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スクワットチームで町を散策するのは効率が良すぎる。なぜなら互いが互いの死角をカバーしながら進めるし、視野も常時360度カバーできる。この状態で生き残れないということはありえないようには思えた。
しかしそんな完全とも思える陣形を一瞬で崩すのは圧倒的な力だった。
突如、身体がボッと持っていかれるような衝撃波と共に物凄い爆発音が町中に響いた。
「何の音だ!」周囲を見回すと、遠くの方に黒煙が
上がっているのが見える。
「単なる爆発音じゃない、なんだろう」すずかは目を見開いて黒煙の方を見ている。
単なる爆発音というのは手榴弾のことだろう。これは打上花火の爆発に近い衝撃だった。これでもかなり離れているようだが、爆発の中心にいたとしたら跡形もないだろう。
「なんだこりゃ、前回はなかったぞ!」ケンの口をついて出た言葉は意味深だった。
やはりこいつらにも前回の記憶があるのか。だが
すずかもケンたちも本当に驚いてるように見える。
この爆発音のことを覚えてるのは俺だけなのか?
「行ってみよう」と提案すると、皆驚きの表情を見せた。
「飛んで火に入るってか、トラブルの中心に自分から行くのは愚行だぞ。さっきの爆発はヤバい規模だ」
「そうゆう爆発を起こせる武器かなんかあるのか?」
「あることはある」ヤマトが口を挟んだ。こいつが喋ったのはこれが初めてだ。
「そうなのか? 俺は見たことない」
「アタシもない」
ヤマトが自分を見てきたので無言で首を振る。こいつらをどこまで信用していいかわからない。下手なことは言わずに知らないフリをしてもいいかもしれない。
ゲームでは情報がカギだ。この手のゲームは戦闘技術は大前提としても結局の所、情報戦だ。
それぞれが知っている情報に齟齬があるのが不自然だが、自分の知っていることは自分だけが知っていることかもしれない以上は下手に公開しない方がいいのかもしれない。
「どうするんだ? 行くのか?」少し急かすように全員に問いかけた。
爆発音の中心に向かうのが正解か、遠ざかる方がいいのか。こいつらに判断を任せてみた。
「行こう」とケンが言った。
やっぱそうくるよな。進むしかない。
ケンとヤマトが先導して爆発音のした方へ走り出した。俺とすずかは少し後方を走ることにした。
曲がり角や起伏が多くて見通しが悪かった町が、爆発の衝撃によってメチャクチャになり更に複雑になっていた。
爆発音の中心に近づいてきて、角を曲がって大通りに出た。大きなビルが何個か立っており、そのうちの一つの建物の前まで来て全員足を止めた。




