プロローグ
初投稿です。よろしくお願いします。
「記憶喪失です。何かのきっかけで治るかもしれないので、ゆっくりと療養していくのが大切でしょう」
「え?はぁ…」
記憶を失った俺の一ページ目を飾ったのが、医者の他人行気な一言だった。
幸いにも、一般的な知識は抜けておらず3年ほどの記憶がスポンと抜けたらしい。
なので実の両親が駆けつけて来た時も、ちゃんと名前は覚えてたし、テレビを見て文字が読めなくなったなんてことはない。
しかし僕の年齢は16歳で、高校一年生。となれば中学生辺りから記憶なんてのは全くないはすで、事実全く思い出せない。
まあでもどうにかなるだろう。事故で傷ついた身体を治してまた学校にいかねば。
僕は学校で上手くやれていたのだろうか?
ふとそんな疑問が浮かんだがすぐにそんな考えは消えた。
見舞いや自分の携帯に連絡が一切無いことから、あまり人望は無かったのだろうと察していた。
それから数日後身体を回復させ僕は、1-Bと札がある教室の前まで来ていた。
ガラガラとドアを引くと、それまでガヤガヤとうるさかった教室は静寂な空気に包まれた。
僕はあえて無言を貫いた。クラスのみんなの出方をみて、少しでも自分の立ち位置が知りたかったからだ。
「おい、あいつ…」
「まじかよ…平気な顔してよく来れたな」
ガヤの会話が晴明に僕の頭に入ってくる。
なんとなく予測していたが、僕はあまりこのクラスにとって良くない存在なのだろうか。
と、思ってると教室の奥の当たりからガタンとイスが倒れる音が響いた。
そちらを見ると、髪を金色に染め、制服を着崩した男子生徒がズカズカと一直線に僕に向かってくる。
そんな金髪の男に正面に立たれた僕は、思わず萎縮してしまう。
事故以前に関係があったとしたら恐らくパシリが僕で金髪がボスだろう。
僕はなるべく相手を刺激しないよう先手をきって謝ることにした。
「ごめん、ぼく今日はあんまりお金は持ってきてな」
「リョウ!!!お前もう大丈夫なのかよ!?みんなすっげー心配してたんだぞ!!!」
「え???」
金髪の一言を火蓋に僕の周りにどっとクラスのみんなが押し寄せた。
「リョウくん平気だったの?とにかくまた会えて良かった〜!てか、リョウくんがぼく呼びって似合わんくね?笑」
「リョウ!お前がいない間にこっちは大変だったんだぞ!早く部活に顔出してくれ!!」
「リョウくんの…顔…見れて嬉しい。また…遊びに行きたい…」
四方八方から僕を気遣う言葉が掛けられ続ける。
予測とは裏腹に、僕は学校で人気者だったらしい。
それもかなりのだった。