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「実は、自分がなぜここにいるのかよくわかってないんだ」とケンとヤマトの二人に真剣に訴えかけた。
「どういうことだ」ヤマトがボソッと言った。
「お前記憶があるのかないのかどっちなんだよ」ケンが怪訝な顔をして聞いてくる。
「前回と前々回のゲームの記憶はある。だが肝心のゲームを始める前の記憶がないんだよ」
「いやいや、大丈夫か? まあお前をからかうのは簡単だが、俺らに何の得も無いからちゃんと教えてやるけどよ」
「なんだよ?」
「俺たちはテストプレイヤーだぜ?このゲームの 」
「本当か?」
「俺たちはプレイヤーは運営会社に集められて、説明を受けて一斉にスタジオでプレイを始めたはずだ。だがいつまで経っても終わらないんだよ。ずっと繰り返してる」
「このゲームは開発途中か? 発売してないってことか?」
「そりゃそうなんだろうな」ケンが勘弁してくれって表情をしながら答える。
「そうか……だがやはり思い出せないんだ。なんかすまんな、そのうち足でまといになるかもしれんぞ」
「いや、そんなことはないぜ。前回のゲームで俺たちがお前を認めたってことは戦闘技術は評価に値する奴だってことだ。じゃなきゃ受け入れない」
「俺は……自分でも分からないが戦闘の時は体が勝手に反応するようだ。元々カタギじゃないのかもしれないな」
「別に、無理に思い出さなくてもいい。それより今はこの中で生き残り情報を集めることが大事だろ」
「そうだな」
「とりあえずビルが見えてきたから入って屋上まで上がろう。結局メモリーボックスは今回は見当たらないままだな」
「それはどこにあるもんなんだ?」
「最初はゾンビが持ってるんだよ。倒すとドロップする。だから俺とヤマトはいつもゾンビ狩りをしながらビルに向かってるんだ。その途中でだいたい手に入れるんだが今回はなかった」
「どのゾンビが持ってるかはわからないのか」
「そうだな。だからいつも100体ほど狩るんだが、今回は誰か違うやつの手に渡ったんじゃないかな。そいつを倒せば手に入るだろう」
俺たちは階段を駆け上がりながら会話を続ける。
「ゾンビを倒すのは無駄だと思ってたんだが、ちなみにどうやったら倒したことになるんだ?」
「頭を吹っ飛ばすんだ。一発で仕留めることができれば倒れて動かなくなる」
「けっこう簡単なんだな」
「まあ、でも一斉に来られたらかなりテンパるから倒そうなんて思う余裕はねえよ。普通は無視するもんだ。だからゾンビを倒せるだけでもかなり上位のプレイヤーってことになるぜ」
「なるほど、今度から意識してみる」
「おいおい、今回の記憶は今のままだと引き継げないんだぜ? 次回には忘れてるよ」
「あ! そうだよな。じゃあメモリーボックスをなんとかして手に入れたいとこだな」
「まあな。とりあえず上から爆発のあった方向を確認するぞ」
そう言ってケンは屋上に出た。俺とヤマトもそれに続いた。




