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階段の上はかなり有利だ。相手の頭が狙いやすい上にこちらは狙われにくい。むしろ下から上がって来て、上にいるヤツと撃ち合うのは無謀とも言えるくらいだ。
「大丈夫、屋上には誰もいない」
屋上を索敵しに行ってくれたすずかが戻ってきた。
「よし、じゃ下に集中だ」
そう言いながら、階段を駆け上がってくる足音を聞いていて、不思議に思った。
足音が一人分しかない──。
警戒を強めたその時だった。
階段の上から何者かが現れ撃ってきた。
バンッバンッ!
俺とすずかは体を伏せて躱しすぐに銃を敵に向けた。
その時、既に敵の蹴りが俺の顔面に向かって放たれていた。
はや! 躱せるわけがなかったが蹴りを顔面に貰いながら、その脚を両手で掴んで階段の下に投げ飛ばした。
ガシャー! と派手な音を立てて敵は階段を転げ落ちていった。
頭が強烈にクラクラして、意識を保つのがやっとだったが、すずかが階下に向かって銃を撃っているのが見えて安心した。
「やったか?」
「今のヤツは」
「下から来るヤツは?」
「まだ見えない、てか足音がしない」
こいつら二手に別れて上手く攻めたくせに連携は取れてなかったようだ。
同時に来られたらやばかったと思いつつ、蹴りのダメージがひいてきた。
「下行くぞ」
「おっけ」
階段を駆け下りた先の踊り場にさっきのヤツの死体が転がっている。今は死体を漁っている場合じゃないのでスルーして降りていく。
さっき、いた階は5階だったから4階か3階に敵はいるはずだった。
4階に降りてすずかに言った。
「二手に別れよう。俺は3階を見てくるからここを頼む」
「分かったわ」すずかは表情を変えずに頷いた。
3階に降りて来てフロアを見渡してみる。敵が隠れているかどうかはわからないが.......ある確信があった。
そんなに大きくないビルのフロアなのでこちらの足音も聞こえてるはずだ。ここにいるとするならどこに隠れるだろうか。そう思いながら部屋をひとつ確認して、すぐに階段の方に戻った。
このフロアを索敵する気など最初からなかった。すずかと別れて一人になることが目的だった。
さっきの屋上からの敵襲はタイミング的におかしすぎた。すずかが索敵を終えて戻ってきてから敵が来るのが早すぎる。あれだったら背後から彼女を襲えたはずだ。彼女が敵を誘導して俺に仕向けたはずに違いなかった。
裏切りを確信しながら上の階に戻ろうとした時、階段の上から何か嫌な気配がした。




