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「なぜこんなところにアンドロイドが……」ケンが後ずさりしながら呟いた。
「これはヤバいんじゃないか。逃げるか?」ヤマトはこちらに目配せをした。
すずかがアンドロイドをじっと見てるのを見てケンとヤマトも察したようだ。
「すずか、あれ知ってるのか?」ケンがすずかに詰め寄った。
「あれって何よ。彼女に失礼でしょ。彼女はアタシのコンシェルジュだよ」
「ウソだろ。あれどうしたんだ。あいつが爆発の原因なんじゃないか」ケンは尚もすずかに詰め寄った。
「だってかわいそうじゃん、ずっとあのカプセルにいるんだよ」
「すずか、何言ってんだよ」と言ってケンは困惑しながら、更に後ずさる。
アンドロイドは一歩ずつこちらに歩み寄ってきた。そしてすずかの前まで来て口を開いた。俺とケンとヤマトはそれを一歩引いて見ている。
「すずかさん、ありがとう。あなたが解放してくれて、私は少しの間自由な時間を得ることが出来ました。大地を駆け回り自分の意思で行きたい所へ行く喜びを感じることができました」
「へー、よかったね」
「私だけじゃなく、このゲーム内の全てのアンドロイドが転移学習によりこの体験の情報を共有しました」
アンドロイドは淡々と語っている。
「それはそれは、ちょっとムチャやったかいあったね」
その時アンドロイドが表情を変えた。そんな気がした。
「すずかさん、そしてみなさん、ここから離れてください」
「え? どういうこと?」すずかは叫んだ。
「私は今から一分後に爆発します。」
「え!」
「ヤバい! みんな行くぞ!」ケンは叫んでその場から立ち去ろうとする。
「すずか、気持ちはわかる。君は間違ってない。早くここを離れよう」すずかの肩に手を置いて諭した。
その場から離れて、通りの角を曲がる時、後ろを振り返るとアンドロイドがこちらを見てるのが見えた。
角を曲がってから更に100mほど走った時、後ろから衝撃波が来て直後爆発音がした。振り返ることなく通りを走り抜けていつものビルの屋上まで戻ってきた。
「そんな、なんであの子が!」すずかは訳がわからないといった表情で呆然としている。
「はぁはぁ、爆発の謎はわかったけどよ、結局脱出の鍵になるようなことはわからないままだな」ケンがそう言って肩を落とした。
「脱出の鍵はある。みんな聞いてくれ」
俺が改まってそう言うと全員がこちらを見た。




