや、この島全体がウィルスによって犯されているのかもしれない。
ゾンビが町をうろついている異様な光景に目を奪われている時、後ろで物音が聞こえた気がした。
とっさに腰に手を回し銃を取り出し構えながら振り向いた。
──ザッザッとこちらに向かって足音が聞こえてくる。そして民家の壁の向こうから今まさに現れたのはゾンビではなく女だった。
スーツを着込んだ10代半ばほどの小柄な女は俺を見るなり険しい表情になった。そして目が鋭くなり、身構えて腰に手を回した。その手際は素人のそれではなく俺が引鉄を引くべきか逡巡している間に彼女は銃を抜き撃ってきた。
──バン!バン!バン!
俺はとっさに姿勢を低くして右方向に側転した。そして家の壁にある物置の影に身を隠した。
危なかった、突然出てきて戸惑ったが、スーツ姿だから最初に会ったやつと同じく敵なんだな。いきなり撃ってくるという事は、やはりスーツ同士はお互いに敵という認識は間違いないようだ。
しかし、今の少女どこかで見たことある気がする。
今はそんなこと考えてる場合ではないが。
隠れた物置から少し顔を覗かせて少女の様子を伺ったがもうその場を離れていていなかった。民家の裏に回って身を潜めたか、或いは逃げたか──。
その時通りの方からたくさんの呻き声が聞こえてきた。