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身体がボッと持っていかれるような衝撃波と共に物凄い爆発音が町中に響いた。
「何の音だ!」周囲を見回すと、遠くの方に黒煙が上がっているのが見えた。
「単なる爆発音じゃないね、なんだろう」すずかは目を見開いて黒煙の方を見ている。
単なる爆発音というのは手榴弾のことだろう。これは打上花火の爆発に近い衝撃だった。これでもかなり離れているようだが、爆発の中心にいたとしたら跡形もないだろう。
「そうゆう爆発を起こせる武器かなんかあるのか?」
「ないよ、こんな経験初めて」そう言ったすずかは明らかにテンパっていた。
「行ってみるか?」
爆発音の中心に向かうのが正解か、遠ざかる方がいいのか。このゲームの流れが全くわからない自分には判断しようがなかった。
「行ってみましょ」
やっぱそうくるよな。進むしかない。
「おう」
力強く返事をして、今度はすずかを先導するように爆発音のした方へ走り出した。
曲がり角や起伏が多くて見通しが悪かった町が、爆発の衝撃によってメチャクチャになり更に複雑になっていた。
相変わらずゾンビがポツポツと出てくるが、もはや気にならなくなっていた。飛び蹴りを食らわして軽くあしらう。プレイヤーの姿は無くゾンビだけがウロウロしている。
すずかの言う通り本当の敵はこいつらじゃない、しかしプレイヤーでもない。今まで会って殺したプレイヤーにはそこまでの脅威は感じない。むしろ何かもっと別の、言い表せない抽象的な不安を感じていた。
走り出してから約10体目のゾンビの頭に飛び蹴りを入れてぶっ飛したところで、足を止めた。
「さっきから町の至る所で銃声がしてるな」
「プレイヤーはだいたいこの町を目指すから、集まってきてるんだろうね」
爆発音がした中心部に近づいて来た時、通りの角を曲がると二人のスーツ姿が見えた。俺たちが傍のビルに飛び込むのと、その二人がこちらに気づくのはほぼ同時だった。
「マズイ、見られたな」
「たぶん、すぐには攻めてこないでしょ。上にあがりましょ」
階段を駆け上がっていると下の階で物音がしている。さっきのヤツらも追ってきたようだ。
「待ち伏せするか」
「最上階の手前で待ち伏せしましょ」
敵が迫っている状況をすずかは楽しんでるようだった。
「おっけ」
そう言って階段をスルスルと駆け上がった。




