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おしっこをした後は手を洗いたい、男用トイレに入った時チラと見た、洗い場はあるのだ、ただあまりそこを使いたいと思わなかった。
男用トイレの出口付近に手洗い場はある、鏡と蛇口が数個ある手洗い場だ、不潔ではない、ここだけ人工大理石のような素材でできている、ランタンとツルハシの光源はあるが、全体としては暗い、土壁に掛かる鏡の前であまり長くいたくないのだ。
この世界に来て自分の姿を見るのは初めてだ、暗いせいか何だか不安な気持ちになってくる、こういうことにあまり関心はない性格なのだが。
手洗い場で、手を洗ってくる。
ワン、ワカッタ。
私はあまり意味のないことをコボルトに言う。
チョロロ ん?自動で水が出るのか。 パチャ チャ
鏡の前に立ち手を洗おうとするが蛇口にハンドルがない、自動水栓だったのだ、近づくと水が蛇口から出てきた、手を洗う、手を洗いながら自分の顔、体を見る、フー・・、この世界に来る前の顔と体のままだ、特に異常があるわけではない、この世界に来る前に、死んだはずと思っていたから体の状態が不安だったのだ。
ん?
私は安心したのか鏡をよく見てしまう、自分の顔の横、何もないはずの空間に何かがある、薄っすらと女の顔のような物が。
ひっ。
私は引きつった声を出した。
助けて・・・・
私の肩に乗るようにある薄っすらとした女性の顔はそう呟いた。
あひぃぃぃぃ、駄目、駄目なのぉぉぉぉぉぉ。
私は発狂し叫んだ、幽霊とか駄目なのだ。
ワン、マモノカ?
私の肩にいる、いるぅぅぅぅぅ。
ワン、ナニモナイゾ。
ワン、マモノドコ。
コボルトとの会話で少し冷静になる、鏡をもう1度見る、私の顔と肩の間を見る、あぁ半透明の若い女の顔、いっ、いっちゃうううう(死ぬという意味で)、私はまた発狂し、プルプルと体を震わせている、女の体が触れているはずなのに感触はない。
怖がらせてごめんなさい、独り言が多くて・・・・
ん、んぁ。
私が見える魔物がまだ生きてるなんて知らなくて、助けてあげましたよ、と、つい呟いてしまったの・・・・
はぁ、はぁ、はぁ、意外といい人っぽい幽霊ですね。
どこか暗い雰囲気の幽霊女が話しかけてくるので会話する、若い女に見えるが苦労人ぽく見えるので実際の年齢より年増に見える、コボルト達は私を見てキョロキョロしている、やはりこの幽霊が見えないのだ。
あなたは敵対的な魔物、野良魔物ですか?
違いますよ、ここがまだ豚オークジムダンジョンだったころからいるダンジョン所属だった魔物です・・・・
野良の魔物じゃない、なのになぜ同じダンジョン所属だったコボルトが幽霊女を見ることができないのか分からない。
なぜ、私にだけ見えるのか分からない。
私が見えるのはダンジョンマスターだけでしたね、あなたが2人目ですよ・・・・
ダンジョンマスターだけが見える力、幽霊を見る力が私にはあったのだ、嬉しくない、すごく嬉しくない。
ずっと、ここ男用トイレで生活していたのか?
いいえ、ここの隣が女用トイレでそこと行ったり来たりしていますよ、こうやって・・・・
男用トイレの隣が女用トイレだとは知らなかった、幽霊女は私の背後霊みたいにくっついていた状態から離れ、近くの壁に移動する、体が壁を通り抜けていく。
こうやって、魔物が多いときは2つの部屋を交互に見て蛇口を操作していたのです・・・・
土壁に半分埋まりながら幽霊女が得意げに説明してくれる、何かしたのか複数の蛇口からチョロチョロと水が出てくる、怖い。




