[00:56:53]
森の中は見通しが悪くどこから敵が襲ってきてもおかしくはなかった。こんなに暗かったかなと思いつつ歩いているとふとあることを思い出した。
さっき殺したプレイヤーのアイテムを漁るのを忘れていた。何かいい物を持っていたかもしれないのにもったいなかったな。
何としても生き残らなければならない。.......なぜかはわからないがそうした先に何か理解を得られるはずだと考えていた。そのためには情報とアイテムを少しでも集めた方がいいことは確かだった。
この森を抜けた先、あの町にまたあいつがいるはずだ。
あいつに会って確認しなければならない。
名前も思い出せないが見たら必ず思い出すだろう。そして前回の裏切りを問いただすのだ。さもなくば、わけも分からず裏切られまた記憶を失った今の状態に整理がつかない。
そうして森を抜けると、町を見おろせる丘に出た。
丘の上から町を見渡すと、通りには複数の人影が見えた。あれはゾンビだ。予想通りうようよいる。
ある程度離れていれば向こうは認知出来ないから気にする必要もない。足はとにかく前に進んでいた。悩む余裕などないのだ。異様な状態の町だが情報があることは確かだ。
俺は今度こそここで生き残らなければならない。
タイマーを確認する。
[ 00:50:33 ]
このタイマーが0になった時に何が起こるのか。そこはあんまり思い出せない。ただ前回はあいつに裏切られ最後を迎えたという記憶だけはある。
町の通りの角から覗くと通りにはゾンビたちがウロウロしている。確かここら辺であいつが後ろから来たんじゃなかったかな。
おぼつかない記憶を頼りになんとなく後ろを振り返ると、民家の壁の向こうからまさに誰かが現れた。
スーツを着込んだ10代半ばほどの小柄な女は俺を見るなり険しい表情になった。そして目が鋭くなり、身構えて腰に手を回した。その手際は素人のそれではなく俺がどう声をかけるべきか迷ってる間に彼女は銃を抜き撃ってきた。
──バン!バン!バン!
俺はとっさに姿勢を低くして右方向に側転した。そして家の壁にある物置の影に身を隠した。
危なかった、突然出てきて戸惑ったが、思い出した。間違いなくあいつだ。
しかし、向こうは覚えてないのか? 普通に撃ってきやがった。今はそんなこと考えてる場合ではないが。
「すずか!」
隠れた物置からとっさに叫んでいた。そして少し顔を覗かせて様子を伺うと少女は呆然と立ち尽くしていた。
「どうして名前知ってるの?」
そう言われてなんと返そうか考えていると、目の前にゾンビが迫っていることに気づくのが一瞬遅れてしまった。




