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プロローグ
銃口を向けても、女の表情は少しも変わらなかった。両手を顔の横に挙げながら、まだ幼さの残る顔で睨みつけてくる。
「降参よ、けど扉から離れた方がいいわ。ゾンビたちが入ってきて真っ先に襲われるのはあなたの方だから」女は余裕の顔を崩さない。
「ゾンビたちは屋内に入ってこない。なぜなら扉を開けることが出来ないからだ。違うか?」
「・・・・・・。どうして知ってるの?あなたはアタシを見ても構えなかった。遭遇したら即戦闘の原則も知らない。つまり初心者のはずよね」女は尚も鋭い眼光を向けてくる。
「それで俺を初心者だと思ったのか。撃ち勝てると思って家に入ってきたその判断は間違ってない。ただ俺は初心者ではないようだ」
「どうゆうこと?」女は困惑して薄ら笑いを浮かべたように見える。
「ゾンビの習性も知ってたし、家の中にいる方が入ってくる方より有利だということもわかってる」
「あなた一体何者?」女の左眉が吊り上がり疑念の表情を浮かべる。
俺は──何者だ。