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[00:55:22]

 森を目指して歩きながら周囲を見回していると、遠くに人影を見つけて驚いた。その人影は森の方へ向かって走っているようだ。思わずそちらの方へ走り出した。待ってくれ! 誰でもいいから話を聞きたい!こっちに気づいてくれ! その人影は自分と同じようなスーツを着ているようで、体格的には男性に見える。きっと自分と同じ境遇に違いない。


「おおおおい! 待ってくれえ!」


 聞こえるくらいの距離まで近づいたところで声を上げた。すると彼はこちらに振り返り足を止めた。よかった! 聞こえたみたいだ。


 しかし次の瞬間、彼は腰の辺りから銃を取り出す仕草をしてこちらにそれを向けてきた。


「え?何を」その時、顔の横を何かが通り過ぎる風切り音がした。ほぼ同時にパン!という音が鳴った。


 撃ってきた? なぜだ! 何が起こったかわからずしゃがみこみ隠れるように腹ばいになった。自分の体はほぼ隠れた。背丈の高い草むらでよかった。


 そこから反射的に体が動いた。自分の腰に手を伸ばし銃を手に取った。そして草むらの向こうから聞こえる足音が近づいて来るのを待ち、銃を握る手をその方向へ伸ばした。


 草をかき分ける音が5mくらい先でした時に、引き金を連続で2回弾いた。


 パン! パンッ! と立て続けに音が鳴り、草むらの向こうで男の呻き声がして倒れる音が聞こえた。


 身体が覚えている銃の撃ち方。間違いなく初めてではない。


 5秒ほど辺りを伺ってから起き上がり、男のいる方向に行くと、自分と同じようなスーツを着込んだ男が倒れていた。腹の下に血溜まりが出来ておりピクリとも動かない。


「おい、死んだのか? なんでだ、なんで撃ったんだ」


 まるで自分自身に問いかけているようだった。なんでこいつは撃ってきたんだ。そして俺も躊躇(ためら)わずに応戦したのはどうしてた。まるでこうなることが当たり前かのように反撃して相手を殺した。


 その時、倒れている男の全身が光り出し、光に包まれた男の身体は姿を消した。男の持っていた銃だけがその場に残っていた。


 一体何が起きたんだ。いきなり男の身体が跡形もなく消えてしまった。しかし血溜まりと銃だけは残っている。


 結局何の情報も得られなかった。結局彼は敵だったのだろうか。どうしていきなり撃って来たんだ。死んでしまったが消えてしまった。


 地面の血溜まりをしばらく見つめながら、自分自身に疑念を抱いていた。俺は何度も人を殺しているのか。人を撃って殺したというのに全く動揺がない。血を見ても心を冷静に保っている。これは見慣れている証拠なのだろうか。


 目覚める前に何をしていたか思い出せないが、自分は軍人か何かだったのかもしれない。するとここは戦場なのだろうか。今の男は敵だったのか。しかしなんで消えてしまったんだ。


 不安と焦りで心がいっぱいになり、一刻も早く誰かに説明をもらいたかった。しかし次に会う人もまた自分を襲ってくるんじゃないかと思えてならなかった。


 そして、その場を逃げるように森に足を踏み入れた。

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